4分の3基準を満たさない者でも、
健康保険法第3条第1項および厚生年金保険法第12条により、
5要件を全て満たせば社会保険の被保険者となることができます。

事業所に使用される者であって、
その1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の
1週間の所定労働時間の4分の3未満である短時間労働者

または
その一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の
一月間の所定労働日数の4分の3未満である短時間労働者に該当し、

かつ、
イからニまでのすべての要件に該当するもの

イ一週間の所定労働時間が20時間以上であること。

ロ当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること。

ハ報酬(最低賃金法第四条第三項各号に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除く。)について、厚生労働省令で定めるところにより、報酬月額が、8万8千円以上であること。

ニ学校教育法第50条に規定する高等学校の生徒、同法第83条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者でないこと。



5要件の残りの1要件は、
「特定適用事業所に使用されていること。」ですが、
この要件は、
年金機能強化法附則第17条および附則第46条により、
社会保険の被保険者となる従業員数が501人以上の事業所すなわち大企業を適用拡大の対象とし、
特定適用事業所以外の事業所すなわち中小企業については、
当分の間、
激変緩和措置として強制適用対象としないために設けられました。



当分の間、
特定適用事業所以外の適用事業所に使用される者であって、
その1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の
1週間の所定労働時間の4分の3未満である短時間労働者
または
その1月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の
1月間の所定労働日数の4分の3未満である短時間労働者に該当するものについては、
厚生年金保険および健康保険の被保険者としない。

したがって、
5要件は、
健康保険法および厚生年金保険法による4要件+年金機能強化法による1要件によって構成されているのです。

以下では、
5要件について詳述していきます。





特定適用事業所とは、
年金機能強化法附則第17条および附則第46条により、
以下のとおり定義されています。

事業主が同一である一または二以上の適用事業所であって、
当該一または二以上の適用事業所に使用される通常の労働者及びこれに準ずる者※の総数が常時500人を超えるものの各適用事業所をいう。

※これに準ずる者
1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の
1週間の所定労働時間の4分の3以上であり、
かつ、
その1月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の
1月間の所定労働日数の4分の3以上である短時間労働者をいう。



具体的運用については、
平成28年5月13日 保保発0513第2号の2(5)にて通知されています。

@「事業主が同一である1又は2以上の適用事業所」

(@)適用事業所が法人事業所の場合、法人そのものを事業主として取り扱い、同一法人格に属する全ての適用事業所を「事業主が同一である1又は2以上の適用事業所」として取り扱うこととする。

(A)適用事業所が個人事業所の場合、個人事業主を事業主として取り扱い、事業主が同一である適用事業所は現在の適用事業所の単位のほかに無いものとして取り扱うこととする。

(B)適用事業所が国の事業所の場合、国に属する全ての適用事業所を「事業主が同一である1又は2以上の適用事業所」として取り扱うこととする。

(C)適用事業所が地方公共団体の事業所の場合、各地方公共団体を事業主として取り扱い、同一の地方公共団体に属する全ての適用事業所を「事業主が同一である1又は2以上の適用事業所」として取り扱うこととする。

具体的には、法人事業所および地方公共団体の場合、法人番号が同じ適用事業所をまとめて被保険者数を算定します。個人事業所の場合は現在の適用事業所のみで算定します。



A「通常の労働者及びこれに準ずる者」
厚生年金保険の被保険者資格を有する者を「通常の労働者及びこれに準ずる者」として取り扱うこととする。

厚生年金保険は、
70歳以上になると原則として被保険者資格を喪失しますが、
高齢任意加入被保険者として資格を取得することができます。

また、
70歳以上となっても、
厚生年金保険法第27条に規定する70歳以上の使用される者に該当する場合は、
被保険者数算定の対象となります。

したがって、
「通常の労働者及びこれに準ずる者の総数」は以下の合計となります。
・正社員
・施行日前に昭和55年内かんにより被保険者資格を取得した短時間労働者
・施行日以後4分の3基準により被保険者資格を取得した短時間労働者
・厚生年金保険法第27条に規定する70歳以上の使用される者(厚生年金保険の被保険者であった70歳以上の者であって、適用事業所に使用され、かつ、厚生年金保険法第12条各号に該当しない者)
・厚生年金保険の高齢任意加入被保険者
※4分の3基準を満たさず4要件に該当する者(以下、「特定4分の3未満短時間労働者」という。)は除く。



