【事例】 ・従業員数は種類別に以下のとおり。 ・1旅館にそれぞれ10人ずつ配置、各旅館40名在籍。
社員数の違いによって、 企業に課せられる義務に、どのような違いが生じるのか? について勉強してみたいと思います。
【基礎知識】 労働法令では、労働者数が多ければ多いほど規制が 増えて厳しくなる傾向にあります。
境目となる人数は、10人、50人および100人ですが、 業種によって取り扱いが異なる場合があります。
また、人数を計算する際に注意すべきこととして、 ・集計単位が、事業所単位の場合と企業単位の場合がある。 を考慮する必要があります。
●節目その1:10人以上 1.就業規則の作成・届け出
「常時使用する労働者」とは、 ・正社員 ・下請け会社の社員
また、 危険な業種は安全衛生推進者を選任、 危険でない業種は衛生推進者を選任します。
●節目その2:50人以上 3.安全管理者および衛生管理者の選任
危険でない業種は、 安全管理者の選任および安全委員会の設置は不要です。
●節目その3:100人超
8.「中小企業者」として取り扱われなくなる 常時使用する労働者が100人を超えると、 中小企業者として取り扱われなくなり、 ・法定超労働が60時間超の場合、割増率アップ という変化が生じます。
業種により人数上限が50〜300人の間で変動し、 資本金が多いと、この人数未満でも「中小企業者」 として取り扱われなくなることに注意してください。
9.障害者雇用納付金の納付義務が生じる 障がい者を雇用しておらず、かつ常時雇用労働者 が100人を超えると、障害者雇用納付金を納付する 義務が生じます。
常時雇用労働者数は、以下のルールで集計します。 ・週30時間を超える労働者:1人とカウント
10.社会保険の特定適用事業所となる 70歳未満の厚生年金保険の被保険者数が、 100人(※令和4年10月以降。現在は500人が境目) を超えると、特定適用事業所と扱われ、 パートの社会保険加入要件のハードルが下がります。
【事例検証】 それぞれ独立した事業所として取り扱った場合と、 まとめてひとつの事業所として取り扱った場合に分けて、 検証してみます。
●それぞれ独立した事業所として取り扱った場合 常時使用する労働者は、各事業所とも40人なので、 1.就業規則の作成・届け出 の義務は生じますが、3.〜7.の義務は生じません。
旅館業=サービス業=危険でないので、 衛生推進者を選任すれば事足ります。
8.中小企業者は、 企業全体の常時使用する労働者は、40人×3事業所 =120人となり、中小企業者に該当しなくなります。
9.障害者雇用納付金は、 ・週30時間を超える労働者=正社員とパートA ・週30〜20時間である労働者=パートB となり、合計75人なので、納付義務は生じません。
10.社会保険の特定適用事業所は、 厚生年金保険の被保険者=正社員とパートAなので、 全員70歳未満だとしても60人なので、特定適用事業所 にはなりません。
●まとめてひとつの事業所として取り扱った場合 常時使用する労働者は、40人×3旅館=120人 なので、2.を除く、下記すべての義務が生じます。 1.就業規則の作成・届け出
8.〜10.は、企業単位なので、 それぞれ独立した事業所として取り扱った場合 と同様の結果となります。
会社の業績が上がり、雇用する社員を増やすのは、 日本社会にとっても喜ばしことではありますが、 社員を増やすことによって、企業に様々な義務が生じる という事実はぜひ頭に入れておきましょう。
また、事業の区切りも大切なのでよく考えましょう。 |