最終更新日:令和7年8月10日
社用車規程作成の依頼を受けたので、
インターネットや書籍でサンプル規程を探してみたのですが、
厚生労働省のモデル就業規則に載っているはずもなく、
就業規則関連書籍にも見当たりませんでした。
かろうじて、
インターネット上に数社の規程を見つけたのみです。
ここでは、
社用車管理規程はどうあるべきか?について、
カラカマが試行錯誤した結果をシェアしたいと思います。
<業務車両使用時の基礎知識>
1.社員に車を運転させる際に会社が負う責任
●安全配慮義務(労働契約上の付随的義務)
会社には、社員の安全に配慮する義務があるので、
運転する社員に必要な教育や車両の整備等を行う義務がある。
●使用者責任(民法第715条)
業務中の事故により、第三者に損害を与えた場合、
会社は運転者とともに第三者に対して賠償責任を負う。
●運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)
社用車の管理者として、業務外も含めて第三者に損害を与えた場合、
会社は運転者とともに第三者に対して賠償責任を負う。
2.社員に車を運転させる際に関係する保険制度
●自動車賠償責任保険(強制保険)
・加入しないと、車検を受けられない。
・補償されるのは、人身(同乗者含む)事故限定。
・運転者の悪意(故意が明白であること)による事故は対象外。
●自動車保険(任意保険)
・対人賠償は業務中の社員は対象外。
・対物賠償は会社が使用・管理する財物の破損は対象外。
・人身傷害は無免許・酒気帯び・薬物使用等による運転者本人の死傷は対象外。
業務中の労働者が事故に巻き込まれた場合、
労災保険も関係してくることになります。
3.安全運転管理者
・一定数以上の自動車を使用する事業所で選任義務が生じる。
・自動車には社有車だけでなく、リース車やレンタカーも含まれる。
・運転開始前および終了後のアルコールチェック義務あり。
ちなみに、アルコールチェックは、
安全運転管理者の対面による実施が原則ですが、
運転者に携帯型アルコール検知器を携行させた上で、
携帯電話で運転者と直接対話できる状態で、
運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、
アルコール検知器による測定結果を報告させる方法
でもよいとされています。
<社用車規程作成時に考えるべきこと>
1.使用目的(使用制限)
社用車の主たる用途は、当然業務目的でしょうが、
通勤に利用したり、私用で利用することも考えられます。
会社には、
@安全配慮義務、A使用者責任およびB運行供用者責任
があるので、たとえば、
社員が私用目的で会社に無断で社用車を運転した際に
起きた事故であっても、会社の車両管理がずさんな場合、
会社の責任が問われることもあり得ます。
リスク管理の観点からすれば、
社用車の使用目的は、業務に限定すべきであり、
通勤に利用させる場合は許可制が望ましいと考えます。
私用での利用は、絶対禁止とすべきでしょう。
2.運転者および同乗者の制限
社用車の運転者は、運転免許を有する社員のうち、
会社が許可した社員に限定すべきです。
運転免許の取り消しまたは停止処分があり得るので、
毎日乗車前に免許証確認をしたいところですが、
実務的に困難な場合は、
少なくとも免許更新の都度、提出を求めるべきでしょう。
同乗者は会社の社員に限定し、社外者の同乗は禁止すべきです。
社外の業務関係者の同乗が想定される場合は管理者の許可制とし、
運転者の家族・親族等は同乗させない方が無難です。
3.費用の負担
交通事故や交通違反による罰金、科料、反則金は、
いかなる事由があろうとも運転者が負担すべきです。
この他にも、
以下の事例に該当する場合に会社が損害を受けたときは、
会社は運転者に対して会社の受けた損害の全部または一部
の賠償を請求することができる旨を明記しておくべきでしょう。
・運転者の故意または過失に基づく事故の場合
・通勤中に事故が発生した場合
・会社が定めた禁止事項に反する行為に関連して事故が発生した場合
<車両管理責任者も選任すべき>
ある会社で、
無車検(自賠責保険もなし)状態の社用車を
半年以上に渡って使用してしまいヒヤッとした
という事例がありました。
運転者は、
社用車の車検は会社が責任を持ってやってくれているはず
と思い込みがちです(カラカマもそうでした。)。
車両の維持管理の責任者を決めておかなかった場合、
「だれかがやるだろう。」となってしまった結果、
だれもやっていないということが発生しかねません。
なので、法定の要件ではありませんが、
社用車の点検整備、車検および自動車保険等、
車両の維持管理のために必要な事項を行う責任者として
「車両管理責任者」を選任することをおススメします。
安全運転管理者は、
安全な運転を確保するために必要な業務を行いますが、
車両管理責任者を兼任させてもよいでしょう。
実際に社用車管理規程を作ってみて気が付いたのは、
想定される選択肢が多いのでサンプル規程は公表しづらい
のだろうなということ。
社用車管理規程は、それぞれの会社の実情を考慮
したうえで、自作するしかなさそうです。
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