「パートタイム労働法」が働き方改革法の成立により、
「パートタイム・有期雇用労働法」に改正されたことに伴い、
健康保険法および厚生年金保険法上の「4分の3基準」の比較対象である
「通常の労働者」の定義が変更となりました。

「パートタイム・有期雇用労働法」では、
中小事業主については、令和3年3月31日まで
改正法の一部の施行が適用猶予されています。

ですが、
健康保険法および厚生年金保険法ではそのような扱いがなく、
令和2年4月1日から全面適用されますのでご注意ください。


4分の3基準は、
健康保険法第3条第1項および厚生年金保険法第12条によれば、
以下のように定義できます。

「事業所に使用される者であって、
その1週間の所定労働時間が
同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間の
4分の3以上である短時間労働者であり、
かつ
その1月間の所定労働日数が
同一の事業所に使用される通常の労働者の1月間の所定労働日数の
4分の3以上である短時間労働者」
は、4分の3基準を満たし社会保険の被保険者資格を取得します。



4分の3基準の具体的運用について、以下の通知が出されています。


●短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に係る事務の取扱いについて
(平成28年5月13日 保保発0513第2号)


第2 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準等に関する具体的事務の取扱い
1 4分の3基準について

(1) 1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数の取扱い

1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数とは、
就業規則、雇用契約書等により、
その者が通常の週及び月に勤務すべきこととされている時間及び日数をいう。

※1週間の所定労働時間の算出方法、「通常の週」および「通常の月」については、
後述する適用拡大の5要件A「1週間の所定労働時間が20時間以上であること」の@〜Dを参照。



(2) 所定労働時間又は所定労働日数と実際の労働時間又は労働日数が
乖離していることが常態化している場合の取扱い

所定労働時間又は所定労働日数は4分の3基準を満たさないものの、
事業主等に対する事情の聴取やタイムカード等の書類の確認を行った結果、

残業等を除いた基本となる実際の労働時間又は労働日数が
直近2月において4分の3基準を満たしている場合で、
今後も同様の状態が続くことが見込まれるときは、

当該所定労働時間又は当該所定労働日数は
4分の3基準を満たしているものとして取り扱うこととする。



(3) 所定労働時間又は所定労働日数を明示的に確認できない場合の取扱い

所定労働時間又は所定労働日数が、
就業規則、雇用契約書等から明示的に確認できない場合は、
残業等を除いた基本となる実際の労働時間又は労働日数を事業主等から事情を聴取した上で、
個別に判断することとする。




昭和55年内かんは、
総合的に判断ができたため、誤解を恐れずにいうならば、
行政の恣意的な判断が可能であったと思います。

今回の4分の3基準は、
就業規則や雇用契約書等により所定労働時間や所定労働日数を確認することとし、
判断基準を簡便化、明確化、客観化する狙いがあるようです。

とはいえ、
上記通知(2)および(3)を考慮すると、
一定程度の行政の裁量を認めていると考えることができます。



ここで、問題なのが、
平成28年9月30日に公表された
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(第2版)
の【問2の2】と上記通知の(2)の整合性です。


【【問2の2】

就業規則や雇用契約書等で定められた
所定労働時間または所定労働日数が4分の3基準を満たさない者が、
業務の都合等により恒常的に
実際の労働時間および労働日数が4分の3基準を満たした場合は、
どのように取り扱うのか?


【回答】

実際の労働時間および労働日数が連続する2月において4分の3基準を満たした場合で、
引き続き同様の状態が続いているまたは続くことが見込まれるときは、
4分の3基準を満たした月の3月目の初日に被保険者資格を取得します。




すなわち、
通知(保保発0513第2号)では、


「残業等を除いた基本となる実際の労働時間又は労働日数が
4分の3基準を満たしていれば、
当該所定労働時間または当該所定労働日数は
4分の3基準を満たしているものとして取り扱う。」