B 「常時500 人を超える」
事業主が同一である1又は2以上の適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が、
1年間のうち6月間以上500 人を超えることが見込まれる場合を
「常時500 人を超える」として取り扱うこととする。

直近1年間のうち6月間以上500 人を超えた場合は、
「常時500 人を超える」とされ、特定適用事業所と取り扱われます。

常時500 人を超えた場合や超えなくなった場合の実務対応は、
以下のとおりとなります。


施行日から常時500 人を超える

日本年金機構で確認した場合

平成28年8月頃に「施行日に特定適用事業所に該当する旨のお知らせ」または8〜9月頃に「特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ」が送付され、10月頃に「特定適用事業所該当通知書」が送付されてくる。

施行日後、常時500 人を超える

直近11ヶ月のうち5ヶ月500人を超えたことが確認された場合に「特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ」が送付される。
翌月も500人を超えた場合、「特定適用事業所該当届」を届け出る。
届け出をしなかった場合、機構から「特定適用事業所該当通知書」が送付されてくる。

常時500 人を超える

事業主が該当すると判断した場合

年金事務所等へ「特定適用事業所該当届」を届け出る。

常時500 人を超えなくなった

何もしない場合

引き続き特定適用事業所であるものとして取り扱われる。

不該当届を届け出た場合

被保険者(「通常の労働者及びこれに準ずる者」および「特定4分の3未満短時間労働者」)の4分の3以上の同意を得て、「特定適用事業所不該当届」を届け出た場合、特定適用事業所に該当しなくなったものとして取り扱われる。特定4分の3未満短時間労働者は、当該申出が受理された日の翌日に被保険者資格を喪失するため、別途「被保険者資格喪失届」を届け出る必要あり。


国の機関(立法、司法、行政)は、
全てを合わせて1つの単位として特定適用事業に該当するか判断するため、
国に属するすべての適用事業所が特定適用事業所として短時間労働者の適用拡大対象となります。

常時500 人を超えない適用事業所であっても、
年金機能強化法(改正法)附則第17条第5項および附則第46条第5項の規定により、
「通常の労働者及びこれに準ずる者」および「特定4分の3未満短時間労働者」の2分の1以上の同意を得て、
年金事務所等に申し出をすることにより、
特定適用事業所と取り扱われることが可能となることが予想されます。





具体的には、
平成28年5月13日 保保発0513第2号の2(1)にて通知されています。

@ 1週間の所定労働時間とは、
就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべきこととされている時間をいう。

この場合の「通常の週」とは、
祝祭日及びその振替休日、年末年始の休日、夏季休暇等の特別休日(週休日その他概ね1か月以内の期間を周期として規則的に与えられる休日以外の休日)を含まない週をいう。



A 1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し、
通常の週の所定労働時間が一通りでない場合は、
当該周期における1週間の所定労働時間の平均により算定された時間を1週間の所定労働時間とする。

4週5休制等により、1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し、一定ではない場合です。



B 所定労働時間が1か月の単位で定められている場合は、
当該所定労働時間を12 分の52 で除して得た時間を1週間の所定労働時間とする。

これは、
1年間を52週、1ヶ月を12分の52週とし、
1ヶ月の所定労働時間×52分の12することにより、
1週間の所定労働時間を算出するということです。



C 所定労働時間が1か月の単位で定められている場合で、
特定の月の所定労働時間が例外的に長く又は短く定められているときは、
当該特定の月以外の通常の月の所定労働時間を12 分の52 で除して得た時間を1週間の所定労働時間とする。

