※2023年11月20日発行のメールマガジンの内容です。

 

いよいよ令和6年4月から、建設業や運送業にも、

時間外・休日労働の上限規制が適用されますね。

 

「トラックドライバーの改善基準告示」も同タイミングで

改正されることが決まっています。

 

時間外・休日労働は、36協定が前提条件ですが、

36協定は労務管理の基本中の基本でもあるので、

「もう知らないことは無いな。」と軽く考えていました。

 

・・・ですが、

36協定を届け出る機会があったり、

建設会社から質問を受けたりしたところ、

即答できないことが結構ありました。

 

今回は、建設業や運送業に限らない、

知っているようで知らない36協定のあれこれについて、

シェアしたいと思います。

 

 

【ポイント1:上限規制適用には経過措置がある】

建設業や運送業において、

令和6年4月1日から直ちに時間外労働の上限規制が

全面的に適用されるとは限りません。

 

経過措置により、

令和6年3月31 日を含む期間について定めた36協定については、

その協定の初日から1年間は引き続き有効となり、

上限規制は適用されません。

 

例えば、

毎年3月16日を起算日として36協定を締結している場合、

次回の36協定の起算日は、令和6年3月16日となるので、

上限規制が適用されるのは、令和7年3月16日以降という

ことになります。

 

トラックドライバーの改善基準告示も同様の取り扱い

となります。

 

 

【ポイント2:監督署の受付通知前でも残業等は可能】

36協定は「届け出」であり、

行政機関に申請し、許認可等を求める行為ではありません。

 

・届出書の記載事項に不備がない
・届出書に必要な書類が添付されている
・その他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している

 

上記の要件を満たす場合は、

届出が行政官庁に到達した時点で

届出義務を履行したことになります(行政手続法第37条)。

 

電子申請や郵送により36協定を届け出た場合、

受付完了通知を受け取るまでに時間を要しますが、

 

電子申請:到達したとき
郵送:監督署に郵便物が配達されたとき

 

に届出義務は履行したことになり、

時間外・休日労働を命じることができることになります。

 

 

【ポイント3:対象期間は原則として変更不可】

36協定届の届け出対象期間は、起算日から1年間ですが、

いったん届け出ると、原則として

期間の途中で起算日を変更することはできません。

 

たとえば、

当初の36協定を届け出た後に、対象期間の途中で、

新規事業を立ち上げた為に新たな業務が発生し、

この業務で時間外労働が必要なった場合は、

新たな業務を対象とた起算日の異なる36協定を別途届け出る

ことなります。

 

ただし、

「複数の事業場を有する企業において、

対象期間を全社的に統一する場合のように、

やむを得ず対象期間の起算日を変更する」ことは可能

とされており、事情によっては起算日の変更は可能です。

 

 

【ポイント4:転勤における取り扱いの違い】

36協定は、事業場を単位として締結するものであり、

企業単位ではありません。

 

ある社員が、

同一企業内のA事業場からB事業場に転勤した場合、

A事業場での時間外労働の実績に関係なく、

新たにB事業場の36協定が適用することになります。

 

ただし、

1ヶ月100時間未満、複数月平均で80時間以下ルール

は、転勤前後の実績を通算して適用されます。

 

また、

同一事業場内でC業務からD業務へ配置転換した場合は、

C業務での時間外労働の実績を加算して、

D業務での時間外労働を管理する必要があります。

 

 

【ポイント5:特別条項の回数は、個人毎にカウント】

特別条項を適用できるのは、対象期間中に最大6回までであり、

36協定届の書式では業務毎に記載するようになっています。

 

単純に考えると、

特別条項発動回数の数え方は業務毎と思いがちですが、

下記の通達によれば、個人毎に回数を数えるのが正解

となります。

 

労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の
限度等に関する基準の一部を改正する告示の適用について
(平成15年10月22日基発第1022003号)

3(2)後段
「当該回数については、特定の労働者についての
特別条項付き協定の適用が1年のうち半分を超えないもの
とすること。」

 

 

【ポイント6:勤務間インターバルは9時間以上であればOK】

特別条項を締結する場合、

「健康及び福祉を確保するための措置」を取る必要があります。

 

当該確保措置の選択肢の1つとして、

「終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保する」

いわゆる勤務間インターバルの確保があります。

 

厚生労働省では、

9〜11時間以上の勤務間インターバルの導入を推奨

しており、助成金制度もあります。

 

厚生労働省が公表している36協定の記載例には、

「11時間の勤務間インターバルを設定」とあるので、

そっくりそのまま11時間の勤務間インターバルを設定

している企業を結構見かけます。

 

11時間を守ることができるのであれば結構なのですが、

勤務実態として11時間のインターバル確保が難しい場合は、

実態に合わせて、9時間や10時間にすべきでしょう。




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