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適用事業所が事業を廃止、休業、合併により存続しなくなる等、
事業実態がなくなった場合は、
事実発生日から5日以内に全喪届を提出し、
適用事業所でなくする必要があります。
事業所が全喪となった場合、
法律上当然に、
被保険者はその資格を喪失することになります。
●健康保険法施行規則第20条
適用事業所の事業主は、
廃止、休止その他の事情により適用事業所に該当しなくなったときは、
第二十二条の規定により申請する場合を除き、
当該事実があった日から五日以内に、
次に掲げる事項を記載した届書を
厚生労働大臣又は健康保険組合に提出しなければならない。
届出義務は事業主にありますが、
破産の場合、破産の手続は、原則、事業を停止した上で整理・精算を破産管財人が行うため、
事業主が届出困難なときは、
破産管財人による全喪届も可能とされています(疑義照会回答No.2011‐43)。
届出には、
その事実を証明する書類を添付する必要があります。
●政府管掌健康保険、船員保険及び厚生年金保険の適用事業所の全喪届について
(平成15年11月12日 庁保険発第1112001号)
1. 全喪届の様式等
全喪届に添付する具体的な添付書類は、
@ 雇用保険適用事業所廃止届事業主控の写(公共職業安定所)
A 解散登記の記載がある登記簿謄本の写(地方法務局)
のいずれかを添付させること。
なお、
@又はAの添付が困難な場合にあっては、
次のいずれかを添付させること。
B 合併、解散、休業等異動事項の記載がある法人税•消費税異動届の写
又は給与支払事務所等の廃止届の写(税務署)
C 休業等の確認ができる情報誌、新聞等の写
D 事業廃止等を議決した取締役会議事録の写
E その他適用事業所に該当しなくなったことを確認できる書類
第三者の確認がない書類を添付した場合等、
偽装全喪である恐れがあるときは、
実地調査が行われることになっています。
●政府管掌健康保険、船員保険及び厚生年金保険の適用事業所の全喪届について
(平成15年11月12日 庁保険発第1112001号)
C 全喪の原因等に疑義がある場合には、
必要に応じて実地調査を行う等、遮正な処理に努めること。
なお、
全喪届の処理後においても、
通報等により事業継続の疑いが生じた場合には、
その実態について調査を行う等、適切な対応を行うこと。
●政府管掌健康保険及び厚生年金保険の適用事業所の全喪届に係る事務処理等について
(平成16年9月24日 事務連絡)
3 事後調査について
全喪届の提出にあたって取締役会議事録の写を添付している事業所等、
第三者の確認がない書類を添付している事業所については、
その内容について、できる限り詳細な聴き取りを行うとともに、
一定期間経過後(原則として3ヶ月を超えない期間内とすること)、
当該事業所に電話や文書による照会を行ったり、商工会や業界団体等に照会を行う等により、
休業や廃業の実態を把握し、適正な処理に努めること。
なお、
疑義がある場合には、優先して実地調査を行うこと。
また、
実地調査については、
適用関係届書の審査業務の一環であるとともに適宜実施する必要があることから、
社会保険調査官による実施に固定することなく、
適用担当課の職員においても随時実施すること。
その他の適用事業所に該当しなくなったことを確認できる書類の具体例として、
以下があります。
| 事例 |
日本年金機構回答 |
疑義照会
回答No. |
破産手続開始通知書の写、
破産手続開始決定の写(裁判所) |
例外として事業を継続して行う場合があるため、
事後調査必要。 |
2010‐393 |
県教育委員会の解散許可書
(県教育委員会の公印有) |
第三者の確認がある書類として妥当。
事後調査不要。 |
2010‐706 |
漁業協同組合の合併契約書
(立会人の市長の公印有) |
何らかの理由で、
被保険者が0人になった場合でも、
その事業所は適用事業所として扱われるのでしょうか?
75歳以上の被用者のみの事業所になったり、
1人法人の代表者が資格喪失し、被保険者0人となったりした場合、
当該事業所が直ちに適用事業所の要件を欠くことにはならないとされています
(疑義照会回答No.2010‐341、No.2010‐514)。
任意適用事業所は、
従業員の同意を得て、厚生労働大臣の認可を受ければ、
適用事業所でなくすることもできます(任意包括脱退という。)。
任意包括脱退も適用と同じく、
健康保険と厚生年金保険の両方に加入しなければならないわけではなく、
どちらか一方だけ脱退することができます(疑義照会回答No.2010‐482)。
●健康保険法第33条
第三十一条第一項の事業所の事業主は、
厚生労働大臣の認可を受けて、
当該事業所を適用事業所でなくすることができる。
2 前項の認可を受けようとするときは、
当該事業所の事業主は、
当該事業所に使用される者(被保険者である者に限る。)
の四分の三以上の同意を得て、
厚生労働大臣に申請しなければならない。
それでは、
任意適用事業所は全喪届を提出する義務があるのでしょうか?
法令上、
任意適用事業所には全喪届を提出する義務はありませんが、
実務では提出を求められます(疑義照会回答No.2010‐639)。
もし全喪届を出すことを拒否した場合には、
日本年金機構が職権で処理することになっています(疑義照会回答No.2010‐1165)。
全喪届を提出する場合、
全喪年月日は、適用取り消しの認可をした後で、
年金機構職員が記入するため、空欄で提出することになります(疑義照会回答No.2010‐1165)。
被保険者が0人になった場合は、
強制適用事業所と同様に当該事業所が直ちに適用事業所の要件を欠くことにはなりません
(疑義照会回答No.2010‐676)。
被保険者が0人である場合は、
使用される者が存在しないため4分の3以上の同意書は添付不要であり(疑義照会回答No.2010‐464)、
提出時に実地調査があった場合は、
一定期間経過後の事後調査は不要とされています(疑義照会回答No.2010‐676、No.2010‐1087)。
偽装全喪を防ぎ適用の適正化の観点から、
日本年金機構のホームページに「全喪事業所一覧表」が掲示され自由に閲覧できましたが、
平成28年10月31日から、適用事業所の適用状況を検索できるようになったため、
掲示は10月30日をもって終了となりました。
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