定時決定は、
健保法第41条および厚年法第21条により
決定することになります。


●健康保険法第41条

保険者等は、
被保険者が毎年7月1日現に使用される事業所において同日前3月間

(その事業所で継続して使用された期間に限るものとし、
かつ、報酬支払の基礎となった日数が17日
(厚生労働省令で定める者にあっては、11日。)
未満である月があるときは、その月を除く。)

に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額として、
標準報酬月額を決定する。



2  前項の規定によって決定された標準報酬月額は、
その年の9月から翌年の8月までの各月の標準報酬月額とする。



3 第1項の規定は、6月1日から7月1日までの間に
被保険者の資格を取得した者

および第43条、第43条の2または第43条の3の規定により
7月から9月までのいずれかの月から標準報酬月額を改定され、
または改定されるべき被保険者

については、その年に限り適用しない。




定時決定は、
毎年、その年の4月1日から6月30日の期間に支給した報酬の総額から平均月額を算出し、
その額を報酬月額として、標準報酬月額を決定します。

決定された標準報酬月額は、
その年の9月から翌年の8月
(保険料の源泉控除期間としては、その年の10月から翌年の9月)
までの保険料算定の基礎となります。

ただし、
その年の6月1日以降に被保険者となった者
および報酬月額が大幅に変動したため、
7月から9月のいずれかの月に随時改定になる者については、
定時決定は行いません。

以下、詳細に検討していきます。








歴月の4月1日から6月30日の期間を指します。

平成14年年度までは、
現行より1月遅く、5月から7月とされていました。

なぜ、4月から6月に改正したのでしょうか?


●健康保険法の解釈と運用
(P342)


そもそも5月から7月までの3ヶ月がとられていたのは、
賃金の安定度が比較的高い月を考慮し、
また保険者の事務の繁閑を考え、
かつ、
報酬月額算定の基礎を複数化することによって、
1年間標準報酬月額を固定化することを
よりよく保障しようとするためであった。

しかしながら、
現在では、4月の給与から賃上げが行われることが多いため、
5月から7月までの3月間とした場合、
いったん、
7月に、4月から6月までの3月間の平均の報酬月額を基礎として随時改定を行った上で、
さらに
8月に、5月から7月までの3月間の平均の報酬月額を基礎として定時決定を行わなければならなくなり、
事業主や保険者に多大な事務負担が生じることとなる。

このため、
平成15年度より、
4月から6月までの3月間に改められた。




もうちょっとわかりやすく解説すると・・・

給与が翌月払いで4月に定期昇給が行われる事業所があったとします。

この場合、
7月に4月から6月までの3月間の平均の報酬月額を基礎として随時改定が行われますが、
従前の定時決定の算定期間では、
定時決定の適用除外要件が「8月から10月のいずれかの月に随時改定になる者」となるため、
適用除外となりません。

よって、
8月に5月から7月までの3月間の平均の報酬月額を基礎として
定時決定を行わなければならなくなり、
不合理であったため、改正したということです。






パートタイマー等が勤務変更により新たに被保険者資格を取得した場合、
以下の疑義照会回答のとおり、
勤務変更前の報酬は報酬月額の算定基礎に含めません。


●パート等の短時間就労者が雇用契約の変更により被保険者となった場合の定時決定について
(平成23年8月12日 疑義照会(回答)No.2010-791)

定時決定については、
被保険者が現に使用される事業所において受けた報酬をもって決定されることから、
実際の被保険者期間について
労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもの以外は算定の対象に含まない。

そのため、
資格取得した後の期間及びその期間中の労務の対象として受けた報酬
を用いて定時決定を行う。








報酬支払基礎日数が17日未満の月は、
定時決定の算定対象月から除外されます。

ただし、
平成28年10月の短時間労働者の適用拡大対象者、
いわゆる5要件を満たし被保険者資格を取得した者については、
17日ではなく、11日となります。


報酬の支払い期日の変更(例:当月払い⇔翌月払い)や
給与計算の締日変更(例:月末締め⇔25日締め)が行われた場合、
賃金支払対象期間が1月を超えてしまったり、
逆に1月に満たなくなってしまったりという 事象が発生する場合があります。

賃金支払対象期間が1月を超える場合は、
保険者算定扱いとなり、
変更後の給与制度において計算されるべき期間で算出された、
修正平均報酬により定時決定行います
(厚年情2010-67事例2-2、厚年指2011-174問2、問3)。

※保険者算定参照。


一方、
賃金支払対象期間が1月に満たない場合は、
特別な取り扱いはされず、
支払基礎日数が17日以上であれば、算定対象月とし、
17日未満であれば、その月の報酬は算定対象外となります(厚年指2011-174問2、問3)。




●健康保険法の解釈と運用
(P342〜343)


