資格取得または喪失の原則


休業・休職期間中の被保険者資格


解雇係争中の被保険者資格


同日得喪








被保険者資格を取得するのは、
原則として以下の4つの場合があります。

1.適用事業所と常用的使用関係になったとき。

2.勤務する事業所が新たに適用事業所となったとき。

3.勤務する事業所が特定適用事業所となったとき(特定4分の3未満短時間労働者の場合)。

4.適用除外に該当しなくなったとき。


また、
被保険者資格を喪失するのは、
原則として以下6つの場合があります。

1.死亡したとき。

2.上限年齢に達したとき(健康保険:75歳、厚生年金保険:70歳)。

3.適用事業所と常用的使用関係でなくなったとき(長期休職等)。

4.勤務する事業所が適用事業所でなくなったとき(任意適用事業所の場合)。

5.勤務する事業所が特定適用事業所でなくなったとき(特定4分の3未満短時間労働者の場合)。

6.適用除外に該当したとき。



被保険者資格をいつ取得・喪失するかというと、
取得条件に該当したその日に資格を取得し、
喪失条件に該当した日の翌日に資格を喪失します。

ただし、
喪失の事実があった日にさらに取得条件に該当する場合は、
翌日ではなくその日に喪失します。

たとえば、
退職したその日に別の事業所に雇用された場合や
転勤のために別のその事業所から転出した場合は当日に喪失します。


上限年齢に達したときは、
健康保険では、75歳の誕生日当日に資格を喪失しますが、
厚生年金保険では、70歳の誕生日の前日に資格を喪失します。


さて、ここで問題です。
なぜ、当日と前日と異なる扱いになるのでしょうか?



前提条件として、
「年齢計算に関する法律」により、
人は誕生日の前日の午後12時に年齢が加算されることになっています。

同学年で一番誕生日が遅いのが、4月1日生まれの子供になるのは、
4月1日生まれは、3月31日に年齢が加算されるからなんです。


厚生年金保険法第9条に
「適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする。」
とされています。

すなわち、
70歳に達した者は厚生年金保険の被保険者ではなくなるため、
70歳に達した日=70歳の誕生日の前日に
被保険者資格を喪失することになります。


健康保険では、第36v条において、
「資格喪失事由に該当するに至った日の翌日に被保険者の資格を喪失する。」
とされており、
第3条の適用除外に該当する者は資格を喪失することになっています。

第3条第1項第7号に
「後期高齢者医療の被保険者」が適用除外とされていることから、
後期高齢者医療の被保険者となった日の翌日に資格を喪失することになります。

「高齢者の医療の確保に関する法律」の第52条に
「75歳に達したときに後期高齢者医療の被保険者の資格を取得する」
とされています。

したがって、
後期高齢者医療の被保険者となった日の翌日
=75歳に達した日の翌日
=75歳の誕生日の前日の翌日
=75歳の誕生日当日
になるわけです。


法律ってややこしいですね・・・。



被保険者資格取得届は、
雇用開始日等の事実発生日から5日以内に提出することになっていますが、
何らかの理由で届け出が大きく遅れてしまう場合があります。

その場合は、
以下の通知のとおり、
2年を限度として遡及適用することができます。


●標準報酬の随時改定、被保険者資格取得時期の決定及び未適用事業所の適用時期の決定について
(昭和31年6月20日 保険発第102号)

2 資格取得時期の決定

法人の理事、監事、取締役等であって
その法人の業務の一部を担当し法人から労務の対償として報酬を受けている者が
当該法人に使用されるものとして健康保険の被保険者であることは貴見のとおりである。

また、
このような被保険者となるべき者であって
被保険者資格取得届が未提出のため適用洩れとなつている者については
適用洩れの事実の判明次第速やかに法第二十一条ノ二第四項の規定に基き
職権によつて被保険者の資格を取得せしめるべきであるが
被保険者の資格の取得は法第二十一条ノ二第一項の規定により
保険者の確認によりその効力を生ずることとなつている。

この保険者の確認は事実上当然に生じている資格関係を法律上顕在化するものであつて、
客観的な事実に基いて行われるものである。

したがつて
適用洩れとなつていた者の資格取得年月日は
保険者がその被保険者となるべき者に関し使用関係を客観的に確認した年月日
とすべきものと考えられる。

しかし貴見のごとく、
資格取得年月日を二年以上遡及することは、
法第四条の規定に照し、実体的に何の意味も有しないこととなるので、
遡及の限度を二年とすることについては差支えないが一面、

その遡及した二年間における保険給付の請求権の行使が当該被保険者にとつて可能であるかどうか、
保険者がその受給権に関し、保険事故及び法定受給要件を確認し得るかどうか
をも併せて考慮する必要があると考えるので、
資格取得日の遡及に当つては二年を限度として
使用関係及び受給関係に関する事実の確認し得る範囲において決定すべきものと考える。




それでは、
雇用契約開始日がたまたま事業所の公休日である場合、
資格取得日はいつになるのでしょうか?

