平成30年の働き方改革により、
労働基準法も改正対象とされ、
その法改正に関するQ&Aも厚生労働省から出されています。

その中に、
こんなQ&Aがあります。




●改正労働基準法に関するQ&A 3−25
Q:管理監督者にも年5日の年次有給休暇を
確実に取得させる必要があるのでしょうか。

A:管理監督者についても、年5日の年次有給休暇を
確実に取得させる義務の対象となります。


これは要するに、
管理監督者≒部長や課長といえども、
今後は年5日の年次有給休暇を確実に取得しなければならず、
自分自身や会社にどのような不利益が及んだとしても例外はなく、
法違反をしたら罰則(30万円以下の罰金)の適用がある。
ことを意味しています。

ということを踏まえると以下の事例では、
年次有給休暇を取得しなかったその本人に罰則が適用されてしまうという
まことにへんてこりんな現象が起こるので
息抜きにでも読んでいただけたら・・・、と思う次第です。

※原典はメルマガなので、
あえて顔文字もそのまま残してありますのであしからず。




A社(中小企業)で人事課長(部下なし) を拝命している
Bさん(仕事大好き人間)のとっても残念なお話(●^o^●)



Bさんは上司であるC総務部長から、
「年休取得義務化については、Bさんに全権を一任するので、
当社の年休権利発生日である4月1日までに対応よろぴく!」
と業務指示があったため、 さっそく労働基準法を勉強しました。

そしてBさんは勉強したとおりに、
社員全員から年休取得希望日について各自の意見を聞いた上で、
社員全員の年休取得日について具体的に時季指定を行い、
社員全員に強制的に計画通り年休を取得させていきました。


自分を除いて・・・。


Bさんも労働者には違いないため 年休を取得しなければならず、
イヤイヤながら自分自身の年休取得日を時季指定しましたが、
年休取得義務の責任者であるという立場を悪用し、
自分だけ年休取得指定日もこっそりと、
楽しく溌剌と出勤しちゃっていたのです(p_-) ・・・



時は過ぎて、
今日は改元後の翌年(2020年)の3月27日。

C部長は、
社員全員の年休取得実績を記録した年次有給休暇管理簿を見て、
蒼ざめてしまいました。




・・・、 B課長だけ、1日も年休を取ってないや〜〜〜ん\(◎o◎)/!




そう、Bさんは
社員全員(自分を除く)に強制的に計画通り年休を取得させていたため、
取得モレはあり得ないと思い込み、チェックを怠っていたのです(ー_ー)!!

3月の暦日は、明日から残り4日間。

これから今年度中に5日間の年休を取ることは
安倍首相であっても物理的に不可能です。

※タイムマシンを持つドラえもんが居るので、のび太くんは可能です。

さて、 このような事態が発生した場合、 どうなっちゃうんでしょうかね?
ということをまじめに考えてみたいと思います(V)o¥o(V)




労働基準法第39条第7項を要約すると、
以下のようになります。

「使用者は、有給休暇の日数のうち5日については、
基準日(≒年休の権利が発生する日)から1年以内の期間に、
労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。」

これを読むと、
年休を与えなければならない義務を負っているのは、
条文の主語である「使用者」ということが分かります。

労働基準法は、
か弱い労働者を強欲な使用者から守ることを信条としており、
その多くの条文の主語を「使用者は、・・・」として、
いろいろな義務や制約を使用者に課しています。

使用者が労働者に
年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合
労働基準法第39条第7項に違反することになるため、
労働基準法第120条により、30万円以下の罰金となります(-。-)y-゜゜゜

罰則の対象は「違反行為をした者」なので、
罰金刑が科されるのは、 第39条第7項の「使用者」ということになります。

さて、
この「使用者」は、社長?C部長?それともB課長?
誰になるのでしょうか?(@_@;)



労働基準法では、 「使用者」を
・事業主
・事業の経営担当者
・その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者
と定義しています。

また、
以下の通達(≒行政の通知文のこと。)があります。

「使用者」とは本法(=労基法)各条の義務についての履行の責任者をいい、
その認定は部長、課長等の形式にとらわれることなく各事業において、
本法各条の義務について実質的に一定の権限を与えられているか否かによるが、
かかる権限が与えられておらず、
単に上司の命令の伝達者にすぎない場合は使用者とはみなされないこと。



以上を踏まえると、事例のA社の場合、
社員に年休を取得させる義務および権限がある「使用者」は、
その履行の責任者であるBさんであると考えるのが適当です。

つまり、
Bさんは労働者である自分の抑え切れない労働意欲の結果、
A社の使用者として日本国に怒られることになり、自腹で罰金を支払う。
という非常に残念な結果になってしまうことになります\(◎o◎)/!



厚労省が発行している年休取得義務化のパンフレットに、
「労働基準監督署の監督指導において、 法違反が認められた場合は、
原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、
改善を図っていただくこととしています。」

と書かれています。

なので、
労働基準監督官がA社に臨検に訪れた際に、
Bさんが自分の法違反を指摘した監督官に対して、
「俺は仕事が生き甲斐なんだー!年休なんて取ってられるか、バカヤロー!!!」
などの罵詈雑言を吐き激しく罵倒でもしない限り、
検挙されることはないでしょう( ^^) _U~~



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