4分の3基準は、
健康保険法第3条第1項および厚生年金保険法第12条によれば、
以下のように定義できます。

「事業所に使用される者であって、
その1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の 一週間の所定労働時間の
4分の3以上である同条に規定する短時間労働者であり、
その1月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の1月間の所定労働日数の
4分の3以上である短時間労働者」は、
4分の3基準を満たし社会保険の被保険者資格を取得します。



4分の3基準の具体的運用について、以下の通知が出されています。


●短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に係る事務の取扱いについて
(平成28年5月13日 保保発0513第2号)


第2 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準等に関する具体的事務の取扱い
1 4分の3基準について

(1) 1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数の取扱い

1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数とは、
就業規則、雇用契約書等により、
その者が通常の週及び月に勤務すべきこととされている時間及び日数をいう。

※1週間の所定労働時間の算出方法、「通常の週」および「通常の月」については、
後述する適用拡大の5要件A「1週間の所定労働時間が20時間以上であること」の@〜Dを参照。



(2) 所定労働時間又は所定労働日数と実際の労働時間又は労働日数が
乖離していることが常態化している場合の取扱い

所定労働時間又は所定労働日数は4分の3基準を満たさないものの、
事業主等に対する事情の聴取やタイムカード等の書類の確認を行った結果、

残業等を除いた基本となる実際の労働時間又は労働日数が
直近2月において4分の3基準を満たしている場合で、
今後も同様の状態が続くことが見込まれるときは、

当該所定労働時間又は当該所定労働日数は
4分の3基準を満たしているものとして取り扱うこととする。



(3) 所定労働時間又は所定労働日数を明示的に確認できない場合の取扱い

所定労働時間又は所定労働日数が、
就業規則、雇用契約書等から明示的に確認できない場合は、
残業等を除いた基本となる実際の労働時間又は労働日数を事業主等から事情を聴取した上で、
個別に判断することとする。




昭和55年内かんは、
総合的に判断ができたため、誤解を恐れずにいうならば、
行政の恣意的な判断が可能であったと思います。

今回の4分の3基準は、
就業規則や雇用契約書等により所定労働時間や所定労働日数を確認することとし、
判断基準を簡便化、明確化、客観化する狙いがあるようです。

とはいえ、
上記通知(2)および(3)を考慮すると、
一定程度の行政の裁量を認めていると考えることができます。



ここで、問題なのが、
平成28年9月30日に公表された
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(第2版)
の【問2の2】と上記通知の(2)の整合性です。


【【問2の2】

就業規則や雇用契約書等で定められた
所定労働時間または所定労働日数が4分の3基準を満たさない者が、
業務の都合等により恒常的に
実際の労働時間および労働日数が4分の3基準を満たした場合は、
どのように取り扱うのか?


【回答】

実際の労働時間および労働日数が連続する2月において4分の3基準を満たした場合で、
引き続き同様の状態が続いているまたは続くことが見込まれるときは、
4分の3基準を満たした月の3月目の初日に被保険者資格を取得します。




すなわち、
通知(保保発0513第2号)では、


「残業等を除いた基本となる実際の労働時間又は労働日数が
4分の3基準を満たしていれば、
当該所定労働時間または当該所定労働日数は
4分の3基準を満たしているものとして取り扱う。」

とされており、
残業時間は考慮しないことが明らかですが、
Q&A集(第2版)では、


「実際の労働時間および労働日数が4分の3基準を満たした場合、
被保険者資格を取得する。」

とされているだけで、
残業時間を含めて考慮するかどうかは明示されておりません。


この問題について、
年金事務所にFAXにて問い合わせたところ、
平成28年11月29日に文書により回答を受けました。

「機構本部に確認済み」とされており、
一年金事務所職員による
いい加減な回答ではないと判断します。


結論としては、
4分の3基準を判断する際に、
所定外労働時間や所定休日出勤等は、
考慮する必要はないことになります。

雇用契約書等の所定労働時間や労働日数と、
実態としての所定労働時間や労働日数が
異なる場合は、

実際の所定労働時間や労働日数により、
4分の3基準を判断することになります。



4分の3基準は、
通常の労働者の労働時間および労働日数と比較します。

昭和55年内かんでは、
「通常の就労者」がどのような者を指すのか具体的に示されていませんでしたが、
今回の法改正により「通常の労働者」の定義は、
パートタイム労働法第2条によると明確にされました。


●パートタイム労働法第2条

この法律において「短時間労働者」とは、
一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者
(当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する
当該事業所に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、
当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)
の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。