以下の疑義照会回答があります。


●雇い入れ日が公休日である場合の被保険者資格取得日の取扱いについて
(平成24年9月11日 疑義照会(回答)No.2012-43)


【疑義内容】

給与支払体系:日給
雇用契約開始日:平成24年4月1日(日曜日)
勤務開始日:平成24年4月2日(月曜日)
当該事業所の公休日:土曜日・日曜日

この場合の資格取得日はいつか?


【日本年金機構本部回答】

ご照会の事例においては、
資格取得日は、平成24年4月1日となります。

健康保険法・厚生年金保険法では、
適用事業所に使用される日が資格取得日となりますが、
この使用される日とは、
事実上の使用関係が発生した日として取扱い、
資格取得日を決定しているところです。

通常、
雇用契約開始日は、勤務開始日と一致し、
その日に事実上の使用関係が発生すると考えられますが、
一致しない場合においては、
報酬の支給開始を参考に事実上の使用関係が発生した日を決定します。

月給制の場合、
月の勤務日数に関わらず、報酬は一定の金額となるところ、
勤務開始前の期間の報酬が控除されるのであれば、
労務の提供が開始され報酬支払の対象期間の初日が、
事実上の使用関係の発生日とするのが妥当となります。

しかしながら、 日給制においては、
公休日は、労務の提供がなく報酬の支払いがないのは当然であり、
公休日でなければ雇用契約開始日が勤務開始日と一致すると想定されることから、
事実上の使用関係の発生日は、雇用契約開始日となります。








一時帰休など会社側の都合により一時的に休業したり、
休職(私傷病等の従業員側の理由により一定期間就業が困難な場合に使用者が就労義務を免除すること)
したりする場合に被保険者資格はどうなるのでしょうか?

休業および休職中の被保険者資格について、
以下の通知があります。


●休業期間中に於ける健康保険及び厚生年金保険の取扱について
(昭和25年4月14日保発第20号)


1.被保険者資格は、
工場の休業にかかわらず事業主が休業手当を支給する期間中は、
被保険者資格を継続させること。

2.休業中の標準報酬は、
平常の給与を支給されるものは、その給与に基き、
休業手当のみ支給されるものについては、その者の休業手当の額に基いて、
これを定めること。

3.雇用契約は存続するけれども、事実上の使用関係がなく、
かつ、休業手当も支給されないものについては、
従前のとおり被保険者資格を喪失させること。


●一時帰休等の措置がとられた場合における健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格及び標準報酬の取扱いについて
(昭和50年3月29日保険発第25号)


1.一時帰休の場合
一時帰休中の者の被保険者資格については、
昭和25年4月14日保発第20号通知に示されたところにより、
労働基準法第26条の規定に基づく休業手当又は労働協約等に基づく報酬(以下「休業手当等」という。)
が支払われるときは、被保険者の資格は存続するものとすること。

2.自宅待機の場合
新たに使用されることとなった者が、
当初から自宅待機とされた場合の被保険者資格については、
雇用契約が成立しており、かつ、休業手当等が支払われるときは、
その休業手当等の支払の対象となつた日の初日に被保険者の資格を取得するものとすること。


●製糸工場等に使用される者の被保険者の資格に関する件
(昭和3年11月17日保発第751号)


製糸業において、冬季は相当長期間作業を休止するが、
翌年における職工の募集の便宜上雇用契約を相当期間継続する場合においては、
法律上も事実上も使用関係はないものとして作業休止の日の翌日に被保険者資格を喪失するものとする。


●休職と被保険者資格について
(昭和26年3月9日 保文発第619号)

1.健康保険の被保険者が、
労働協約又は就業規則等により雇用関係は存続するが
会社より賃金の支給を停止されたような場合には、
個々の具体的事情を勘案検討の上、実質は使用関係の消滅とみるのを相当とする場合