夏季休暇等のため、
夏季の特定の月の所定労働時間が例外的に短く定められている場合や、
繁忙期中の特定の月の所定労働時間が例外的に長く定められている場合です。



D 所定労働時間が1年の単位で定められている場合は、
当該所定労働時間を52 で除して得た時間を1週間の所定労働時間とする。



E 所定労働時間は週20 時間未満であるものの、
事業主等に対する事情の聴取やタイムカード等の書類の確認を行った結果、
残業等を除いた基本となる実際の労働時間が直近2月において週20 時間以上である場合で、
今後も同様の状態が続くことが見込まれるときは、
当該所定労働時間は週20 時間以上であることとして取り扱うこととする。



F 所定労働時間が、就業規則、雇用契約書等から明示的に確認できない場合は、残業等を除いた基本となる実際の労働時間を事業主等から事情を聴取した上で、個別に判断することとする。





具体的には、
平成28年5月13日 保保発0513第2号の2(2)にて通知されています。

@ 期間の定めがなく使用される場合及び使用期間が1年以上である場合は、
継続して1年以上使用されることが見込まれることとして取り扱うこととする。



A 使用期間が1年未満である場合であっても、
次の(@)及び(A)のいずれかに該当するときは、
継続して1年以上使用されることが見込まれることとして取り扱うこととする。

(@) 就業規則、雇用契約書等その他書面においてその契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されていること

(A) 同一の事業所において同様の雇用契約に基づき使用されている者が更新等により1年以上使用された実績があること



B 上記A(@)及び(A)のいずれかに該当する場合であっても、
労使双方により1年以上使用しないことについて合意されていることが確認されたときは、
継続して1年以上使用されることが見込まれないこととして取り扱うこととする。



C 当初は継続して1年以上使用されることが見込まれなかった場合であっても、
その後において、継続して1年以上使用されることが見込まれることとなったときは、
その時点から継続して1年以上使用されることが見込まれることとして取り扱うこととする。



平成28年5月16日に公表された
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集
も参考になります。



【問19】
施行日時点において、
雇用期間が継続して1年以上見込まれるか否かの判定は、
どの時点から行うか。


【回答】
施行日時点において判定を行います。

したがって、
施行日以降に雇用された場合だけでなく、
施行日より前から引き続き雇用されている場合についても、

施行日時点において雇用期間が継続して1年以上見込まれるときに、
要件を満たすこととなります。



【問21】
雇用契約書その他書面においてその契約が更新される旨
または更新される場合がある旨が明示されているが、
契約更新が1日ないし数日の間を空けて行われる場合は、
どのように取り扱うのか。


【回答】
事業主と被保険者との間で
次の契約更新の予定が明らかであるような事実が認められる等、

就労の実態に照らして
事実上の使用関係が中断することなく存続していると判断することができる場合には、

雇用期間が継続して1年以上見込まれることとして取り扱うことになります。



【問22】
雇用期間は1年以上あるが、
雇用期間中に一定期間勤務することを要しない期間がある場合は、
どのように取り扱うのか。


【回答】
雇用期間中であっても、
一定期間勤務することを要しない期間において事実上の使用関係が失われることが明確である場合は、
雇用期間は継続して1年以上見込まれないものとして取り扱うことになります。



【問23】
施行日時点や雇用契約締結時に、
70歳の誕生日までの期間が1年未満である場合であっても、
雇用期間が継続して1年以上見込まれる者は厚生年金保険の被保険者資格を取得するか。