●パートタイム労働法施行規則第1条

法第二条の厚生労働省令で定める場合は、
同一の事業所に雇用される通常の労働者の従事する業務が二以上あり、
かつ、
当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する労働者の数が
当該通常の労働者の数に比し著しく多い業務
(当該業務に従事する通常の労働者の一週間の所定労働時間が
他の業務に従事する通常の労働者の一週間の所定労働時間のいずれよりも長い場合に係る業務を除く。)
に当該事業所に雇用される労働者が従事する場合とする。


●短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について(平成26年7月24日 基発0724第2号)

2 定義(法第2条関係)

(3)法第2条の「通常の労働者」とは、
社会通念に従い、
比較の時点で当該事業所において「通常」と判断される労働者をいうこと。

当該「通常」の概念については、
就業形態が多様化している中で、
いわゆる「正規型」の労働者が事業所や特定の業務には存在しない場合も出てきており、
ケースに応じて個別に判断をすべきものである。

具体的には、
「通常の労働者」とは、
その業務に従事する者の中にいわゆる正規型の労働者がいる場合は、
当該正規型の労働者であるが、

当該業務に従事する者の中にいわゆる正規型の労働者がいない場合については、
当該業務に基幹的に従事するフルタイム労働者(以下「フルタイムの基幹的労働者」という。)が法の趣旨に鑑みれば通常と考えられることから、
この者が「通常の労働者」となる。

また、
法が業務の種類ごとに短時間労働者を定義していることから、
「通常」の判断についても業務の種類ごとに行うものであること(「業務の種類」については後出(6)を参照。)。

この場合において、
いわゆる正規型の労働者とは、
社会通念に従い、
当該労働者の雇用形態、賃金体系等
(例えば、労働契約の期間の定めがなく、長期雇用を前提とした待遇を受けるものであるか、賃金の主たる部分の支給形態、賞与、退職金、定期的な昇給又は昇格の有無)
を総合的に勘案して判断するものであること。

また、
フルタイムの基幹的労働者は、
当該業務に恒常的に従事する1週間の所定労働時間が最長の、正規型の労働者でない者を指し、
一時的な業務のために臨時的に採用されているような者は含まないものであること。

また、
この者(※論理的に考えて、フルタイムの基幹的労働者のことを指していると考えられる。)が、
当該事業所において異なる業務に従事する正規型の労働者の最長の所定労働時間と比較してその所定労働時間が短い場合には、
そのような者は「通常の労働者」にはならないものであること。



(4)「所定労働時間が短い」とは、
わずかでも短ければ該当するものであり、
例えば通常の労働者の所定労働時間と比べて1割以上短くなければならないといった基準があるものではないこと。



(5)短時間労働者であるか否かの判定は、具体的には以下に従い行うこと。

【イ】 同一の事業所における業務の種類が一の場合

当該事業所における1週間の所定労働時間が最長である通常の労働者と比較し、
1週間の所定労働時間が短い通常の労働者以外の者が短時間労働者となること
(第2条括弧書以外の部分。下図の1− (1)及び1−(2)))。

なお、
当該業務にいわゆる正規型の労働者がいない場合は、
フルタイムの基幹的労働者との比較となること
(下図の1−(3))。


【ロ】同一の事業所における業務の種類が二以上あり、同種の業務に従事する通常の労働者がいない場合

当該事業所における1週間の所定労働時間が最長である通常の労働者と比較し、
1週間の所定労働時間が短い通常の労働者以外の者が短時間労働者となること
(第2条括弧書以外の部分。下図2-(1)のB業務)。


【ハ】同一の事業所における業務の種類が二以上あり、同種の業務に従事する通常の労働者がいる場合

(イ)
原則として、
同種の業務に従事する1週間の所定労働時間が最長の通常の労働者と比較して1週間の所定労働時間が短い通常の労働者以外の者が短時間労働者となること
(第2条括弧書。下図の2−(2))。

なお、
フルタイムの基幹的労働者が通常の労働者である業務においては、
必然的に、その者より1週間の所定労働時間が短い者が短時間労働者となること
(下図の2−(3))。


(ロ)
同種の業務に従事する通常の労働者以外の者が当該業務に従事する通常の労働者に比べて著しく多い場合(当該業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間が他の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間のいずれよりも長い場合を除く。)は、
当該事業所における1週間の所定労働時間が最長の通常の労働者と比較して1週間の所定労働時間が短い当該業務に従事する者が短時間労働者となること
(第2条括弧書中厚生労働省令で定める場合(則第1条)。下図の2−(4)のB業務)。

これは、
たまたま同種の業務に従事する通常の労働者がごく少数いるために、
そのような事情がなければ一般には短時間労働者に該当するような者までもが法の対象外となることを避ける趣旨であるから、
適用に当たって同種の業務に従事する通常の労働者と、
当該事業所における1週間の所定労働時間が最長の通常の労働者の数を比較する際には、
同種の業務において少数の通常の労働者を配置する必然性等から、
事業主に法の適用を逃れる意図がないかどうかを考慮すべきものであること。