例えば被保険者の長期にわたる休職状態が続き実務に服する見込がない場合
または公務に就任しこれに専従する場合等においては
被保険者資格を喪失せしめるのが妥当と認められる。


2.右の趣旨に基き
被保険者の資格を喪失することを要しないものと認められる病気休職等の場合は、
賃金の支払停止は一時的のものであり使用関係は存続するものとみられるものであるから、
事業主および被保険者はそれぞれ賃金支給停止前の標準報酬に基く保険料を折半負担し
事業主はその納付義務を負うものとして取扱うことが妥当と認められる。




昭和26年3月9日保文発第619号の1.と2.の違いがあいまいであり、
休職等により一時的に実態としての使用関係がなくなる場合は
個々の事例ごとに事情を斟酌し判断することになりますが、
傾向として長期に渡る休職等により使用関係が消滅したといえる場合は被保険者資格を喪失し、
比較的短期な場合は一時的なものとして被保険者資格を継続するものと考えられます。



休業中の被保険者資格については、
以下の疑義照会があります。


●臨時職員の夏休み期間中の社会保険の適用について
(平成22年12月3日 疑義照会(回答)No.2010-1135)


【疑義内容】

労働契約期間が4月1日から9月30日までの市の臨時職員。
夏休み期間中(7月21日から8月29日まで)は出勤義務がなく賃金の支払義務もない。

ただし、
夏休み期間中に健康診断・研修等で臨時に出勤を命じる場合は
勤務日数分の賃金日額を支払うものとする。

この場合、
夏休み期間中、被保険者資格は継続するのか?


【日本年金機構本部回答】

夏休み期間については実質的に使用関係がないものと考えられるため、
原則として、資格喪失することが妥当であると思料する。

ただし、本案件については、
「夏休み期間は、教育長が指定する日を除き勤務を要しない。」とされていることから、
その勤務実態によっては資格喪失することにそぐわないケースも考えられるので、
よく実態を把握したうえで判断されたい。




短期契約の労働者の場合は、
1ヶ月程度の休業期間でも被保険者資格を喪失する場合があるようです。

ただし、
登録型派遣労働者の場合は以下の通知で明確に判断がなされており、
1ヶ月以内であれば被保険者資格は喪失しません。


●「派遣労働者に対する社会保険適用の取扱いについて」の一部改正について
(平成27年9月30日 保保発0930第9号 年管管発0930第11号)


登録型派遣労働者に対する健康保険及び厚生年金保険の取扱いについて

労働者派遣事業の事業所に雇用される派遣労働者のうち
常時雇用される労働者以外の者(以下登録型派遣労働者」という。)の適用については、
派遣就業に係る一の雇用契約の終了後、

最大1月以内に、
同一の派遣元事業主のもとでの派遣就業に係る次回の雇用契約(1月以上のものに限る。)
が確実に見込まれるときは、
使用関係が継続しているものとして取り扱い、
被保険者資格は喪失させないこととして差し支えないこと。

1月以内に次回の雇用契約が締結されなかった場合には、
その雇用契約が締結されないことが確実となった日
または当該1月を経過した日のいずれか早い日をもって使用関係が終了したものとし、
その使用関係終了日から5日以内に事業主は資格喪失届を提出する義務が生じるものであって、
派遣就業に係る雇用契約の終了時に遡って被保険者資格を喪失させるものではないこと。


●資格の継続について
(平成22年5月7日 疑義照会(回答)No.2010-499)


【疑義内容】

翌月1日から新たに雇用契約を結ぶことになっている者の
契約満了による30日退職(31日資格喪失)の場合
被保険者資格は継続するのか?


【日本年金機構本部回答】

1日だけ雇用契約が空いたとしても、
引き続き被保険者とすることが妥当であろうから、
実態等を確認したうえで判断されたい。




名目上の雇用契約期間が数日間だけ空いた程度であれば、
実態として使用関係が消滅したとはいえず、
被保険者資格を継続すべきでしょう。



事業所の新規適用時に
たまたま休職中である場合の被保険者資格については、
以下の疑義照会があります。


●新規適用時の資格取得について
(平成22年5月7日 疑義照会(回答)No.2010-569)


【疑義内容】

新規適用時に休職している者
(育休、産休、病気療養中等で新規適用後も実体的使用関係が存続していることが確認できた場合)は、
資格取得させるべきか(今回の事例では育児休業を取得)?


