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最終更新日:令和7年11月24日
被扶養者は、
「主としてその被保険者により生計を維持するもの」
であることが必須条件です。
昭和32年3月の改正があるまでは、
「主として」ではなく、
「専ら被保険者により生計を維持するもの」とされていました。
●被扶養者の範囲について
(昭和27年6月23日 保文発第3533号)
「専ら被保険者により生計を維持する者」とは、
その生計の基礎を被保険者に置き、
原則として被保険者以外より生活の資を得ない者をいう。
「専ら」とは、生計のほぼ全てを被保険者に置いている状態であり、
「専ら被保険者により生計を維持する」とは、
被扶養者にその他の収入が全くないか、あったとしてもごくごくわずかであることといえます。
一方、
現行の「主として」とは、生計の主体が被保険者であればよく、
「専ら」と比較すると被扶養者に収入があった場合の認定基準が緩和されたことになります。
被扶養者に収入がある場合の認定については、
以下の通知にて具体的に示されています。
●収入がある者についての被扶養者の認定について
(昭和52年4月6日 保発第9号・庁保発第9号)
1.被扶養者としての届出に係る者(以下「認定対象者」という。)が被保険者と同一世帯に属している場合
(1) 認定対象者の年間収入が130万円未満
(認定対象者が60歳以上の者である場合または概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては180万円未満 ※以下同様)であって、
かつ、
被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は、
原則として被扶養者に該当するものとすること。
(2) 前記(1)の条件に該当しない場合であっても、
当該認定対象者の年間収入が130万円未満であって、
かつ、
被保険者の年間収入を上廻らない場合には、
当該世帯の生計の状況を総合的に勘案して、
当該被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、
被扶養者に該当するものとして差し支えないこと。
2.認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合
認定対象者の年間収入が、130万円未満であって、
かつ、
被保険者からの援助に依る収入額より少ない場合には、
原則として被扶養者に該当するものとすること。
3.前記1及び2により被扶養者の認定を行うことが実態と著しくかけ離れたものとなり、
かつ、
社会通念上妥当性を欠くこととなると認められる場合には、
その具体的事情に照らし最も妥当と認められる認定を行うものとすること。
この通知を表にするならば、
以下のとおり。
| 被扶養者の年収が130万円※以上 |
被扶養者とならない。 |
被扶養者の年収が130万円※未満 |
被保険者と同居 |
被扶養者の年収が被保険者の年収の50%以上 |
被扶養者の年収が被保険者の年収以下であり、総合的に判断して生計維持されていれば被扶養者となる場合あり。 |
被扶養者の年収が被保険者の年収の50%未満 |
被扶養者となる。 |
被保険者と別居 |
仕送り額≦被扶養者の収入 |
被扶養者とならない。 |
仕送り額>被扶養者の収入 |
被扶養者となる。 |
※認定対象者が@60歳以上またはAおおむね厚生年金保険法による障害厚生年金の
受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては180万円未満
※令和7年10月以降、認定対象者が被保険者の配偶者でなくかつ19歳以上23歳未満
である場合にあっては150万円未満

