年休とは、
賃金の支払い義務を残したまま、
一暦日(=0時から24時までの連続24時間)について、
休暇を与える(≒労働義務を免除する行為)
ことであると言えます。

このように、
年休は「一暦日」が基本単位なので、
企業には半日単位の年休(以下、半日年休と略)を付与する義務はありませんが、
半日年休を与えても法律違反にならないとされています。

実際に、
「5労働日の年休取得義務」を算定する上で、
半日年休は、0.5日として計算してよいとされています。

ここで問題なのが、
「半日年休」って何だろう?
ってことです。

概念としては、
「一日の半分の年休」なので一見わかりやすそうですが、
実は具体的なことは法律に一切決まりがないのが現状。

ですが、
企業が独自解釈のルールで半日年休を10回与えたことにより、
「年に最低5日間」の年休をクリアしたと思っていたのに、
臨検に訪れた労働基準監督官に否認され、改善指導を受けた
としたらたまったものではありません。

本来であれば、
年休取得義務違反に罰則を設けてまで規制したいのであれば、
半日年休についても法律でキッチリ規定しておくのがスジですが、
厚生労働省はそこまでやる気がないようなので、
カラカマが独自に妄想・思考した、運用案をご紹介します。


問1:そもそも半日年休とは、
「0:00〜12:00」または「12:00〜24:00」なのか?
それとも、通算12時間でOKなのか?
それとも、所定労働時間の半分の時刻なのか?

答:原則として年休は、
暦日=0:00〜24:00なので、
半日年休は、
「0:00〜12:00」または「12:00〜24:00」
が原則と考えるべきです。

例外として、
交替勤務または常夜勤勤務の場合は、
当該勤務時間を含む継続24時間でOKとされています。

これを考慮すると、
半日年休=継続12時間は許容範囲だと考えます。

あくまで例外的扱いとして継続12時間とするので、
半日年休の取得の都度、恣意的に時刻を決めるのは、
1労働日の年休取得を阻害すると考えられるし、
事務処理上非常に煩雑でもあるので認めるべきではありません。

継続12時間とするならば、
所定労働時間のちょうど半分で区切る
規定を明示しておくべきでしょう。!



問2:半日年休はいつまでに申し出るべきか?

答:理論的には、始まる1秒前でOKだが、
実際の運用では、以下を規定しておくべき。

●使用者による時季指定
規定しない≒直前でも時季指定できるようにしておくべき
だとカラカマは考えています。

何故なら、
大地震、台風、大雪、交通機関のストライキ・麻痺等、
半日単位で勤務させるべきかどうか事態の様子を見るべきときに
活用できるからです。

※建設業など屋外労働の場合、
使用者による半日年休時季指定は
大いに活用できるのではないでしょうか?


●労働者による時季指定
1暦日単位の年休と同様でよいと思います。
原則⇒3日前、
やむを得ない場合⇒前日の終業時刻まで、
突発の風邪等の場合⇒事後の申請でもOK
のように公序良俗に反しない範囲で定めればよいでしょう。



問3:所定労働時間が「15:00〜23:00」の場合、
半日年休を取ったときに賃金はいくら支払うのか?

答:基礎知識として、
年休は有給なので労基法では、
1.平均賃金
2.所定労働時間労働した場合に支払われる「通常の賃金」
3.健康保険の傷病手当金の日額
のいずれかで賃金を算定し支払うよう規定しています。

現実的には、
9割以上のほとんど企業において、
2の「通常の賃金」を採用しており、
まれに
1の「平均賃金」を採用しているようです。

3はレアケースなので
今回、3は無視します。

設問の場合、
半日の定義と
「平均賃金」または「通常の賃金」の選択により、
2×2=4通りの賃金が考えられます。


●半日年休を認めているにもかかわらず、
半日を明確に定義していない場合

1暦日の午後=12:00〜24:00に
半日年休を取得したことになるので、
平均賃金の場合:1労働日分の勤務免除だが、賃金は平均賃金×0.5を支払えば足りる。
通常の賃金の場合:半日年休だが1労働日分の賃金を支払うべき。土曜日半ドンの逆パターン



●半日=「0:00〜12:00」または「12:00〜24:00」 ではなく、
所定労働時間のちょうど半分の時刻で半日を定義していた場合

事例であれば、
7時〜19時を前半日、19時〜翌7時を後半日と規定。

※煩雑であり論点がずれるため、休憩時間は考慮しない。

そうすれば、
前半および後半どちらで半日年休をとっても、
平均賃金の場合:賃金は、平均賃金×0.5を支払えば足りる。
通常賃金の場合:1労働日分の半分の賃金を支払えばよい。



問4:所定労働時間が「15:00〜23:00」の場合、
午前に半日年休を取ることができるのか?

答:労働基準法(以下、労基法と略。)第39条第1項に
「10『労働日』の有給休暇」
と記述されていることを考慮すると、
労働義務のない午前中は、
0.5『労働日』でないと考えられ、取得できないとすべき。

さらに、
「通常の賃金」を採用している場合は、
「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」が存在しないことになり、
年休取得に対して0円の賃金を支払うのも不合理であり、
有給の要件も満たさないのでなおさらNG。

ただし、
会社から午前中の勤務時間外に対して早出出勤命令があり、
それに答えられないときに半日年休を取得する場合には、
取得可能とすべきでしょう。

そもそも、
問3と同様に、
所定労働時間のちょうど半分の時刻(19時)で半日を区切って定義しておけば、
半日=午前「0:00〜12:00」または午後「12:00〜24:00」 ではなく、
半日=前半日「7:00〜19:00」、後半日「19:00〜翌日7:00」となり、
このようなややこしい問題は生じないことになります。



問5:問4で午前に年休を取れたとして、
その場合に賃金はいくら支払うのか?払わないのか?

答:問4の回答のように、
午前の年休取得はあり得ないことになるので、
賃金の支払い義務も発生しません。

ただし、
会社から午前中の勤務時間外に対して早出出勤命令があり、
それに応じられないときに半日年休を取得した場合には、
平均賃金の場合:賃金は、平均賃金×0.5の賃金を支払う
通常の賃金の場合:その早出出勤命令の正午までの労働時間分の賃金を支払う
ことなります。





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