【日本年金機構本部回答】

昭和50年3月29日保険発第25号においては、
「雇用契約が成立しており、かつ、休業手当が支払われるときは、
その休業手当等の支払の対象となった日の初日に被保険者の資格を取得する者とすること」
としており、

当該通知の趣旨は、
休業手当の支払と言う事実をもって、
事業主と被保険者との間の使用関係が認められると言うことである。

育児介護休業法第5条第1項で
「労働者は、その養育する一歳に満たない子について、
その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。」
と規定していることから、

育児休業の取得という事実をもって、
事業主と被保険者との間の使用関係が認められると解される。

したがって、本件については、
上記昭和50年通知の趣旨に照らし、
雇用関係が成立した時点で、使用関係が成立しており、
適用事業所となった時点で被保険者資格を取得すると解する。

なお、
標準報酬については、
育児休業明けに支払われる報酬を基準とすることが妥当であろう。


●新規適用時に病気休暇中の者の資格取得について
(平成22年8月23日 疑義照会(回答)No.2010-749)


【疑義内容】

新規適用時の資格取得について(給与の支払いの有無)

新規適用届を提出する際に、病気休暇中の従業員がいる場合、
疑義照会2010-569 の回答により、
給与の支払いがなければ、新規適用時での資格取得にはならず、
復職後に資格取得になるのか?

また、
一部でも給与の支払いがあった場合は資格取得となるのか?


【日本年金機構本部回答】

事業所の新規適用時に休職している職員に対する考え方については、
その休職の原因が病気休暇中によるものであっても、
疑義照会【2010-569】での回答と同様に判断することとなる。

したがって、ご照会の事例については、
単に名目的な雇用契約だけに着目するのではなく事実上の使用関係により、
厚生年金保険法上の被保険者に該当するか否かを判断することが必要である。

また、
その場合における標準報酬については、
「病気休暇」明けの報酬を基準として取扱うこととなる。


●外国人技能実習生の社会保険適用について
(平成22年12月3日 疑義照会(回答)No.2010-1160)


【疑義内容】

外国人技能実習生として雇用契約を締結したが、
契約開始日前日にケガ(階段より転落し骨折)をし、
労務不能であり報酬が出ない場合


【日本年金機構本部回答】

雇用契約に基づく技能等修得活動期間に入る前日に
ケガにより労務不能となり報酬の支払がなされていない状態であるが、
昭和25年4月14日保発第20号等によると、
雇用契約を存続するけれども事実上の使用関係がなく、
かつ、休業手当も支給されないものについては、
被保険者資格を喪失せしめること、とされている。

したがって、
ご照会のケースにおいても事実上の使用関係が存在するか否かを判断する必要がある。

その判断は
報酬の支払状況・稼動の状況・人事管理の関係・今後の就業の見込み等に基づいて
総合的に行う必要があることから、一概には判断することはできないが、
一般的には、
報酬の支払がない状態であれば、
労務不能の状態が解消し、労務の提供が行われ、
事実上の使用関係が発生した時点から社会保険の適用をすべきであると思料する。

ただし、
就業の見込み等を勘案の上、
慎重に判断されたい。




上記3つの疑義照会回答を解釈するならば、

資格取得時に休職している場合、
最終的な判断としては客観的に事実上の使用関係が確認できれば
被保険者資格取得となりますが、

一般的には、
報酬の支払いがない状態であれば、
労務不能の状態が解消し、労務の提供が行われ、事実上の使用関係が発生した時点から
被保険者資格を取得すべきと行政は考えているようです。

ただし、
育児休業、介護休業、産前産後休業等法律に定められた
労働者の権利を行使して休職する場合は、
報酬支払いの有無に関係なく、
被保険者資格を取得するものと考えられます。



それでは、
すでに被保険者である従業員が休職した場合、
その資格はどう扱われるのでしょうか?


●休職中の被保険者資格について
(平成22年5月7日 疑義照会(回答)No.2010-377)


●休職中の被保険者資格について
(平成23年3月25日 疑義照会(回答)No.2011-138)


【疑義内容】

現在、 医療法人に勤務している者が
看護学校に通うため休職となり(3年間の予定)無報酬となるが
事業所に籍を置いたままで卒業後は復職する場合、
被保険者資格は継続させるか?


