人事法務コンサルタントの唐鎌成夫です。
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このホームページでは、
企業が社員の「副業・兼業」を受け入れるに際し、
直面する労働問題についてどのような対応をすればよいのか?
労働法を客観的かつ論理的かつ合理的に解釈した答え
を解説して行きます。

平成30年1月に
事実上解禁された労働者の副業・兼業は
今後間違いなく、
急速に爆発的に増えていくと考えています。

ですが、
社会変化の速度に法律の整備が間に合わない
ことが予想されます。

そこで、
具体的に予想される事例について
現行の労働・社会保険法を論理的に解釈するとこうなる!
という企業の行動指針を解説して行きます。
 



■副業・兼業先の「休憩時間」は通算されるのか?

■副業・兼業時の休日の与え方について

■副業・兼業時の「通勤」について

■副業・兼業時の「36協定」はどう運用すればよいのか?

 

 



平成30年1月に厚生労働省は、
副業・兼業について、
企業や社員が現行の法令のもとで
どういう事項に留意すべきか
をまとめたガイドラインを作成し、公表しました。

このガイドラインによって、
「今後、国民の副業・兼業を推進していく。」
という方針を国は明確に示したといえます。



ガイドラインでは、
社員が副業・兼業した場合の
企業側のメリットとして、

@ 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。
A 労働者の自律性・自主性を促すことができる。
B 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。
C 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。

としています。


私は、
人材不足の日本社会において、
「優秀な人材の獲得・流出の防止」
は企業経営の最優先事項の一つだと考えています。

自分で考え、行動できる人が、
「優秀な人材」であると定義した場合、
「優秀な人材」は、好奇心が旺盛で、非常に飽きっぽい。
という特徴を持っていると思います。

そう、
優秀な人材は、いろいろな経験をしたがるため、
「副業・兼業」を志向する傾向にあると思うのです。

そうであれば、
企業は「副業・兼業」を積極的に受け入れることによって、
既存の優秀な社員の退職(流出)を防ぎ、
新規の優秀な社員を他社から引き抜く(獲得)ことができるはずです。


以上のような理由により、
私は、
企業は「副業・兼業」を積極的に受け入れるべき
だと考えています。

このホームページでは、
企業が社員の「副業・兼業」を受け入れるに際し、
直面する労働問題についてどのような対応をすればよいのか?
労働法を客観的かつ論理的かつ合理的に解釈した答え
を解説していきます。

そして、
企業が「副業・兼業」を受け入れることにより、
社員が自己の能力を最大限に発揮できる楽しい会社創り
をサポートしていきたいと思います。





そもそも、
「副業・兼業」とは何なんでしょうか?

まずは、
「副業・兼業」の定義を明確にします。

「副業・兼業」には2つあると考えられます。

1人の労働者が、
@同一の企業の2以上の事業場において働く場合
A異なる2以上の企業において働く場合
です。

このホームページでは、特記がない限り、
A異なる2以上の企業において働く場合を
「副業・兼業」と定義します。

 

それでは、
企業は社員の「副業・兼業」を
認めなければならないのでしょうか?

言い方を変えれば、
企業は社員の「副業・兼業」に対して、
どの程度の規制を掛けることができるのでしょうか?

法的に考えてみたいと思います。

 

労働基準法には、
「副業・兼業」を直接的に規制する条文
は存在しません。

ただし、
労働基準法第38条において、


(時間計算)
第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、
労働時間に関する規定の適用については通算する。


という規定があります。

 

「事業場」とは、
●同じ法人であっても、工場と診療所は別々の事業場
●同じ場所にあっても、異なる企業であれば別々の事業場
と定義されています。

したがって、
「事業場を異にする場合」には、
「異なる2以上の企業で副業・兼業をする場合」も含まれ、
「副業・兼業」をある程度想定していると考えることができます。

以上より、
強行法規であり労働者保護法である労働基準法は、

●使用者は労働者に「副業・兼業」させてはならない。
とも、
●使用者は労働者の「副業・兼業」を認めなければならない。
とも言っておらず、

「副業・兼業」は当事者(使用者と労働者)の自由である。
という立場を取っていると考えられます。

 

また、
社会保険各法では、
被保険者の「副業・兼業」を想定しています。

雇用保険法では、
「雇用保険に関する業務取扱要領(平成30年2月5日以降)」において、


同時に2以上の雇用関係にある労働者については、当該2以上の雇用関係のうち一の雇用関係(原則として、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係とする)についてのみ被保険者となる。


としています。
※行政解釈のみで被保険者を限定するのは、問題だと考えますが…。



健康保険法や厚生年金保険法においても、
「二以上の事業所に使用される場合」として各種規定が存在します。


健康保険法
(保険料の負担及び納付義務)
第百六十一条4 被保険者が同時に二以上の事業所に使用される場合における各事業主の負担すべき保険料の額及び保険料の納付義務については、政令で定めるところによる。


厚生年金保険法
(保険料の負担及び納付義務)
第八十二条3 被保険者が同時に二以上の事業所又は船舶に使用される場合における各事業主の負担すべき保険料の額及び保険料の納付義務については、政令の定めるところによる。


このように、
社会保険法では、
いつでも「副業・兼業」に対応できる状況にあります。

 

それでは、
司法(裁判所)ではどのように考えているのでしょう?

「副業・兼業」に関する裁判例では、


労働者は労働契約を通じて一日のうち一定の限られた時間のみ、労務に服するのを原則とし、就業時間外は本来労働者の自由である
小川建設事件(東京地決昭和57年11月19日)


という基本姿勢のもと、

@ 労務提供上の支障がある場合
A 企業秘密が漏洩する場合
B 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
C 競業により、会社の利益を害する場合

に限り、
企業は社員の「副業・兼業」を規制できる
という判断をしています。

 

以上より、
誤解を恐れずに結論を申し上げるならば、
以下のとおり。

法律では、
「副業・兼業」の可否について
企業は社員の「副業・兼業」をさせてはならない。
とも、
企業は社員の「副業・兼業」を認めなければならない。
とも言っておらず、
「副業・兼業」は当事者(使用者と労働者)の自由である。
と考えている。

したがって、
企業には、
組織の秩序を維持する権利があり、
公序良俗に反しない範囲で
就業規則等の労働契約により、
社員の「副業・兼業」を規制することができる。

しかし、
「副業・兼業」が原因でトラブルが発生し、
司法判断を受けなければならない場合、
4つの限られた正当な理由がなければ、
「副業・兼業」を認めざるを得ないのが現実。



であれば、
企業は
「副業・兼業はありえない。」という日本社会にはびこる因習から抜け出し、
社員の「副業・兼業」を積極的に受け入れ、
社員が自己の能力を最大限に発揮する儲かる会社を目指すべきです!


このホームページで、
企業が社員の「副業・兼業」を受け入れるに際し、
直面する労働問題についてどのような対応をすればよいのか?
労働法を客観的かつ論理的かつ合理的に解釈した答え
を理解してください!

ただし、
厚生労働省がホームページで公開している
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
および
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A
に記載されている基本事項には触れませんので、
予習願います!