事業主である企業には、自らが負担する保険料だけでなく、
従業員が負担する保険料を合わせた保険料の全額を
国に納付する義務が課せられています。


●健康保険法第161条

●厚生年金保険法第82条

【保険料の負担及び納付義務】
1 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、
  それぞれ保険料額の二分の一を負担する。

2 事業主は、
  その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。


●健康保険法の解釈と運用
(P1125、1126)

被保険者の資格取得届の遅延と保険料の徴収とは無関係であり、
届が遅延している被保険者であっても資格を取得し、確認により効力を発生した日からの分を
納付しなければならない。(昭和2年1月15日 保理第217号)


事業主は、
被保険者に支払う報酬から控除した被保険者の負担する保険料の額のいかんにかかわらず
保険料全額の納付義務を負うべきものである。(昭和2年2月14日保理第218号)


被保険者の負担する保険料を被保険者に支払う報酬から控除し得ないことがあっても、
納付義務は免れることはできない。(昭和2年保理第713号)


被保険者に対し支払うべき報酬のないため保険料を控除し得ぬ場合
又は支払っても控除し得ぬ場合であっても
被保険者の負担すべき保険料は、納付すべき義務を負う。
(昭和2年2月14日 保理第578号)(昭和4年1月18日事発第125号)


被保険者の資格を喪失した者に関する保険料であって
事業主において当該被保険者であった者に支払う報酬から控除し得ない場合であっても、
事業主はこれを組合に納付すべき義務がある。(昭和2年2月18日保理第696号)




以上のように、
従業員から保険料を控除できないどのような事情があったとしても、
企業は保険料全額を納付しなければなりません。

従業員が失踪してしまったり、長期の病欠をしてしまっている場合に
被保険者資格喪失の手続きをしなかった為に社会保険料が発生してしまい、
従業員から保険料を徴収することができなかったとしても、
国(日本年金機構や年金事務所も含め)がその従業員から直接保険料を徴収することは絶対ありません。



当月分の保険料は、
翌月末日までに納付する必要があります。


●健康保険法第164条

●厚生年金保険法第83条

【保険料の納付】

毎月の保険料は、 翌月末日までに、納付しなければならない。




ということは、
今月納付しなければならないのは、前月分の保険料
ということになります。

従業員負担分の保険料は、
給与支払い時に源泉控除(天引き)することができますが、
当月の給与から控除できるのは、原則として前月分のみです。

したがって、
前月の給与支払い時に誤って保険料の控除を行わなかったからといって、
当月の給与支払い時に2月分まとめて控除することは、
労働基準法第24条(賃金の全額払い)違法ということになります。

給与からの控除を失念した場合は、
従業員に給与を一旦支払い、
改めて保険料を徴収するしかありません。


●健康保険法第167条

●厚生年金保険法第84条

【保険料の源泉控除】

1 事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、
  被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を
  報酬から控除することができる。


2 事業主は、被保険者に対して通貨をもって賞与を支払う場合においては、
  被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を
  当該賞与から控除することができる。


3 事業主は、前二項の規定によって保険料を控除したときは、
  保険料の控除に関する計算書を作成し、
  その控除額を被保険者に通知しなければならない。


●健康保険法の解釈と運用
(P1175、1176)


控除できるのは、前月分の保険料に限られる。(昭和2年2月5日保発第112号)
前々月の保険料または将来の保険料の控除を行うことはできない。


前々月の保険料を事業主が納付した場合、
被保険者が負担すべき保険料については、被保険者は、事業主に対し、私法上の債務を負う。
その支払方法は話合できめることになる。(昭和29年9月29日 保文発第10844号)


前月分の報酬をその月に支払う制度の工場においては、
前月分の保険料を控除し得る報酬はその月に支払う報酬とする。
(大正15年12月4日 収保第313号)


その月分の報酬をその月末日に支払う制度の工場にあっては
その月分の保険料を控除し得るべき報酬は、その翌月末日に支払う報酬とする。
(大正15年12月4日 収保第313号)


毎月数回に報酬を支払う事業においては、
前月分の保険料を報酬から控除する場合は、その月において数回に分って控除するもあるいはまた一回に控除するも自由である。(大正15年12月4日 収保第313号)


事業主が被保険者に対し支払う報酬から保険料を控除する場合において、
その保険料の控除を他の控除金に先立って行うか否かは事業主の任意である。
(昭和2年2月14日保理第578号)


事業主が控除しないで被保険者負担の保険料を立替納入した場合でも、
当該負担分はあくまで被保険者の負担すべきもので、
事業主は、その部分について私法上の求償権を有する。(昭和25年6月21日保文発第1418号)



「保険料の算定(負担)期間」へ。



トップページへ戻る。