報酬支払いの基礎日数とは、
報酬の額を決定するとき、その計算の基礎となった日数のことであって、

たとえば日給契約で支払いを受ける者について、
18日分の報酬が支払われたときはその18日、

月ぎめで支払いを受ける者が、欠勤すると欠勤日の分を差し引かれる場合、
5日欠勤したので25日分支払われたときにはその25日、

週ぎめで支払いを受ける者が2週間しか働かなかったときには、
その14日分が報酬支払いの基礎日数となる。


報酬支払いの基礎日数が
20日(現行17日)以上あることを必要とするとした理由は、
定時決定を行い、1年間不動の標準報酬月額を決定する場合に、

たまたま稼働日数が少なく、
そのために低い報酬しか得られなかった月をも入れて算定すると、
その者の標準報酬月額が低くなり、
その者の受ける報酬の実体と相違する標準報酬月額が決定されるに至るからである。


●標準報酬月額の定時決定等における支払基礎日数の取扱いについて
(平成18年5月12日 庁保険発第0512001)


1 支払基礎日数の算定について
4月、5月、6月における支払基礎日数の算定に当たっては、次によること。

@ 月給者については、各月の暦日数によること。

A 月給者で欠勤日数分に応じ給与が差し引かれる場合にあっては、
  就業規則、給与規程等に基づき事業所が定めた日数から当該欠勤日数を控除した日数によること。

B 日給者については、各月の出勤日数によること。



2 短時間就労者に係る標準報酬月額の算定について

(1) 定時決定
短時間就労者に係る定時決定時の標準報酬月額の算定については、
次のいずれかにより算定すること。

@ 4、5、6月の3ヶ月間のうち
  支払基礎日数が17日以上の月の報酬月額の平均により算定された額とすること。

A 4、5、6月の3ヶ月間のうち
  支払基礎日数がいずれも17日未満の場合は、
  その3ヶ月のうち支払基礎日数が15日以上17日未満の月の
  報酬月額の平均により算定された額をもって、
  保険者算定による額とすること。

B 4、5、6月の3ヶ月間のうち
  支払基礎日数がいずれの月についても15日未満の場合は、
  従前の標準報酬月額をもって当該年度の標準報酬月額とすること。



(2) 随時決定
短時間就労者に係る随時決定時における標準報酬月額の算定については、
前記(1)によらず、
継続した3ヶ月のいずれの月においても支払基礎日数が17日以上であること。




短時間就労者に係る平成18年度以降の定時決定の算定方法


支払基礎日数

標準報酬月額の決定方法

@ 3ヶ月とも17日以上ある場合

3ヶ月の報酬月額の平均額により算出

A 1ヶ月でも17日以上ある場合

17日以上の月の報酬月額の平均額により算出

B 3ヶ月とも15日以上17日未満の場合

3ヶ月の報酬月額の平均額により算出

C 1ヶ月又は2ヶ月は15日以上17日未満の場合(ただし、Aの場合を除く)

15日以上17日未満の月の平均額により算出

D 3ヶ月とも15日未満の場合

従前の標準報酬月額で決定







1の@にいう月給者とは、
完全月給制の者をいいます。

欠勤したとしても欠勤控除されない、
すなわち出勤日数によって報酬額が変動しない者のことです。

一般的には上級職位の管理職等が該当するでしょう。

この場合、
支払基礎日数は歴日数であり、
1月なら31日、2月なら28日ないし29日となります。

年俸制の者も完全月給制と同様の取り扱いとなるでしょう。



1のAにいう月給者とは、
日給月給制の者をいいます。

この場合の支払基礎日数は、
就業規則、給与規程等に定められた所定労働日数から
欠勤日数を控除した日数であると考えられます。

これは、
雇用保険の賃金支払基礎日数の計算方法と同じです。

「健康保険法の解釈と運用」では、
歴日数から欠勤日数を控除した日数を支払基礎日数としていますが、
適正でないと考えます。

また、
欠勤のない月は歴日数とし、
欠勤のある月のみ所定労働日数から欠勤日数を控除した日数として
支払基礎日数を算定している書籍等がありますが、
不合理なような気がします。

日給月給制の場合、
欠勤のない月の支払基礎日数は 所定労働日数とすべき
と考えます。



1のBの日給制の者の場合は、
単純に出勤日数を支払基礎日数とします。
時間給制の者も日給制の者と同様の取り扱いとなるでしょう。



支払基礎日数については、
様々な疑義照会回答があります。

まず、
短時間正社員の支払基礎日数ですが、
短時間労働者と同様に扱うとされています(疑義照会回答No.2010-426)。


また、
1日の所定労働時間に満たない時間しか勤務しない日の取扱いについては、
1時間でも勤務した場合には1日として取り扱うとされています(疑義照会回答No.2010-1178)。