【日本年金機構回答】

事業所を休職したうえで看護学校に通いその間は無報酬となる者との間に
事実上の使用関係が認められるか否かが問題となるが、
看護学校へ通う間については通常の労務の提供は行われず、
かつ相当期間休職が続くことが予想され、またその間の給与の支給が行なわれないことから
賃金の支払停止は一時的なものとは判断できず、
事実上の使用関係があると認めることは困難である。

従って、
この事例に関しては資格喪失させる取扱いとなる。




3年間休職することが客観的に明らかな場合は、
事実上の使用関係が消滅しており
被保険者資格を喪失する扱いとなるようです。



休業および休職時の被保険者資格をまとめるならば、
以下の表のとおりと考えられると思います。



新規適用時に休業させている場合

雇用契約が成立しており、かつ、休業手当等が支払われるときは、
その休業手当等の支払いの対象となつた日の初日に
被保険者の資格を取得する。

被保険者を休業させる場合

休業手当または労働協約等に基づく報酬が支払われるときは、
被保険者の資格は存続する。

新規適用時に休職している場合

一般的には、報酬の支払いがない状態であれば、
労務不能の状態が解消し、労務の提供が行われ、事実上の使用関係が発生した時点から被保険者資格を取得すべき。

ただし、
育児休業、介護休業、産前産後休業等により休職する場合は、
報酬支払いの有無に関係なく、被保険者資格を取得する。

被保険者が休職する場合

長期に渡る休職等により使用関係が消滅したといえる場合は被保険者資格を喪失し、比較的短期な場合は一時的なものとして被保険者資格を継続する。

ただし、
育児休業、介護休業、産前産後休業等により休職する場合は、
報酬支払いの有無に関係なく、被保険者資格を継続する。









会社が従業員を解雇したところ、
従業員が解雇は不当であるとして訴訟になる場合がありますが、
判決が確定するまでの間、
社会保険の被保険者資格はどうなるのでしょうか?

以下の通知、疑義照会が参考になります。


●解雇の効力につき係争中の場合における健康保険等の取扱について
(昭和25年10月9日保発第68号)


1.解雇行為が労働法規又は労働協約に違反することが明かな場合を除いて、
事業主より被保険者資格喪失届の提出があつたときは、
当該事件につき労働委員会に対して、
不当労働行為に関する申立、斡旋、調停、もしくは仲裁の手続がなされ、
または裁判所に対する訴の提起もしくは仮処分の申請中であっても、
一応資格を喪失したものとしてこれを受理する。


2.右の場合において
労働委員会又は裁判所が解雇無効の判定をなし、
かつ、その効力が発生したときは、
当該判定に従い遡及して資格喪失の処理を取り消す。


3.右の場合において
解雇無効の効力が発生するまでの間、
資格喪失の取扱のため自費で診療を受けていた者に対しては、
療養の給付をなすことが困難であつたものとして、
その診療に要した費用は療養費として支給し、
その他現金給付についても遡つて支給すると共に保険料もこれを徴収する。


4.第一項の申立又は仮処分の申請に対する暫定的決定が本裁判において無効となり、
解雇が遡つて成立した場合には、
すでになされた保険給付は被保険者から返還されることとし、
又徴収済保険料は事業主からの還付請求に基いて還付手続をなす。


5.厚生年金保険における取扱についても、
右に準じて適切な措置を取る。


●被保険者資格喪失の時期について
(平成22年11月19日 疑義照会(回答)No.2010-617)

●不当解雇の仮処分判決後の資格喪失の取扱いについて
(平成22年11月19日 疑義照会(回答)No.2010-826)


解雇係争が本訴で争われているものの、
一方で、仮処分の申請に基づき、
裁判所が仮処分の決定をしている場合については、
その決定に従い被保険者資格喪失の取り消しを行うこととなる。

(注:仮処分の決定内容が、雇用関係を継続させ、給与として金銭の支払いを命じ、
厚生年金保険の被保険者たる要件を満たすのであれば仮処分にしたがって資格喪失を取り消すが、
そうでない内容、例えば、
雇用関係の存続を認める代わりに給与的な性質でない金銭の支払を命じている又は、
雇用関係の存続を認めるが金銭の支払いは命じていないような内容であれば
資格喪失は取り消さないこととなる。)

ただし、
この仮処分の決定が、本訴において無効となり
解雇行為が遡及して成立した場合については、
再度、資格喪失の処理等を行うこととなる。


●解雇無効の訴訟中の者の被保険者資格について
(平成22年11月19日 疑義照会(回答)No.2010-881)