「年間収入」の算定については、以下の通知が参考になります。
●国民年金法における被扶養配偶者の認定基準の運用について
(昭和61年4月1日 庁保険発第18号)
3.「年間収入」とは、
認定対象者が被扶養配偶者に該当する時点での恒常的な収入の状況により算定すること。
したがつて、
一般的には、前年の収入によって現在の状況を判断しても差し支えないが、
この場合は、算定された年間収入が今後とも同水準で得られると認められることが前提であること。
なお、
収入の算定に当たっては、次の取扱いによること。
(1) 恒常的な収入には、恩給、年金、給与所得、傷病手当金、失業給付金、資産所得等の収入で、
継続して入るもの(又はその予定のもの)がすべて含まれること。
(2) 恒常的な収入のうち資産所得、事業所得などで所得を得るために経費を要するものについては、
社会通念上明らかに当該所得を得るために必要と認められる経費に限りその実額を総額から控除し、
当該控除後の額をもつて収入とすること。
(3) 給与所得(給与、年金、恩給等)は、控除前の総額を収入とすること。
下表を参考にして、
収入を算定してください。
| 収入の種類 |
収入となるか? |
参考となる
疑義照会回答 |
非課税収入(遺族年金、障害年金、傷病手当金、出産手当金、失業給付等) |
収入となる。所得税法上の被扶養親族等であっても、非課税収入がある場合は、確認する必要がある。 |
通番79
通番89 |
失業保険の一時金 |
日額×給付日数で計算されるものの、一時金であり、恒常的な収入には該当しない。 |
No.2010‐92
No.2010-843 |
食事や衣類等の現物提供 |
可能な限り金銭に換算し、仕送り額を判断すべき。 |
No.2010‐646 |
株の配当、デイトレードの収入 |
収入となる。「収入=売却益=株式の売却額−株式の購入額」で計算する。 |
No.2010-577 |
生活保護費 |
被扶養認定対象者の「収入」と被保険者の「収入」とは、同じ内容の「収入」を意味する。生活保護費は世帯主の収入として取り扱う。 |
No.2011-2 |
積み立て型の個人年金
小規模企業共済制度の共済金
司法修習生の貸与制の修習資金 |
恒常的な収入には、恩給、年金給与所得、傷病手当金、失業給付金、資産所得等の収入で継続して入るものがすべて含まれることとされている。数年にわたり分割して受給する個人年金等も課税・非課税を問わず収入に該当する。 |
No.2010-635
No.2010-1133
No.2011-358 |
●日本年金機構業務処理マニュアル 厚生年金保険健康保険 適用V-1-6(2013年1月版)
雇用保険・傷病手当金等の給付を受ける場合の扶養認定では、
年間収入基準である130万円を360日で除した額を日額基準として判断する。
(日額3,611円以下)
ただし、
待機および給付制限期間中については、
基準にかかわらず被扶養者として認定することができる。
また、
給与所得等の場合については130万円を12月で除した額を月額基準として判断する。
(月額108,333円以下)
とされていますが、
日給者に係る扶養認定については、年間360日休日なしに働くことはありえないため、
単純に日額が3,611円以上かどうかで判断するのではなく、
就労状況等から総合的に判断することになります(疑義照会回答No.通番112)。

事業所得は、
社会通念上明らかに当該所得を得るために必要と認められる経費の実額を
総額から控除した額を自営業者の収入とすることとされています。
それでは、具体的にどのような経費が控除できるのでしょうか?
●日本年金機構業務処理マニュアル 厚生年金保険健康保険 適用V-1-6(2013年1月版)
自営業者についての収入額は、
当該事業遂行のための必要経費を控除した額となる。
なお、
「青色事業専従者給与」や「繰越損失額」
(事業遂行上やむを得ない支出により生じた損失であって、事業主にとって純損失が生じている場合に限る。)
については、事業遂行のための必要経費として控除して差し支えない。
ただし、
「青色申告特別控除」に関しては、
青色申告を行うことにより特典的に認められるものであり、
事業主として金銭的な負担は生じないものであることから、
事業遂行のための必要経費として控除することはできない。
●収入がある者(自営業者等)の健康保険被扶養者の認定について
(平成25年3月28日 疑義照会回答No.2012-61)
【疑義内容】
減価償却費は、事業遂行のための必要経費に該当するか?
【日本年金機構本部回答】
確定申告書上に項目がある減価償却費は、
社会通念上明らかに当該所得を得るために必要と認められる経費の実額ではないため、
恒常的な収入から控除することはできません。
確定申告書のコピーが添付されている場合は、
控除額の所得を判断するのでなく、総収入から売上原価を差し引いた項目を基準とし、
そこから社会通念上、明らかに当該所得を得るための必要経費を控除した額により判断してください。
●給与所得者の被扶養認定にかかる収入の取扱いについて
(平成22年11月12日 疑義照会回答No.2010-389)
【疑義内容】
給与所得135万円、自営業の所得マイナス100万円の場合
【日本年金機構本部回答】
被扶養者認定における年間収入は、
生計を維持するための投入しうる額をすべて含めて、収入とするのが妥当である。
また、
「年間収入とは、
認定対象者が、被扶養配偶者に該当する時点での恒常的な収入の状況により算定することであり、
一般的には前年の収入によって現在の状況を判断しても差し支えないが、
算定された年間収入が今後とも同水準で得られることが前提であること」から、
ご照会の事例のように、
自営業所得にマイナスがある場合は、
その所得が今後とも同水準で得られると認められることが前提であれば、
他の収入と併せて(差し引いて)収入とするのが妥当である。
以上をまとめると、
下表のとおりとなります。
| 青色事業専従者給与 |
控除可能 |
業務処理マニュアルV-1-6 |
繰越損失額 |
控除可能 |
青色申告特別控除 |
控除不可 |
減価償却費 |
控除不可 |
疑義照会回答No.2012-61 |
給与所得がある場合 |
合算可能 |
疑義照会回答No.2010-389 |