理論上では、
1秒でも勤務し、1秒分の報酬を受けたのであれば、
その日は支払基礎日数の1日としてカウントされます。



夜勤者など日をまたいで労働する者の支払基礎日数については、
以下の疑義照会回答とおりの取り扱いとなります。


●支払基礎日数について(算定基礎届、月額変更届)
(平成23年5月31日 疑義照会(回答)No.2010-196)

●支払基礎日数等の取り扱いについて
(平成23年5月31日 疑義照会(回答)No.2010-426)

●宿日直者の厚生年金・健康保険の加入条件について
(平成23年5月31日 疑義照会(回答)No.2010-477)

夜勤勤務者で日を跨いで労務に就いている場合の
支払い基礎日数についての見解が、
厚生労働省から以下のとおり示されたところである。

(【厚年指2011-174】定時決定及び随時改定の取扱い)

@ 夜勤勤務者が月給で給与の支払を受けている場合
 →当該月の暦日数を支払基礎日数とする。


A 夜勤勤務者が日給で給与の支払を受けている場合
 →給与支払いの基礎となる出勤回数を支払基礎日数とする。
  
  ただし、
  1日の労働時間が8時間を超える場合等で変形労働時間制を導入している場合は、
  下記Bに準じて取り扱うこととする。


B 夜勤勤務者が時給で給与の支払を受けている場合
 →当該月の総労働時間をその事業所における1日の所定労働時間
  で除して得られた数を支払基礎日数とする。
  
  なお、
  勤務中に仮眠時間等が設けられている場合、
  これを労働時間に含めるか否かは
  当該事業所における業務の実態• 契約内容・就業規則等によって、
  仮眠時間等が給与支払いの対象となる時間に含まれているか確認することで判断されたい。




支払基礎日数をまとめると
下表のとおりです。

給与体系

支払基礎日数(原則)

夜勤者等の場合の支払基礎日数

完全月給、年俸制

その月の歴日数

日給月給

その月の所定労働日数から欠勤日数を控除した日数

明示なし

※日給に準じると思われる。

日給

その月の出勤日数

給与支払いの基礎となる出勤回数

※1日の労働時間が8時間を超える場合等で変形労働時間制を導入している場合は、時間給に準じる。

時間給

その月の出勤日数

月の総労働時間/1日の所定労働時間

※仮眠時間等が給与支払いの対象となる時間に含まれている場合は、労働時間に含める。






以下、余談ですが・・・、

基本給が時給だけど、第2基本給が月給だった場合、
賃金支払基礎日数はどうすべきなのでしょうか?

私は、
それぞれの賃金項目ごとに
賃金支払基礎日数を評価し、
それに基づき
賃金項目ごとに算定・月変対象月を判定すべきであると考えます。

算定の場合、
月給制である第2基本給は、実際の出勤日数に寄らず、歴日数となり、
3月間共に必ず算定対象月になりますが、
時給制である基本給は、実際の出勤日数により、
算定・月変対象月数が変動することになります。

したがって、
算定においては、
基本給(月給)は3月間平均
通勤手当(日給)は2月間平均
残業手当(時給)は1月間のみ
危険作業手当(時給)は3月間全て算定対象外
という取り扱いがあり得ることになります。

月変においては、
「時給制である固定的賃金の変動」が発生した場合、
その固定的賃金の支払基礎日数が17日未満の月があった場合、
その他の賃金の支払基礎日数が全て17日以上であっても、
月変不該当にすべきだと考えます。

と思いつつ、
届出様式の想定範囲を超える取り扱いであり、
実務においても非常に煩雑な事務処理が必要となるので
現実的には暦日数でも出勤回数でも
どちらを採用しても問題ないのでしょうが・・・。







報酬月額算定に用いるのは、
「4月から6月の3月間における労働の対償としての報酬額」ではなく、
「4月から6月の3月間において現実に支払った報酬額」です。

たとえば、
当月20日締め翌月末日払いの場合、
2月21日〜3月20日の労働に対する報酬は、4月30日に支払われます。

この報酬は、
支給した4月分の報酬として取り扱われ、
支払基礎日数は完全月給の場合2月21日〜3月20日の合計28日となります。

すなわち、
支払の基礎となった日は、4月1日から6月30日の期間内である必要はなく、
支給日がこの期間内であればよいということになります。

通勤定期券等のように手当を数ヶ月分まとめて支給する場合がありますが、
この場合は支払われた通勤費を何ヵ月分の定期券(通勤費)なのかにより
その月数で除した額により算定します。