一審は被保険者側の勝訴、二審の判決は近日中に出る予定。

現在、二審の判決待ちの状態であることから、
解雇無効の効力が発生していないと考えられ、事業主からの資格喪失届を処理しているので、
判決がされ上訴されずに確定されるまで、この資格喪失を取り消せないと考える。

したがって、
二審が判決した後に疑義照会(回答)2010-105 を参考とされ、
昭和25 年10 月9 目付け保発第68 号通知により取り扱うこととなると考えるが、
当該通知中2.においては、

@「労働委員会又は裁判所が解雇無効の判定をなす」こと、
A「その効力が発生」することの2つの要件を満たしたときに、
資格喪失の処理を取り消すこととなる。(上訴等がされないかどうかの確認も必要。)

また、
昭和25年6月29日保文発1482号において、
「解雇行為無効の調停若は仲裁又は仮処分が決定された場合は、
保険者は、被保険者としての資格の喪失がなかったものとしてその喪失処理を取消し」
する旨記載がされているが、

今回の場合は、仮処分の決定等がされたものでなく、
裁判で判決がされると思料されるので、
昭和25 年10 月9 目付け保発第68 号通知の取扱いとすることが妥当である。


解雇係争中の被保険者資格をまとめるなら、
下表のとおりとなります。


事業主が資格喪失届を提出した場合

資格を喪失したものとして扱う。

解雇無効の調停、仲裁または仮処分が決定された場合

決定内容が、雇用関係を継続させ、給与として金銭の支払いを命じている場合は、資格喪失の処理を取り消す。

労働委員会または裁判所が解雇無効の判定をなし、その効力が発生した場合

上訴されずに確定すれば、資格喪失の処理を取り消す。









取得・喪失の例外的扱いとして、「同日得喪」というものがあります。

同日得喪は、
定年退職後継続雇用される場合等、
同一の事業所に勤務しているのにもかかわらず60歳以降に報酬額が大きく減少したときに、
受け取る報酬額と社会保険料負担のアンバランスを速やかに解消するために、
随時改定を待つのではなく、いったん資格喪失したものとして扱い
その日に新しい報酬月額で資格取得することをいいます。


●「嘱託として再雇用された者の被保険者資格の取扱いについて(通知)」の一部改正について(通知)
(平成25年1月25日 保保発125001号)


健康保険法及び厚生年金保険法においては、
一定の事業所に使用される者が事業主との聞に事実上の使用関係が消滅したと認められる場合に
その被保険者の資格を喪失するものと解されている。

したがって、
同一の事業所においては
雇用契約上一旦退職した者が一日の空白もなく引き続き再雇用された場合は、
退職金の支払いの有無又は身分関係若しくは職務内容の変更の有無にかかわらず、
その者の事実上の使用関係は中断することなく存続しているものであるから、
被保険者の資格も継続するものである。

ただし、
60歳以上の者で、退職後継続して再雇用されるものについては、
使用関係が一旦中断したものと見なし、
事業主から被保険者資格喪失届及び被保険者資格取得屈を
提出させる取扱いとして差し支えないこと。

なお、この場合においては、
被保険者資格取得届にその者が退職をした後、
新たな雇用契約を結んだことを明らかにできる書類(事業主の証明書等)を添付させること。



過去には異なった条件での扱いでしたが、
数次の変更により現行の扱いとなっています。
比較するなら以下のとおり。


 

変更前

変更後(現行)

変更時期

退職の原因

定年の定めによる退職後継続して再雇用される場合に限定

定年によらない退職でもよい

平成22年9月1日

再雇用回数

定年退職し再雇用された場合であり、その後に再度退職し再雇用される場合は含まない

退職再雇用の回数に制限はない

平成22年9月1日

対象者

特別支給の老鈴厚生年金の受給権者である被保険者

60歳以上の者

平成25年4月1日





その他、
以下の疑義照会も参考にしてください。


●「定年・再雇用」に対する取扱いについて
(平成23年4月8日 疑義照会(回答)No.2011-179)


同日得喪日が60歳到達日前(同日得喪日の属する月に60歳に達する)の場合
この取扱いができる条件は、 通知上、
「同日得喪日において特別支給の老齢厚生年金の受給権者である被保険者
(現行、60歳以上の者)に限って対象とする」
と示しており、
これを超えて、通知の改正なく
「同日得喪日の属する月に特別支給の老齢厚生年金を受給する権利を有した者まで対象とする」
という解釈にはならない。

