社会保険料は、
補償内容に応じて保険料が増減する民間の保険とは異なり、
被保険者の収入の多寡すなわち負担能力に応じて
保険料を支払う方式を取っています。

社会保険料額は、
「標準報酬月額」に健康保険料率および厚生年金保険料率
を掛けることにより算出されます。

標準報酬月額は被保険者の収入の指標であり、
一定のルールにより「報酬月額」を算出し、
その報酬月額を等級区分にあてはめ決定されます。

現在この等級区分は、
健康保険法では、1等級の58,000円〜50等級の1,390,000円、
厚生年金保険法では、1等級の88,000円〜31等級の620,000円
となっており、
保険制度によって保険料額の上限および下限が異なります。



何故、
報酬月額そのものではなくわざわざ標準報酬月額
に換算して保険料を算定するのでしょうか?

理由の一つとして、
保険制度ができた大正・昭和の時代は、
現代のように計算機が発達していなかったため、
各個人の報酬月額による個別の保険料を徴収することは事務処理上、
ほとんど不可能であったということがあります。

事務処理を簡便化するために、
報酬月額を等級区分により大まかに区切り、
標準報酬月額に対して保険料を徴収する方式としたのです。

現代のIT技術があれば、
報酬月額による保険料徴収は可能でしょう。



理由の二つめは、
報酬月額に上限と下限を設ける必要があったからでしょう。

年金は、
働けなくなったときの生活の安定を目的として支給するものです。

厚生年金保険は、
標準報酬月額に応じて将来受給する年金額が増減します。

「生活費であれば、それほど高額の年金は必要ないだろう。」
という考えから、
厚生年金保険は最高でも31等級の620,000円まで
となっているのだと推測されます。

厚生年金保険の1等級(88,000円)の保険料は、
労使合計で16,000円(平成28年10月〜平成29年8月)です。

国民年金の月額保険料は、
平成28年度で16,260円です。

厚生年金保険料が国民年金保険料を下回ってしまっていますが
これは問題です。

なぜなら、
厚生年金保険の1等級の場合、
保険料負担が国民年金より少ないのもかかわらず、
年金額は厚生年金分だけ多く受給できてしまうことになるからです。

負担と給付が比例しないのは大問題ですので、
厚生年金の保険料の下限は、
国民年金保険料とバランスを取るために設定されるべきでしょう。



健康保険では厚生年金のようなしがらみが少ない分、
等級が幅広く設定されています。

また、
上限額は、
最高等級に該当する被保険者が被保険者全体の1.5%を超えると、
追加できる規定となっており、

平成28年度にも1等級追加され、
現在の最高等級は、
50等級(1,390,000円)となっています。



社会保険料が標準報酬月額および標準書賞与額に
保険料率を掛けて算定するのに対し、
労働保険(労災保険および雇用保険)では、
賃金を支払う都度、
保険料率を掛けて保険料を徴収します。

社会保険料も労働保険料と同じ仕組みで徴収すれば
わかりやすく効率的ではないかという議論もあるようですが、
上記の厚生年金保険と国民年金の保険料の関係を考慮すれば、
保険料の下限額を設定せざるを得ないでしょう。








報酬月額は、
標準報酬月額の根拠であり、
保険料算定上重要な数値です。

報酬月額は、
一度算定されたら、
一生変わらないというものではありません。

何故なら、
収入はいろいろな要因により増減することがあるからです。

標準報酬月額を算定する方法は、
以下の6通りがあります。


 

どんなとき

手続き

資格取得時

正社員を新たに雇用したり
パートが常用的使用関係に変更になったとき

被保険者資格取得届

定時決定

毎年7月1日に現状の報酬月額を確認する

被保険者報酬月額算定基礎届

随時改定

報酬月額が大きく変動し、それが継続するとき

被保険者報酬月額変更届

育児休業等終了時

労働時間の変更などにより報酬月額が変動したとき

育児休業等終了時報酬月額変更届

産前産後休業終了時

労働時間の変更などにより報酬月額が変動したとき

産前産後休業終了時報酬月額変更届

保険者算定

報酬月額の算定が困難であるとき
または著しく不当であるとき

行政(≒日本年金機構)が職権により算定するので、手続き不要




正社員を新たに雇用した場合や
パートタイマーの契約内容が変更となり 常用的使用関係になった場合等、
新たに社会保険の被保険者の資格を取得する際に
報酬月額を算出する必要があります。

報酬月額は、
建前としては実際に支給された報酬を基に
将来に受けるであろう報酬額を推測して
決定するような仕組みになっています。

ただし、
資格取得時のみ報酬の支給実績がないため、
雇用契約等により支給されるであろう報酬額を予想することにより
決定するようになっています。

この章では、
算定方法の主なものとして、
資格取得時決定、定時決定、随時改定および保険者算定
について詳細に解説していきます。



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