ただし、
「明らかに改定月以降受けるべき報酬とは相違する場合であって、
その実態が給与規定等で定められ、かつ、当該月の通勤費が明確」
である場合は
その月に本来支払われるべき報酬額にて算定することになります(疑義照会No.2010-575)


●まとめて支給される手当等について
(平成22年1月7日 疑義照会(回答)No.2010-575)


【疑義内容】

事業所が社員に対し、
手当等について下記のような「まとめ払い方式」
を行っている場合において、

1.4月〜6月の残業代を7月に支給している場合
2.4月〜6月の交通費を7月に支給している場合
3.4月〜6月の業績給(一定額ではない)、育児手当(一定額)の名称で、
本人の請求により支払われる手当てを7月に支給している場合


【日本年金機構本部回答】 

1. 残業代について

事例の場合は、
6月の残業代を7月に支払う場合以外は給与の遅配と考えられ、
平成19年12月11日事務連絡
「賞与が分割支給された場合における賞与支払届等の取扱いについて」問3により、
本来支払うべき月に振分けて算定することになる。


2.通勤費について

通勤費は昭和27年12月4日保文発第7241号による
「毎月の通勤に対し支給されているもの」であるから、
支払われた通勤費を何力月分の定期券(通勤費)なのかにより
その月数で除した額を算定月の報酬に上乗せして算定することが妥当と考えるが、

事例の場合のように、
明らかに9月以降受けるべき報酬とは相違する場合であって、
その実態が給与規定等で定められ、
かつ、
当該月の通勤費が明確であれば、
その通勤費を該当する月に振分けて算定することが妥当と考える。


3.業績給および本人請求により支払われる手当について

業績給については、
その業績給が毎月の業績をもとに査定、算出されるものであれば、
上記通勤費と同様に考え、
その業績給を本来支払われるべき月の報酬に上乗せして算定することが妥当と考える。

本人請求により支払われる手当は、
その手当が月ベースで支払われるものであれば、
本来支払われるべき該当月に振分けることが妥当と考える。








●健康保険法の解釈と運用
(P345)

通常、4、5、6月の3月であるが、
そのうちのある月がその事業所において継続して使用されていた期間に属さなかった場合、
あるいは、
報酬の支払基礎日数が20日(現行17日)未満であった場合には、
その月は除外するので、
残りの2月または、1月が月数となる。




報酬月額の決定方法と支払基礎日数の関係をまとめると
下表のとおり。

労働者の種別

報酬月額の決定方法

定時決定

随時改定

正社員等の
「通常の労働者」

支払基礎日数17日以上の月の報酬月額の平均額。

3月間の報酬月額の平均額。

連続する3月間すべてにおいて支払基礎日数が17日以上である必要あり。

4分の3基準により資格を取得する
「短時間労働者」

3ヶ月とも17日以上ある場合

3ヶ月の報酬月額の平均額

1ヶ月でも17日以上ある場合

17日以上の月の報酬月額の平均額

3ヶ月とも15日以上17日未満の場合

3ヶ月の報酬月額の平均額

1ヶ月又は2ヶ月は15日以上17日未満の場合(ただし、Aの場合を除く)

15日以上17日未満の月の平均額

3ヶ月とも15日未満の場合

従前の標準報酬月額で決定

5要件により資格を取得する
「特定4分の3未満短時間労働者※」

支払基礎日数11日以上の月の報酬月額の平均額。

3月間の報酬月額の平均額。

連続する3月間すべてにおいて支払基礎日数が11日以上である必要あり。

※4分の3基準を満たさず適用拡大の4要件に該当する者








●健康保険法の解釈と運用
(P346)

6月1日から7月1日までの間に資格を取得した者については、
7月1日現在において定時決定を行おうとしても、
それはすなわち資格取得時の決定と同一となるので定時決定を行わず、
資格取得時に決定された標準報酬月額をもって翌年8月までの標準報酬月額とする。








●健康保険法の解釈と運用
(P347)


すなわち、
第43条(随時改定)では、7月、8月、9月から改定されたときは、
その改定された標準報酬月額は翌年の8月31日までの
標準報酬月額となることが規定されている。

したがって、
この第3項において、
その場合には定時決定は排除する旨を規定しないと、
この改定とは関係なしに定時決定も行われ、
そこで、
改定された標準報酬月額とその年の定時決定による標準報酬月額とが
9月以降において競合することになる、

したがって、
定時決定実施前にこの改定をすべきことが判明していれば、
その年に限りこれを行わず、
また、
定時決定後に改定が行われたときは、
その年に限り定時決定はなされなかったこととして扱うことにした。




7月に随時改定する者については、
算定基礎届は一切不要ですが、
8月ないし9月に随時改定する予定の者は一旦算定基礎届を提出し、
実際に随時改定が行われた場合は、
定時決定はなかったものとして取り扱われます。






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