したがって、
この被保険者については通知による取り扱いの対象者にはならない。


●嘱託として再雇用された者の取扱いについて
(平成23年4月14日 疑義照会(回答)No.2011-181)


同日得喪日に60歳となる場合
3月31日退職、4月1日再雇用、4月2日生(4月1日に60歳到達)の場合

退職日においては特別支給の老齢厚生年金の受給権者
(現行、60歳以上の者)ではないものの、
翌日の再雇用日において受給権者となり、同時に資格取得するものであるので、
当該取扱いの対象者となる。


●定年再雇用時における取得時報酬及び定時決定の取扱いについて
(平成23年10月12日 疑義照会(回答)No.2010-153)


●定年再雇用における取り扱いについて
(平成22年10月13日 疑義照会(回答)No.2010-623)


同日得喪日後に報酬月額が変更となる場合
・給与の支払は20日締めで当月末払い
・4月21日〜5月20日(5月末支払)分が1ヶ月分として、従前の給与で支払われる
・5月21日〜6月20日(6月末支払)分からは、変更後の下がった給与で支払われる
・再雇用日は5月1日

この取扱いについては、便宜的なものとはいえ、
被保険者の資格喪失及び資格取得を伴うものであることから、
厚生年金保険法第22条の規定により、
再雇用された日現在の報酬の額に基づき決定することとなる。

したがって、
喪失・再取得による取り扱いによらず資格を継続し、
6月以降の支払で月額変更該当となれば月額変更届を提出することとなる。


●役員の定年再雇用の取り扱いの可否について
(平成22年8月23日 疑義照会(回答)No.2010-633)

●特別支給の老齢厚生年金受給権者である役員にかかる同日得喪の扱いについて
(平成22年10月27日 疑義照会(回答)No.2010-798)


法人の役員が社員として再雇用された場合
役員を辞任したことにより一般の社員となっており、
一般社員の定年以降であれば定年後の再雇用と考えられること
(現行の取扱いでは、定年である必要はない)から、
喪失届、取得届を提出させる(同日得喪の扱いとなる)。


●退職再雇用にかかる、法人事業所の役員の取り扱いについて
(平成23年8月29日 疑義照会(回答)No.2010-1114)

法人の代表取締役を退任し監査役として就任した場合
役員についても退職(退任)した後に継続して再雇用(就任)された事実が、
確認できれば同日得喪の対象となる。

また
『株主総会の議事録や就業規則等により、
退職(退任)した後に継続して再雇用された事実が確認できるのであれば、
使用関係が一旦中断したものとみなし、
事業主から被保険者資格喪失届及び被保険者資格取得届を提出させる扱いとして差し支えない。
(厚生労働省年金局事業管理課回答)』とのこと。

したがって、
今回の事例については、
代表取締役退任及び監査役就任の事実が議事録により確認できるのであれば、
被保険者資格喪失届及び被保険者資格取得届を提出させる取り扱いが可能となる。


●使用人兼務役員の定年再雇用の取扱いについて
(平成22年10月25日 疑義照会(回答)No.2010-830)


【疑義内容】

使用人兼務役員である被保険者が事業所の定年年齢に達し、
使用人として定年退職し継続して再雇用される場合であって、
役員としての身分に変更がない場合、
同日得喪の取扱いをすることができるか?


【日本年金機構回答】

定年再雇用の取扱いについては、
退職後継続して再雇用される場合に
「使用関係が一旦中断したもの」とみなし行うものである。

二重の身分により使用されているものに関しては、
一方の使用関係が存続している限り退職後継続して再雇用されたとみなすことはできないため、
同日得喪の取扱いはできない。




同日得喪についてまとめるなら、
下表のとおりとなります。


同日得喪日が60歳到達日前の場合

同日得喪の対象とならない。

同日得喪日に60歳となる場合

同日得喪の対象となる。

同日得喪日後に報酬月額が変更となる場合

同日得喪の対象とならない。

法人の役員が社員として再雇用された場合

同日得喪の対象となる。

法人の代表取締役を退任し監査役として就任した場合

同日得喪の対象となる。

使用人兼務役員が使用人として退職再雇用されるが、役員としての身分には変更がない場合

同日得喪の対象とならない。






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