【回答】
被保険者期間が継続して1年以上見込まれるか否かを判断するのではなく、
雇用期間が継続して1年以上見込まれるか否かを判定するため、

70歳の誕生日までの期間が1年未満である場合であっても、
厚生年金保険の被保険者資格を取得します。





具体的には、
平成28年5月13日 保保発0513第2号の2(3)にて通知されています。

@ 「最低賃金法で賃金に算入しないものに相当するもの」とは、次の(@)から(E)までに掲げるものとする。

(@) 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)

(A) 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)

(B) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)

(C) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金

(D) 深夜労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分

(E) 最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)

これはあくまで特定4分の3未満短時間労働者の被保険者資格の取得要件を判定する際の月額賃金であり、
標準報酬月額の基礎となる報酬月額は、
他の被保険者と同様の扱いとなります。



A 報酬が、
月給、週給等一定の期間で定められる場合は、
被保険者の資格を取得した日現在の報酬の額を
その期間の総日数で除して得た額の30 倍に相当する額を報酬月額とする。



B 報酬が、
日給、時間給、出来高給又は請負給の場合は、
被保険者の資格を取得した月前1月間に同一の事業所において、同様の業務に従事し、
かつ、
同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額を報酬月額とする。



C 上記A又はBの方法で報酬月額を算定することが困難である場合は、
被保険者の資格を取得した月前1月間に、その地方で、同様の業務に従事し、
かつ、
同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額を報酬月額とする。



D 上記AからCまでのうち、2つ以上に該当する報酬を受ける場合は、
それぞれについて上記AからCまでの方法によって算定した額の合算額を報酬月額とする。



E 上記B又はCの方法で報酬月額を算定する場合で、
同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が
当該事業所又は当該地方に存在しないときは、
就業規則、雇用契約書等に基づき、個別に報酬月額を算定することとする。



A〜Dは、
厚生年金保険法第22条の被保険者資格取得時の標準報酬月額の扱いと全く同じです。

すなわちBおよびCは、
実務上ないに等しい規定であると思いますので、
実際にはEにより算定することになるでしょう。



平成28年5月16日に公表された
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集
の【問29】も参考にしてください。


【問29】
被保険者資格を取得後に月額賃金が8万8千円未満となった場合は、
被保険者資格は喪失するのか。



【回答】
原則として、
資格取得後に雇用契約が見直され、
月額賃金が8万8千円を下回ることが明らかになった場合等を除き、
被保険者資格を喪失することはありません。

ただし、
雇用契約等に変更はなく、常態的に8万8千円を下回る状況が続く場合は、
実態を踏まえた上で資格喪失することとなります。





具体的には、
平成28年5月13日 保保発0513第2号の2(4)にて通知されています。

適用拡大省令第1条の規定による改正後の健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36 号)第23 条の6第1項及び適用拡大省令第2条の規定による改正後の厚生年金保険法施行規則(昭和29 年厚生省令第37 号)第9条の5第1項の規定により、

卒業を予定している者であって適用事業所に使用されることとなっているもの、
休学中の者及び定時制の課程等に在学する者その他これらに準ずる者は、
学生でないこととして取り扱うこととするが、
この場合の「その他これらに準ずる者」とは、
事業主との雇用関係を存続した上で、事業主の命により又は事業主の承認を受け、
大学院等に在学する者(いわゆる社会人大学院生等)とする。





特定適用事業所の事業主は、
被保険者および70歳以上の使用される者に係る短時間労働者であるかないかの区別に変更があったときは、
当該事実が発生した日から5日以内に、
「健康保険・厚生年金保険被保険者区分変更届/厚生年金保険70 歳以上被用者区分変更届」
を日本年金機構等に届け出る必要があります。


この届出は、
日本年金機構が以下の事項を把握する必要があるためでしょう。

・その適用事業所が通常の労働者及びこれに準ずる者の総数が
常時500人を超える状態にあるかどうか確認するため

・特定4分の3未満短時間労働者に係る算定基礎届時等の支払基礎日数が、
他の被保険者と異なり11日以上であるため



「資格取得・喪失日」へ。



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