短時間労働者いわゆるパートタイマーやアルバイトが
社会保険の被保険者になるためには、
一定の条件を満たす必要があります。

短時間労働者とは、
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下、パートタイム労働法という。)第2条によれば、
『「短時間労働者」とは、
一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間
に比し短い労働者をいう。』
と定義されています。

ただし、
短時間労働者には、正規型の労働者を含みません。

正規型の労働者とは、
長期雇用を前提とした待遇を受けており、定期的な昇給又は昇格が予定され、
賞与、退職金等が支給されるいわゆる正社員を指します。
このうち他のフルタイムの正規型の労働者と比較し、その所定労働時間が短い正規型の労働者は、
「短時間正社員」と定義されます。



【短時間正社員のイメージ】

  短時間正社員 短時間正社員とはならない
短時間労働者(パート)
労働契約の期間 無期契約 有期契約
給与 フルタイム正社員の月給を時間比例で支給 あるいはフルタイム正社員の時間当たりの基本給と同等の水準の時間給を支給 フルタイム正社員の時間当たりの基本給とは異なる水準の時間給
労働時間 短時間勤務・短日勤務のいずれも可
年次有給休暇 労働基準法の規定による比例付与


短時間正社員は、以下の通知により、
一定の条件を満たせば、社会保険の被保険者となります。


●短時間正社員に係る健康保険の適用について
(平成21年6月30日 保保発第0630001号)


1 短時間正社員について

(1) 本通知でいう短時間正社員は、
  「他のフルタイムの正規型の労働者と比較し、その所定労働時間が短い正規型の労働者であって、
  @期間の定めのない労働契約を締結しているものであり、
  かつ、
  A時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が
  同一事業所に雇用される同種フルタイムの正規型の労働者と同等であるもの」であること。

(2) 当該短時間正社員に係る、労働契約、就業規則及び給与規程等において、上記(1)の内容を踏まえた規定が明確に  なされていること。

2 短時間正社員に係る健康保険の適用について

(1) 短時間正社員に係る健康保険の適用に当たっては、
  当該事業所の就業規則等における短時間正社員の位置づけを踏まえつつ、
  労働契約の期間や給与等の基準等の就労形態、職務内容等を基に判断するものであること。


(2) 具体的には、

@ 労働契約、就業規則及び給与規程等に、短時間正社員に係る規定がある

A 期間の定めのない労働契約が締結されている

B 給与規程等における、時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が
  同一事業所に雇用される同種フルタイムの正規型の労働者と同等である場合であって、
  かつ、
  就労実態も当該諸規程に則したものとなっている場合は、
  健康保険の被保険者として取り扱うこと。




平成28年10月前まで、
短時間労働者の被保険者資格判断は、

昭和55年6月6日付け厚生省保険局保険課長・社会保険庁医療保険部健康保険課長・社会保険庁年金保険部厚生年金保険課長内かん
(以下「昭和55年内かん」という。)

により取り扱われて来ました。


●昭和55年内かん

『健康保険及び厚生年金保険が適用されるべきか否かは、
健康保険法及び厚生年金保険法の趣旨から
当該就労者が当該事業所と常用的使用関係 にあるかどうかにより判断すべきものですが、
短時間就労者が当該事業所と常用的使用関係にあるかどうかについては、
今後の適用に当たり次の点に留意 すべきであると考えます。

1 常用的使用関係にあるか否かは、
 当該就労者の 労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等
 を総合的に勘案して認定すべきものであること。

2 その場合、
 1日または1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が
 当該事業所において同種の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間および所定労働日数の
 おおむね4分の3以上である就労者については、
 原則として健康保険及び厚生年金保 険の被保険者として取り扱うべきものであること。

3 2に該当する者以外の者であっても
 1の趣旨に従い、被保険者として取り扱うことが適当な場合があると考えられるので、
 その認定に当たっては、
 当該就労者の就労の形態等個々具体的事例に即して判断すべきものであること。』




平成28年10月以降、
昭和55年内かんは原則として廃止され、
健康保険法第3条第1項および厚生年金保険法第12条
の規定により判断することになりました。

すなわち、
1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数が、
同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数の
4分の3以上(以下「4分の3基準」という。)である者を、
被保険者として取り扱うことと法律上明確化されました。

さらに、
4分の3基準を満たさない短時間労働者であっても、
以下の5要件を全て満たした者は、被保険者として取り扱われます
(いわゆる、短時間労働者の社会保険適用拡大)。

1 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
2 同一の事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること。
3 報酬(最低賃金法で賃金に算入しないものに相当するものを除く。)の月額が、8万8千円以上であること。
4 学生でないこと。
5 特定適用事業所(社会保険の被保険者数が501人以上の大企業などが該当)に使用されていること。

ただし、
公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成24 年法律第62 号。以下、「年金機能強化法」という。)附則第16条および附則第45条により、

