「社会保険の育児休業による保険料免除を申請しているとき、

育児休業中に会社の要請で、何日か出社する場合に、

どのぐらいの程度であれば、復帰したとみなされないのか?

日本年金機構で基準を示したものとかってあるのでしょうか?」

というご質問が社労士さんからありました。

 

ここでは、この問題について考えてみたいと思います。

 

 

【社会保険法上の「育児休業等」とは?】

社会保険(健康保険と厚生年金保険)では、

育児休業等をしている期間中については、

会社および本人共に社会保険料負担が免除されます。

 

ここでのポイントは、

社会保険法上の「育児休業等」とは、何ぞや?

ということ。

 

社会保険法上の「育児休業等」に該当しなければ、

当然、社会保険料負担は免除されません。

 

健康保険法にて、

保険料免除の根拠条文を確認してみます。

第四十三条の二
・育児介護休業法に規定する育児休業
・育児休業に関する制度に準じて講ずる措置による休業
※ただし、子が3歳になるまで。
・政令で定める法令に基づく育児休業
これらを「育児休業等」という。

第百五十九条
育児休業等をしている社員がいる会社が、役所に申し出たときは、
その育児休業等を開始した日の属する月から
その育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間、
保険料を徴収しない。

※どちらも超意訳・要約してあります。

 

以上より、社会保険法上の「育児休業等」は、

育児介護休業法の定める基準に従う必要があり、

日本年金機構が独自に「育児休業等」の判断基準を示すことはない

と考えられます。

 

 

【育児休業中の就労について】

令和2年12月に「育児休業中の就労について」という

リーフレットを厚生労働省が公表しています。

 

これに従うならば、育児休業中の就労については、

下記の判断基準があると考えることができそうです。

 

育児休業期間中は原則として就業不可であり、

恒常的・定期的に就労させる場合は、

育児休業をしている・与えていることにはならない。

 

たとえば、育児休業開始当初より、

1日4時間、月20日間は勤務する前提で休業する場合や、

毎週特定の曜日または時間に勤務する場合は

育児休業をしている・与えていることにはならない。

 

労使の話し合いにより、

子の養育をする必要がない期間に限り、

「例外的・一時的・臨時的に」就労することが可能

なだけである。

 

たとえば、

・社内でコロナの集団感染が発生。その代替要員として一時的に就労。
・会社の基幹システムにトラブルが発生。緊急対応の為に開発者である社員が臨時に就労。

という程度であれば、育児休業は否定されない。

 

 

【「出生時育児休業」の取り扱い】

令和4年10月に施行される「出生時育児休業」も、

育児介護休業法に規定する育児休業に該当するので、

社会保険料の免除対象期間になります。

 

なお、「出生時育児休業」期間中においては、

・休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
・休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満

という上限規制はありますが、労使協定を要件として、

予めある程度就労することを前提とした育児休業も

OKとされている点は注目するに値します。

 

 

【今回の質問への回答】

冒頭の社労士さんの質問に具体的に回答するならば、

以下のとおり。

 

リーフレット「育児休業中の就労について」に
「就労が月10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、育児休業給付金が支給されます。」とわざわざ記載していること。

同リーフレットの育児休業のNG事例として、
「育児休業開始当初より、あらかじめ決められた1日4時間で月20日間勤務する場合」
とあり、掛け算をすると、4時間×月20日間=月80時間となること。

出生時育児休業中の就労上限が、
「休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分」とされており、
1日8時間で週5日出勤の労働者が、4週間(≒1月間)の出生時育児休業をした場合、
就業日数上限10日、就業時間上限80時間となること。

 

以上を考慮すると、

例外的・一時的・臨時的に就労する場合、

就業日数が月10日(10日を超える場合は80時間)

以下であれば、育児休業を否定されることはなく、

社会保険料は免除されると考えられます。



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