自己都合退職の場合、会社と合意したかどうかで

退職金などの取り扱いを分けて規定していますでしょうか?

 

 

【合意退職と辞職の違い】

労働契約を解約する方法は、以下の4パターン

が考えられます。

 

1.自然退職
定年制などある条件を満たすと、自動的に労働契約が解約される。

2.合意退職
会社と社員が合意の上、労働契約を解約する。

3.辞職
社員の一方的意思により、強制的に労働契約を解約する。

4.解雇
会社の一方的意思により、強制的に労働契約を解約する。

 

「自己都合退職」とは、社員側の意向による退職なので

2.または3.に該当しますが、会社と合意しているか否かで、

法的な取り扱いが異なってきます。

 

 

【退職願と退職届の違い】

退職願は、社員が合意退職を希望する場合

に会社に提出する書類です。

 

退職願は、合意解約の申し込みなので、

社員が、提出しただけでは効力が生じず、

会社側の承諾の意思表示が必要です。

 

したがって、

会社の承諾の意思表示がなされる前であれば、

「改めて考えた結果、退職するのは止めます!」

と社員が取り消しすることが可能となります。

 

承諾した・していないというトラブルを避けるために

会社側も「退職承諾通知書」等により、書面で意思表示

をするとよいでしょう。

 

 

一方、退職届は、

辞職をする場合に会社に提出する書類です。

 

退職届は、社員側の一方的な意思表示なので、

提出した時点で解約告知としての効力が生じ、

事後の取り消しもできません。

 

ただし、

タイトルが退職届となっていても、その内容が、

「○○退職いたしたく、お願い申し上げます。」

というような場合は、実態として退職願であると

考えられるので、取り消しの問題が残ります。

 

また、

「・・・退職いたします。」という退職届であっても

退職期日が明確に書かれていない場合は、意思表示に

瑕疵があると考えられ、無効または取り消しの余地

があるので、ひな型を作成する際は注意しましょう。

 

 

【退職するタイミングの違い】

合意退職の場合、

就業規則の退職手続きルールに則り、お互い協議の上、

退職日を決めれば問題ないでしょう。

 

一方、辞職の場合は、

就業規則の退職手続きルールに則っていなくとも、

民法627条の以下の規定に則っていれば、社員は

退職できてしまいます。

・時給や日給の場合:退職日の2週間前に申し出る
・月給や年俸の場合:退職月の前月の前半までに申し出る(※末締め)

 

就業規則の退職手続き規定は、合意退職と辞職とで

明確に分けて規定しておくことが望ましいですが、

少なくとも、合意退職の退職願の提出期限だけは、

「〇日以上前までに」と明示しておきたいところです。

 

 

【退職金の金額の違い】

退職金額は、

定年や契約期間満了の場合、満額が支給されるものですが、

自己都合退職の場合、減額されのが一般的です。

 

合意退職も辞職も自己都合退職に違いありませんが、

上記のように、法的には異なる性質のものなので、

退職金額(減額率)に差をつけても問題ありません。

 

「人が足りないようなので、もう半年残りましょう。」

のように、会社の事情も考慮して円満に合意退職する場合と、

「さっさと辞めて、給料が高い他社に転職したい!」

のように、会社の事情を全く無視して辞職する場合で、

退職金額が同じというのは不合理な気がしなくもありません。

 

合意の有無により差を付ければ、辞職の防止効果も期待できるので、

就業規則等で取り扱いを分けていない場合は

一度検討してみてははいかがでしょうか?



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