令和2年3月22日現在、

厚生労働省のホームページに労働基準のよくある質問として

「振替休日と代休の違いは何か。」について、

以下の解説が掲載されています。


【質問】
振替休日と代休の違いは何か。

【回答】
「休日の振り替え」とは、予め休日と定められていた日を労働日とし、
そのかわりに他の労働日を休日とすることを言います。

これにより、
予め休日と定められた日が「労働日」となり、
そのかわりとして振り替えられた日が「休日」となります。

従って、
もともとの休日に労働させた日については「休日労働」とはならず、
休日労働に対する割増賃金の支払義務も発生しません。

一方、
いわゆる「代休」とは、休日労働が行われた場合に、
その代償として以後の特定の労働日を休みとするものであって、
前もって休日を振り替えたことにはなりません。
従って、
休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。


この解説は不適切な部分があるのですが、

お気付きでしょうか?

 

 

基礎知識として

休日労働の割増賃金が必要となる「法定休日」とは何なのか?

を確認しておきましょう。


【労働基準法第35条】
(休日)
1 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。


法定休日を簡潔にまとめるなら、

以下のとおり。

・原則として、毎週1回与える必要がある。

・例外として、4週間に4日与えるのであれば(4週4休日制)、大目に見る。

・4週4休日制の場合、どの4週間で区切っても4休日なければならないわけではないが
4週の起算日の特定=4週間の区切りの明確化が必要。

・ただし、どの4週間で区切っても4休日あるのであれば、4週の起算日の特定は不要。

・法定休日は、特定されていることが望ましい。

 

さて、

法定休日をちゃんと理解した上で、

厚生労働省の振休の解説を読んでみてください。

・・・、おかしな記述ではありませんか?

ヒントは、

振替先の労働日はいつでもいいのか?

という点です。

 

 

答え。

振替先の労働日はいつでもよいわけではなく、

週1回または4週4休日を満たすことができる労働日

でなければならないのですが、

厚生労働省のホームページでは、

その記述が抜けているので不適切なんです。

そもそも、

振休や代休という仕組みは、

労働基準法に規定されている訳ではなく、

純粋な労働契約上の問題となります。

労働基準法には、

振休を与えれば、週1回または4週4休日を与えなくてもOK

とはどこにも書いてありません。

であれば当然、

労働契約よりも強行法規である労働基準法が優先されるべきで、

週1回または4週4休日を与えていなければ、

労働基準法第35条違反=6か月以下の懲役または30万円以下の罰金

ということになります。

 

 

4週4休日制を採用している企業は、

私の知る限りありません。

4週4休日制が浸透していない理由は、

4週=28日と歴月(ほとんどの月が30日または31日)にズレがあるため、

給料の賃金計算期間と一致させることができないからでしょう。

4週の起算日を特定していない場合、

毎週1回または4週4休日のどちらの条件を満たすためであっても、

振替先の労働日は同一週内である必要があります。

実は、厳密に分析していくと、

・法定休日の他に所定休日があるか?

・法定休日を特定しているか?

・4週の起算日を特定している場合

によっても考え方が変わってくるので、

注意が必要です。

 

 

「日曜日を休日とする。日曜日に出勤した場合、
法定休日に出勤したものと推定する。
ただし、同一週内に1暦日の所定休日があるときは
その休日のうち最初の休日を法定休日とみなす。」

のような規定をしたらどうなるか?

法定休日を特定していないので、

その週の最終日が到来してはじめて、

法定休日が確定することにならないか?

これなら、

法定休日は原則として日曜日だけど、

いちいち振り替えというメンドクサイ手続きなしに

就業規則上当然に他の日に法定休日が変わり得る。

・・・かもしれません。



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