社会保険の実務を勧める上で避けて通れない概念 の1つとして、「(賃金・報酬)支払基礎日数」 があります。 支払基礎日数は、 雇用保険のいわゆる失業手当の受給要件を判定する際や 社会保険(健康保険および厚生年金保険)の標準報酬 月額を決定する際に重要な数値です。 失業手当の受給要件を判定する際は、 1月間に11日以上支払基礎日数がないとちゃんと 働いた月(被保険者期間)として扱ってくれません。 また、標準報酬月額を決定する際は、 1月間に17日以上支払基礎日数がないとその月の 報酬月額を除いて標準報酬月額が決定されます。
このように重要な概念である支払基礎日数ですが、 月給制の場合、よ〜く考えてみると実は奥が深い というジジツに気が付きました。 そこで、ここでは、 「月給制は4種類ある。」という目からウロコの事実と、 それに応じた賃金支払基礎日数の算定方法について 以下の事例を通して考えてみたいと思います。 ※これ以降、「社会保険」という言葉は、 健康保険および厚生年金保険を意味するものとします。 【事例】 以下の労働条件および勤務実績の場合に 月給:30万円 ・支払基礎日数とは?その定義について
支払基礎日数を一言で表現するならば、 「賃金の支払いの基礎となった日数」となる。 雇用保険と社会保険では微妙にその取扱いルールが 異なり、月給制の場合、以下のとおり解説されている。 ●雇用保険(業務取扱要領21454(4)イ ニ) c (b)より) ・日曜、休日を除いた期間(≒所定労働日数)に ・欠勤控除される場合
●社会保険(平成18年5月12日 庁保険発第0512001号より) ・欠勤控除される場合
月給制とは、 「1月間働いたらなんぼ。」という賃金決定方式であるが、 欠勤控除の有無により、完全月給制と日給月給制に大別される。 ●完全月給制 役職者など上級社員に適用される場合がある。 完全月給制は休日出勤した場合の取り扱いによって、 以下の2パターンに細分される。 ・パターン1 ・パターン2
●日給月給制 一般社員に広く適用されている。 日割り計算方法により、以下の2パターンに細分される。 ・パターン3 ・パターン4
事例の月給制が上記4パターンのどれに該当するか? により、支払うべき賃金とその支払基礎日数が変化する。 ●パターン1(完全月給制+休日は月給の支払い対象ではない。) ●パターン2(完全月給制+休日も月給の支払い対象である。) ●パターン3(日給月給制+休日は月給の支払い対象ではない。) ●パターン4(日給月給制+休日も月給の支払い対象である。)
世の中には 社会保険の実務参考書が多数出版されていますが、 月給制で欠勤した場合の支払基礎日数の計算方法が、 異なる回答が記載されており、 長い間、労働法オタク内で論争のタネになっていました。 今回の気付きにより、 その論争に一応の説明がついたと考えています。 |