就業規則を変更したり、いわゆる36協定を届け出たり

する場合、会社は自分勝手に行動することができず、

必ず従業員の代表者と話し合いをする必要があります。

 

この代表者ですが、

従業員の過半数が所属する労働組合がある場合は、

その労働組合と話し合いをすればよいのですが、

中小企業では、労働組合がないことが多いでしょう。

 

労働組合がない企業の場合、

従業員から一定のルールに基づき代表者を選出する

必要があるのですが、代表者の選出方法については、

かなりいい加減なのが現状だと感じています。

 

しかし、最近の裁判例を見ると、代表者の選出方法が

不適切であることを理由に就業規則や36協定などの

労使協定の効力を否定する判決が続いています。

 

重要な変更点を含む就業規則が否定された場合、

事業経営に大きな影響が出てしまうことも・・・。

 

賢い経営者は、このようなムダな危険を冒すべき

ではありません。

 

裁判所に否定されない

代表者の選出方法について考えてみましょう。

 

 

 

【過半数とは? その分母と分子について】

分母がハッキリしないと、過半数かどうか判断

できませんよね。

 

分母に入るのは、現在働いている従業員だけでなく、

病欠、産休、育児・介護休業、出張および休職など

当分出勤が予定されていないような従業員も含まれます。

 

いわゆる管理監督者は、代表者にはなれませんが、

分母の従業員には含まれます。

 

 

次に、分子というか過半数の意味について。

 

「過半数」とは、50%「超」という意味です。

 

たとえば、

従業員が100人の事業所で3人が立候補したため、

選挙で代表者1名を選ぶことになったとします。

 

投票結果が、Aさん40票、Bさん35票、Cさん25票

だった場合、最も得票数の多いAさんでも過半数の

51票に届いていない為、だれも代表者になれません。

 

この場合は、AさんとBさん2名による決選投票を

行うなどして、過半数の信認を得ましょう。

 

 

 

【代表者の要件は4つ】

従業員の代表者は、以下の4要件をすべて満たす

必要があります(原則)。

1.労働基準法第41条に規定される管理監督者でないこと
2.民主的な手続きにより選出された者であること
3.会社の意向に基づき選出された者でないこと
4.当該事業場の従業員の過半数の信任があること

 

●1.について

会社が独自に定める部長や課長などの管理職が、

労働基準法の管理監督者に必ずしも該当するとは

限りませんが、労働条件の計画・管理に関する権限

を有する者は、本件代表者としての適格性を有しない

と考えられるので、上級管理職が代表者になることは

避けるべきでしょう。

 

 

●2.と3.について

要するに、会社側の意向を忖度することなく、

従業員の自由意思によって代表者を選出してね♪

ということです。

 

具体的には、以下のとおり。

・1人1票制による投票や挙手
・従業員のみによる話し合い
・持ち回り決議

 

持ち回り決議とは、書面により候補者を提案して、

各従業員に書面を回していき、同意、不同意を記載

していく決議方法を言います。

 

4.については、先に述べた通りです。

 

 

 

【代表者は、複数名でもよいか?】

代表者の人数は、労基法の法文上、1名を想定している

と考えられ、現実でも1名を選出するのが一般的です。

 

ですが、

就業規則や労使協定が、事業運営を左右し兼ねない

重要な案件であることを考えれば、これらの是非を

1人で判断するのは荷が重い場合もあるでしょう。

 

そうであれば、複数名の代表者もアリだと考えます。

 

 

 

【代表者に任期を定めてよいか?】

タテマエ上、

就業規則の変更や労使協定の締結の都度、その時に

在籍する従業員の代表者である必要があるので、

その都度、選出するのが望ましいと考えられます。

 

とはいえ、

事案発生のたびに選出するのは結構面倒だったりします。

 

従業員の変動が激しい事業所はともかくとして、

あまり従業員の面子が変わらない事業所であれば、

予め任期を定めて選出すれば、問題ないと考えます。

 

あまりに長い任期は、望ましくないと考えられるので、

穏当な任期としては、長くても3年くらいでしょうか?

 

 

 

【代表者が退職したら、その代表者と締結した労使協定は無効?】

適切な方法で代表者を選び、労使協定を締結したものの、

・代表者が退職してしまい、代表者が不在
・代表者が昇格して、管理監督者になった
・従業員が大幅に入れ替わり、過半数を代表しなくなった

という場合、その代表者と締結した労使協定は無効

となってしまうのでしょうか?

 

答えは、「No」です。

 

労使協定締結時点において適法な代表者でありさえ

すればよく、その後、その代表者が法定の要件を

満たさなくなったとしても、労使協定は有効です。

 

 

 

働き方が大きく変わろうとしている現代社会、

就業規則の変更や労使協定の締結時だけでなく、

従業員と話し合わねばならない機会は増えてくる

と思います。

 

そんなときのためにも、適切な方法で代表者を選出

しておくことをおススメします!



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