施行日(平成28年10月1日)前に社会保険の被保険者資格を取得して、
施行日まで引き続き被保険者資格を有する者は、
施行日以降引き続き同一の事業所に使用されていれば、
4分の3基準および5要件を満たさないとしても、
被保険者として取り扱うこととされています。


この措置は、
今まで昭和55年内かんの判断基準により被保険者資格を取得した者が、
4分の3基準となったために、被保険者資格を喪失することのないようにするために、
経過措置として設けられたものです。

したがって、
年金機能強化法附則第16条および附則第45条
に該当する短時間労働者である被保険者が資格喪失する際の判断基準は、
4分の3基準ではなく従来通り昭和55年内かんにより判断することになります
(平成28年5月13日 保保発0513第2号 第1の3参照)。

なお、
この措置は施行日前に被保険者となっていれば適用されるため、
施行日前は、フルタイムの正社員者であった者が、
雇用契約の変更により施行日以降に短時間労働者となった場合も、
昭和55年内かんにより資格喪失を判断することになります。


以上をまとめると、
施行日以降における短時間労働者の社会保険被保険者資格の判断は、
下表のとおりとなります。

短時間労働者の条件

被保険者資格

施行日前に被保険者であり、同一の事業所に継続勤務する
※施行日以降に短時間労働者となった場合を含む

被保険者資格継続
内かんにより判断

施行日前に被保険者でない

4分の3基準を満たす

被保険者となる

4分の3基準を満たさない

特定適用事業所以外の事業所

被保険者とならない

特定適用事業所

5要件を全て満たす

被保険者となる

5要件を満たさない

被保険者とならない



ここで重要なことは、
施行日以降、特定適用事業所以外の事業所において新たに資格取得する場合の判断基準は、
昭和55年内かんではなく4分の3基準になることです。

これは、
昭和55年内かん基準では被保険者資格を取得できた者が、
4分の3基準に判断基準が変更となったため、
被保険者資格を取得できない場合があるということを意味します。

昭和55年内かんと4分の3基準は、
一見違いがないように思えますが、
よく見ると4分の3基準は簡便な基準とするため、
下表のように判断基準を変更しています。

昭和55年内かん

4分の3基準

「1日または1週間の所定労働時間」および「1月の所定労働日数」で判断

「1週間の所定労働時間」および「1月の所定労働日数」で判断

おおむね4分の3以上

4分の3以上

4分の3未満の場合でも、総合的に常用的使用関係を判断

総合的判断は廃止



「1日または1週間の所定労働時間」が「1週間の所定労働時間」と変更され、
おおむね4分の3以上が無くなり、
総合的判断の文言もなくなったため、
特定適用事業所以外の事業所では、
事実上、資格取得へのハードルが上がったことになります。



【具体例】

・1日の所定労働時間は4分の3以上だが、
 1週間の所定労働時間は4分の3未満の場合(下表参照)。

・所定労働時間を比較すると4分の3未満だが、
 残業時間を含めた総労働時間で比較すると4分の3以上となる場合

・日数、時間が、明らかに4分の3未満の場合でも、常用的使用関係が認められる場合


 

1日の所定
労働時間

1週間の所定
労働時間

1月間の所定
労働日数

被保険者となるか?

通常の
労働者

8時間

1週4日
32時間

16日

1日の所定労働時間:4分の3以上
1週間の所定労働時間:4分の3未満
1月間の所定労働日数:4分の3以上
昭和55年内かん:被保険者となる。
4分の3基準:被保険者とならない。

短時間
労働者

6時間

1週3日
18時間

12日


すなわち、
特定適用事業所では5要件ができたことにより短時間労働者の適用拡大となりますが、
特定適用事業所以外の事業所(社会保険の被保険者数が500人以下の中小企業など)では
逆に適用が縮小することになります。

行政がこの状態を長期間放置するとは思えません。

年金機能強化法附則第2条第2項には、
『政府は、短時間労働者に対する厚生年金保険及び健康保険の適用範囲について、
平成31年9月30日までに検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずる。』
とされていることを考慮すると、
遅くとも平成31年10月以降は、
すべての事業所に適用拡大が行われるものと予想されます。


※平成31年4月5日加筆
平成31年4月現在、
「特定適用事業所という概念を廃止し、
短時間労働者の適用拡大を中小企業にまで適用拡大する(ややこしい!)。」
という議論がなされているという情報は入っていません。

10月に消費税8%⇒10%が予定されているため、
「これ以上、世論の反発を受けることをしたくない。」
という安倍首相による判断があったのかもしれませんね。



なお、
施行日前に被保険者であり継続して勤務している者の資格喪失は、
昭和55年内かんにより判断するため、
施行日以降に資格取得した者に比べ、資格喪失しづらいことになります。



次章以降では、
昭和55年内かん、4分の3基準および5要件について
それぞれ詳述していきます。



「昭和55年内かんに関する疑義照会回答等」へ。



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