(6)上記(5)は、
労働者の管理については、
その従事する業務によって異なっていることが通常と考えられることから、
短時間労働者であるか否かを判断しようとする者が
従事する業務と同種の業務に従事する通常の労働者がいる場合は、
その労働者と比較して判断することとしたものであること。

なお、
同種の業務の範囲を判断するに当たっては、
厚生労働省編職業分類』の細分類の区分等を参考にし、
個々の実態に即して判断すること。



(7)短時間労働者の定義に係る用語の意義はそれぞれ次のとおりであること。

「1週間の所定労働時間」を用いるのは、
短時間労働者の定義が、
雇用保険法等労働関係法令の用例をみると1週間を単位としていることにならったものであること。

この場合の1週間とは、
就業規則その他に別段の定めがない限り原則として日曜日から土曜日までの暦週をいうこと。

ただし、
変形労働時間制が適用されている場合や所定労働時間が1月、数箇月又は1年単位で定められている場合などには、次の式によって当該期間における1週間の所定労働時間として算出すること。

(当該期間における総労働時間)÷((当該期間の暦日数)/7)




以上をまとめると、
4分の3基準を判断する際に比較対象となる「通常の労働者」は、
以下のとおりとなります。

@当該事業所の業務の種類が1つしかない場合

正規型の労働者がいる場合

正規型の労働者のうち所定労働時間が最も長い者

正規型の労働者がいない場合

フルタイムの基幹労働者

A当該事業所の業務の種類が2つ以上あり、同種の業務に正規型の労働者が居る場合

同種の業務に従事する通常の労働者(所定労働時間が最長の正規型労働者)以外の者の割合が著しく多い場合

1週間の所定労働時間が他の業務の通常の労働者(所定労働時間が最長の正規型労働者またはフルタイム基幹労働者)の所定労働時間のいずれよりも長い場合

同種の業務に従事する正規型の労働者のうち最長の所定労働時間の者

1週間の所定労働時間が他の業務の通常の労働者(所定労働時間が最長の正規型労働者またはフルタイム基幹労働者)の所定労働時間のいずれよりも長くない場合

他の業務に従事する通常の労働者(所定労働時間が最長の正規型労働者またはフルタイム基幹労働者)のうち最長の所定労働時間の者

通常の労働者(所定労働時間が最長の正規型労働者)以外の者の割合が著しく多くない場合

同種の業務に従事する正規型の労働者のうち最長の所定労働時間の者

※「同種の業務に従事する通常の労働者以外の者が当該業務に従事する通常の労働者に比べて著しく多い場合」とは、たとえば、通常の労働者以外の者が100人おり、通常の労働者が1名のみであった場合等をいう。

 

B当該事業所の業務の種類が2つ以上あり、同種の業務に正規型の労働者は居ないが、フルタイム基幹労働者が居る場合

同種の業務に従事する通常の労働者(フルタイム基幹労働者)以外の者の割合が著しく多い場合

1週間の所定労働時間が他の業務の通常の労働者(所定労働時間が最長の正規型労働者またはフルタイム基幹労働者)の所定労働時間のいずれよりも長い場合

同種の業務に従事するフルタイム基幹労働者

1週間の所定労働時間が他の業務の通常の労働者(所定労働時間が最長の正規型労働者またはフルタイム基幹労働者)の所定労働時間のいずれよりも長くない場合

他の業務に従事する通常の労働者(所定労働時間が最長の正規型労働者またはフルタイム基幹労働者)のうち最長の所定労働時間の者

通常の労働者(フルタイム基幹労働者)以外の者の割合が著しく多くない場合

同種の業務に従事するフルタイム基幹労働者

※フルタイムの基幹労働者の所定労働時間は、必ず他の業務に従事する正規型の労働者の最長の所定労働時間と同じかそれ以上でなければならない。

 

C当該事業所の業務の種類が2つ以上あり、同種の業務に正規型の労働者もフルタイム基幹労働者も居ない場合

⇒当該事業所における1週間の所定労働時間が最長である通常の労働者(所定労働時間が最長の正規型労働者またはフルタイム基幹労働者)が当該業務の「通常の労働者」となる。



今後、
昭和55年内かんでいう「通常の就労者」は、
4分の3基準の「通常の労働者」と同義として扱われると予想されます。

もしそうなれば、
施行日前から被保険者資格を取得している者は、
昭和55年内かんと4分の3基準の両方の考え方を取り入れた
「ハイブリッド昭和55年内かん」により判断されると言えるでしょう。



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