とされており、
残業時間は考慮しないことが明らかですが、
Q&A集(第2版)では、


「実際の労働時間および労働日数が4分の3基準を満たした場合、
被保険者資格を取得する。」

とされているだけで、
残業時間を含めて考慮するかどうかは明示されておりません。


この問題について、
年金事務所にFAXにて問い合わせたところ、
平成28年11月29日に文書により回答を受けました。

「機構本部に確認済み」とされており、
一年金事務所職員による
いい加減な回答ではないと判断します。


結論としては、
4分の3基準を判断する際に、
所定外労働時間や所定休日出勤等は、
考慮する必要はないことになります。

雇用契約書等の所定労働時間や労働日数と、
実態としての所定労働時間や労働日数が
異なる場合は、

実際の所定労働時間や労働日数により、
4分の3基準を判断することになります。



4分の3基準は、
「通常の労働者」の労働時間および労働日数と比較します。

昭和55年内かんでは、
「通常の就労者」がどのような者を指すのか具体的に示されていませんでしたが、
平成24年の法改正により、「通常の労働者」の定義は、
パートタイム労働法第2条によると明確にされました。

しかし、
平成30年の「働き方改革法」の成立により、
「パートタイム労働法」⇒「パートタイム・有期雇用労働法」となった影響を受け、
以下に示すように
また不明確な規定に先祖返りしています。


●健康保険法第3条第1項第9号

【通常の労働者】
当該事業所に使用される通常の労働者と
同種の業務に従事する当該事業所に使用される者にあっては、
厚生労働省令で定める場合を除き、
当該者と同種の業務に従事する当該通常の労働者

※同種の業務に通常の労働者がいない場合が規定されていないので、
 この場合は単純に「当該事業所に使用される通常の労働者」と考えるしかない。



【短時間労働者】
一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される
通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い者


●健康保険法施行規則第1条

第三条第一項第九号の厚生労働省令で定める場合は、
同一の事業所に雇用される通常の労働者の従事する業務が二以上あり、
かつ、
当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する労働者の数が
当該通常の労働者の数に比し著しく多い業務
(当該業務に従事する通常の労働者の一週間の所定労働時間が
他の業務に従事する通常の労働者の一週間の所定労働時間の
いずれよりも長い場合に係る業務を除く。)
に当該事業所に雇用される労働者が従事する場合とする。





パートタイム労働法を準用していた時は、
所定労働時間が最長の通常の労働者と比較して、
4分の3以上かどうか?を判断すればよいことが明確でした。

今回の法改悪・・・によって、
条文上では、また不明確になってしまいましたが、
法改正に至った経緯を考慮するならば、
パートタイム労働法を準用していた時と同様に考えるべきであり、
所定労働時間が最長の通常の労働者と比較すべきでしょう。



結局のところ、
4分の3基準を判断する際に比較対象となる「通常の労働者」は、
以下のとおりとなると考えます。

@当該事業所の業務の種類が1つしかない場合
⇒当該事業所で所定労働時間が最も長い通常の労働者を「通常の労働者」とする。
※最も長い「労働者」であればよく、「被保険者」である必要はないことに注意。

A当該事業所の業務の種類が2つ以上ある場合

通常の労働者の従事する業務が二以上あり、同種の業務に従事する通常の労働者がいる 同種の業務に従事する労働者の数が
当該通常の労働者の数に比し著しく多くない
同種の業務に従事する通常の労働者のうち所定労働時間が最も長い者
同種の業務に従事する労働者の数が
当該通常の労働者の数に比し著しく多い
当該事業所全体で所定労働時間が最も長い通常の労働者

通常の労働者の従事する業務が二以上あるが、
同種の業務に従事する通常の労働者がいない

※「同種の業務に従事する労働者の数が当該通常の労働者の数に比し著しく多い」とは、
 たとえば、通常の労働者以外の者が100人おり、通常の労働者が1名のみの場合等をいいます。



今後、
昭和55年内かんでいう「通常の就労者」は、
4分の3基準の「通常の労働者」と同義として扱われると予想されます。

もしそうなれば、
施行日前から被保険者資格を取得している者は、
昭和55年内かんと4分の3基準の両方の考え方を取り入れた
「ハイブリッド昭和55年内かん」により判断されると言えるでしょう。



「適用拡大の5要件」へ。



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