月給制の残業代単価を算出する場合、

「月給額÷月の所定労働時間数」で時給換算しますが、

月によって所定労働時間数が異なるときは、

1年間における1月平均所定労働時間数で割り算します。

 

最近、改めて疑問に思ったのが、

・「1年間」とはいつからいつまでなのか?

・土日祝日休みの場合、暦の並びによって休日数が微妙に変わるが、
 その都度見直さなければならないのか?

ということ。

 

今回は、この問題について考えてみたいと思います。

 

 

【労働基準監督官に怒られない年間平均の算出方法】

労働基準法では、

1週間=原則として、日曜日から土曜日まで
1日 =原則として、午前0時から午後12時まで

と明確に通達(≒行政のお知らせ)で示されています。

 

しかし、残業代計算で用いる「1年間」については、

A:いわゆる1年である1月1日から12月31日までなのか?
B:いわゆる年度である4月1日から翌3月31日までなのか?
C:残業代を計算する月の前1年間なのか?
D:残業代を計算する月以後1年間なのか?

AからDまで様々な解釈が可能であり、ハッキリしません。

 

昭和26年8月8日に出された通達(基収2859号)

に以下の問答が書かれています。

 

【問】
残業代の計算にあたり、月給者の1年間の所定労働
日数は、以下のとおり取り扱って差し支えないか?

1.就業規則に「休日は毎週日曜日」と書いてある場合
⇒本年は日曜52日として1年間の所定労働日数は、
365日−52日=313日

2.省略

3.就業規則に「休日は以下のとおり」と書いてある場合
定休日:毎週日曜日
公休日:年末年始(12月31日から1月3日まで4日間)
天皇誕生日   4月29日
憲法記念日   5月3日
盆会      8月15日
会社創立記念日 11月3日
勤労感謝の日  11月20日
⇒週休52日の外に公休8日(本年は天皇誕生日は
日曜と重複しているので削除)も所定の休日として
取り扱い計60日が休日であり1年間の所定労働日数は、
365日−60日=305日

 

【答】
1.、3.のどちらも、あなたのおっしゃるとおり。

 

通達で「本年は」と言っているので、CとDは除外

できそうです。

 

この通達が出た昭和26年の翌年昭和27年はうるう年

であり2月は29日まであります。

 

1.において、本年の暦日数を366日でなく、365日

を採用していることから、Bも除外できることなります。

 

したがって、残業代計算で用いる「1年間」は、

残業代を計算する当年の1月1日から12月31日まで

と考えることができます。

 

また、3.において、

「本年は天皇誕生日は日曜と重複しているので削除」

とあり、その年の実際の休日数により計算しています。

 

昭和23年3月17日の通達(基発461号)も考慮すると、

当年の曜日の並び等も厳格に適用したうえで、

1年間の所定労働日数を決める必要がありそうです。

 

 

【残業単価を変動させないためには?】

以上を踏まえると、

特定の曜日や祝日を所定休日としている企業では、

年によって、残業代単価がビミョーに変動し兼ねない

ことになりますが、これって面倒くさいですよね?

 

社員に理解させるのも相当な手間が掛かりそうですし、

締め日が月の途中だったら、頭がウニになりそうです。

 

月給制の残業単価を変動させないためには、

1日の所定労働時間を変えないのであれば、

1年間の所定労働日数が毎年同じであれば

よいことになります(昇給・降給時を除く。)。

 

たとえば、

週休2日制+祝日と年末年始が所定休日の場合は、

就業規則において所定休日を、「土曜日、日曜日、

国民の祝日(振替休日含む。)、その他会社が休日

と定めた日」と規定してはいかがでしょうか?

 

その上で、

「1年間の所定労働日数は毎年240日」等と決めておき、

10月頃に翌年の暦の並びを確認して、年末年始等で

会社休日を指定し、社員に発表すればよいでしょう。

 

 

残業代は、法定額を上回って支払っていれば、

法律違反にはならず、必ずしも法律通りの計算を

しなければならないわけではありません。

 

現実的には、暦の並びによらず1年間の所定労働日数を決め、

残業代単価を固定している企業が圧倒的に多いと思います。

 

労働基準監督官が今回のテーマを指摘することはほとんどないと

思いますが、ウッカリ残業代を未払いすることのないよう

気を付けたいところです。



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