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会社は、労働基準法で決められている労働時間の上限 を超えて社員に働いてもらうためには「36協定届」 という書類を労働基準監督署に提出する必要があります。 36協定届には、 ・1日間の残業は、5時間まで。 のように、一定の期間ごとに残業ができる時間数 (≒上限時間)を書くことになっています。 本来、この上限時間の範囲内でしか残業させられない のですが、会社を運営していると、一度に大量の注文が 舞い込んだりすると、ウッカリ上限時間を超えちゃった♪ なんてことがありえます。 ウッカリ36協定を超えて社員を残業をさせてしまったら、 法的にはどんな結果になるのか?を考えてみます。 ※ここでは、残業=法定時間外労働とします。 【事例】 ●社員数5名のIT企業 ●所定労働時間 ●36協定の内容 ●2月(1月間がピッタリ4週間)の残業実績 結果として、 会社は、 ・36協定違反そのものには罰則がない
働き方改革によって、労働基準法第36条にも新たに 罰則が適用されましたが、対象は第6項のみ。 ●労働基準法第36条第6項 上記を守れていない場合、 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する とされています(第119条)。 事例の場合、 IT企業なので、「健康上特に有害な業務」ではなく、 1月間の時間外労働と休日労働の合計時間は60時間 であり、法定上限の100時間未満なので、第36条 第6項のいずれにも違反していないことになります。 実は、労働基準法第36条には、 36協定に違反して、上限時間を超えて残業をさせても、 36協定違反に対する罰則は規定されていないのです!
労働基準法第37条は、残業代に関する規定です。 残業代を支払っていない場合、36条第6項と同じく 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する とされています。 36協定の上限時間を超える協定違反の残業に対しても、 会社は信義則に基づき残業代を支払う義務があります。 事例の場合、 36協定違反の残業時間分も含めた60時間分の残業代 をキッチリ支払っているので、37条違反にもなりません。
「そしたら、残業代さえキッチリ支払っておけば、 36協定の上限時間は無視してもいいんじゃね?」 となりそうですが、そうは問屋が卸しません。 36協定違反の残業時間は、法定労働時間を定める 労働基準法第32条に違反することになります。 ●労働基準法第32条 事例の場合、 第2週目の金曜日の残業終了時点で、月間残業時間が 36協定の上限時間である30時間ピッタリとなります。 つまり、 第3週目以降は、一切残業ができないことになるのですが、 これを無視して残業を続けており、毎週40時間を超えて 働くことになるので、毎週第32条第1項に違反している ことになります。 ちなみに、 残業時間は1日3時間であり、36協定の1日上限の 5時間を超えていないので、第32条第2項には違反 していません。
32条違反も、36条や37条と同じ罰則が適用され、 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する とされています。 ここで興味深いのが、罪数の数え方。 罪数は、各労働者毎に1件の違反につき1罪として数えます。 事例の場合、 第3週と第4週目は、いずれも第32条第1項に違反している ので、合計2罪となります。 これを5名に行わせているので、合計5名×2罪=10罪が 成立することになります! 併合罪に係る刑法第47条と第48条を踏まえると、事例の場合、 9ヶ月(6ヶ月×1.5)以下の懲役または300万円(30万円×10罪) 以下の罰金に処される可能性があるということになります。 ちなみに、 36協定を労働基準監督署に提出することなく、残業 をさせていた場合は、残業初日から第32条第2項違反 の罪数がカウントされていくので、1月間だけで 5名×28罪=140罪=4,200万円以下の罰金になりますね!
実際には、 1.労働基準監督官が検察官に送致(≒書類送検)し、 という手順を経て、はじめて刑罰が確定します。 東京労働局管内における労働基準法違反の検察送致件数が 年間50件以下であるという事実を考慮すると、 相当悪質な事案でない限り、起訴されないでしょう。 とはいえ、犯罪行為であることには変わりありません。 社員と話し合い、届出書1枚を提出するだけでよいので、 社員に残業をお願いするときは、36協定手続きを忘れずに しましょう! |
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