学生には小中高等学校、大学(夜間含む)および専門学校の学生も含まれます
(疑義照会回答No.通番137)。
義務教育卒業程度(高校生以上)の学生は、
届に学生自身の収入の記載が必須です
(疑義照会回答No.通番106)。
また、
別居の場合は仕送り額を記載する必要がありますが、
昼間学生は、事業主が認定対象者に係る収入について確認した場合には、
省略可としています(疑義照会回答No.通番142)。

以下の疑義照会回答を参考にしてください。
●別居における扶養認定について
(平成22年10月26日 疑義照会回答No.2010-410)
●疑義照会回答2010-410【別居における扶養認定について】の回答に係る質問等について
(平成22年12月17日 疑義照会回答No.2010-1127)
【疑義内容】
息子(被保険者)の仕送り額が月額5万円(年間60万円)
父の老齢年金138万円、母の老齢年金額6万円の場合
【日本年金機構本部回答】
別居という事実から社会通念上、
民法上の相互扶養義務者である父に年間138万円の収入があり、
被保険者の仕送り額が年間60万円であるので、
被保険者が「主として生計を維持しているとは認められない」と考えるのが妥当であると判断したものである。
仮に父の収入が、母に全くあてられず、
仕送り額が、全額母に対するものという状況であれば、
被保険者が「主として生計を維持している」と判断できるので、母の認定は可能である。
認定の判定にあたり、
社会通念上、他の親族が扶養すべきと考えられる者を扶養する場合等、疑義が生じる場合においては、
金額のみで判断することなく、家計の実態等に照らし、
誰が「主として生計を維持しているのか」をご判断いただきたい。
なお、
所定の年齢に達し老齢年金の受給者となり、
その金額が180万円以上だった場合は、
その年金の支払い日をもって被扶養者に不該当になります(疑義照会回答No.通番143)。

おおむね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障がい者である場合には、
収入要件が130万円未満ではなく、180万円未満に緩和されます。
障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障がいは、
以下の基準を参考にしてください(疑義照会回答No.2010-257、2010-1129)。
・身体障がい者手帳4級程度であれば、該当
・精神障がい者保健福祉手帳を有していれば、該当
・療育手帳を有していれば、該当

●被扶養者の認定について
(平成22年9月27日 疑義照会回答No.2010-456)
【疑義内容】
被保険者:妻 育児休業中のため収入なし 標準報酬200千円 妻が生活費を負担している
被扶養者:夫 収入なし 子 収入なし
【日本年金機構本部回答】
事例の被保険者の世帯で主たる生計維持者が誰になるのかを考えた場合、
現時点で被保険者以外の世帯構成員に収入が無い状態であれば、
事業主との雇用関係が存続しており、育児休業から復帰した場合は標酬月額程度の収入が見込まれること、
また、
被保険者には雇用保険から育児休業基本給付金が支給されていると思料され、
この世帯において収入がある者は唯一被保険者であることを考えれば、
被保険者がこの世帯における「主たる生計維持者」と考えられる。
したがって、
事例の場合は、被保険者が育児休業中であっても
配偶者である夫および子を被扶養者と認定することはやむを得ないと考える。
「同一の世帯に属する」へ。
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