まず、
「休日」について再確認してみる。

いきなり、
大量に条文を引用するが
飛ばしていただいても構わない。



労働基準法
(休日)
第三十五条 
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
A 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。


(時間外及び休日の労働)
第三十六条 
使用者は、当該事業場に、
労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、
労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者
との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、
第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間
(以下この条において「労働時間」という。)
又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、
その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。


(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により
労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、
その時間又はその日の労働については、
通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内
でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。


労働基準法の一部改正の施行について(平成六年一月四日 基発第一号)

3 割増賃金率
(1) 趣旨
時間外労働及び休日労働に対する割増賃金の支払いは、
通常の勤務時間とは違うこれら特別の労働に対する労働者への補償を行うとともに、
使用者に対し、
経済的負担を課すことによってこれらの労働を抑制することを目的とするものであるが、
割増率については、
今後、実態をみきわめつつ時間外労働、休日労働に対する
労働者の意識変化等に適切に対応して、
その段階的な引上げを図っていく必要があることから、
その率を法でなく政令で定めることとしたものであること。
休日労働については、
週休二日制普及の流れの中で週一日の法定休日確保の重要制等にかんがみ、
今回、その引上げを図ったものであること。

(2) 具体的な率
時間外労働に対する割増率は現行どおり二割五分以上の率とし、
休日労働については三割五分以上の率とするものであること。

(3) 具体的対応
休日労働に対する割増賃金率が
今回三割五分以上の率に引き上げられたところであるが、
この趣旨は法第三五条に規定する週一回又は四週間四日の法定休日
に労働させたときの割増賃金率を規定したものであること。
法第三五条に規定する週一回又は四週間四日
を超える日数の休日を設定している事業場において、
今回の改正に伴い、
休日について労働したときに
一律に三割五分以上の率で計算した割増賃金を支払うことを定める場合も考えられ、
また、
休日のうち、週一回又は四週間四日の休日について労働をしたときには
三割五分以上の率で計算した割増賃金を支払い、
その他の休日は三割五分未満の率で計算した割増賃金を支払う
等の定めをする場合も考えられるが、
後者の場合には、
労働条件を明示する観点から、就業規則その他これに準ずるものにより
三割五分以上の割増賃金率の対象となる休日が明確になっていることが望ましいこと。
この場合、
休日のうち、最後の一回又は四日について
三割五分以上の率で計算した割増賃金を支払うことを
就業規則その他これに準ずるもので定めることは
上記休日を明確にしていることと認められるものであること。
また、
上記のように三割五分以上の割増賃金率の対象となる休日を定めた事業場において、
週一回又は四週間四日の休日が確保されないこととなった場合に、
三割五分以上の率で計算した割増賃金を支払うと定めた休日に
当該割増賃金が実際に支払われており、
これが支払われた日数と確保された休日の合計日数が
週一回又は四週間四日以上である場合には、
法第三七条第一項違反として取り扱わないものであること。
なお、
法定休日に労働させる場合には、
休日労働に関する法第三六条の規定に基づく協定の締結及び届出が
なされている必要があることは言うまでもないこと。

(4) 時間外又は休日労働が深夜に及んだ場合の取扱い
時間外又は休日労働が深夜に及んだ場合には、
それぞれ五割以上の率、六割以上の率となるものであること。

「休日」の具体的特定についての指導
(昭和二三年五月五日 基発六八二号 昭和六三年三月一四日 基発一五〇号)

1 法第35条は必ずしも休日を特定すべきことを要求していないが、
特定することがまた法の趣旨に沿うものであるから
就業規則の中で単に1週間につき1日といっただけではなく
具体的に一定の日を休日と定める方法を規定するよう指導されたい。

2 常時10人未満の労働者を使用する事業においても
具体的に休日を定めるよう指導されたい。


法定の4週4日以上の休日を確保した上で休日出勤させる場合にも、
時間外・休日労働協定(36協定)は必要か(昭和二三年一二月一八日 基収三九七〇号)

(問)
休日労働について4週間に4日以上の休日があり、
その基準以上の休日に労働させ4週間に4日の休日は確保する場合、
協定届出の義務はないものと解するが如何。
(答)
見解の通り。


労働基準法第35条の「休日(以下、法定休日)」を要約すると、
以下の通り。

●週1回の休日が「法定休日」であり、週2回以上の休日は「法定休日」ではない。

●法定休日労働は36協定の「休日労働」が適用され、
法定外休日労働は36協定の「時間外労働」が適用される。

●時間外労働には限度基準が存在するが、休日労働には限度基準が存在しない。

●時間外労働の割増賃金率は、0.25
休日労働の割増賃金率は、0.35

●法定休日労働させた場合、
36協定にて「休日労働」に関して締結し、0.35の割増率の割増賃金を支払っていれば、
いわゆる振替休日を付与しなくとも、第35条違反には問われない。

●法定休日は特定されていることが望ましい。



具体例で考えてみる。

【具体例その1】
所定労働時間が1日8時間で、所定労働日が5日間の場合
1週間の起算日は日曜日とする。

CASE 法定休日 曜日 時間外・休日
労働時間合計
割増賃金
実労働時間 8 10 8 12 10 8 0
@ 特定なし 時間外労働 0 2 0 4 8 8 - 22 22 5.5 5.5
休日労働 - - - - - - 0 0 0.0
A 日曜特定 時間外労働 - 2 0 4 2 8 0 16 24 4.0 6.8
休日労働 8 - - - - - - 8 2.8
B 水曜特定 時間外労働 0 2 0 - 2 4 0 8 20 2.0 6.2
休日労働 - - - 12 - - - 12 4.2

まったく同じ労働内容であるにも関わらず、
休日の特定が異なるだけで、
時間外労働時間および休日労働時間が異なるという面白い現象が生じる。

CASEBでは、
特定した法定休日に最も長時間の労働をしているが、
休日労働割増賃金を支払っていれば適法となり、
この労働時間は時間外労働時間にはカウントされない。


CASEAおよびCASEBは、
休日を特定した結果、
ともに法定外休日はあるが法定休日がない。

このような場合、
法定外休日が法定休日に転化するのか?
という疑問が生じるが、
法定休日労働の割増賃金率の方が高いため、
転化してしまうと割増賃金が減ってしまうこと、
および、
実態としては、週1回の休日は確保できていること
を考慮すると転化させるべきではないと考える。



平成30年4月現在、
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」
の法律審議が国会にて行われているが、
この法律における時間外労働の上限は、
以下の通り。

【原則】
1月間で45時間以下、1年間で360時間以下(休日労働時間を含まない。)

【臨時的な特別な事情がある場合】
1月間で100時間未満(休日労働時間含む。)
1年間720時間以下(休日労働時間含む。)
1月間で45時間を超えることができる月数は6回以内。
連続する6月間の月平均は80時間以下(休日労働時間含む。)


この法改正が成立したとすれば、
休日の特定の仕方によって、
適法な総労働時間の上限が異なってくる
という事実は重要である。


以上を踏まえて、
副業・兼業時の休日の与え方を考えてみる。



労働基準法
(時間計算)
第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。


労基法第38条は、
労働時間の通算規定であり、
法定休日は一切関係ない…わけではない。

「休日」は、
労働契約において労働義務がない日であるから、
=0:00〜24:00に労働時間がゼロである日ともいえる。


具体例で考えてみる。

【具体例その2】
A社とB社で副業する田中さん
A社およびB社ともに所定労働時間が1日4時間で、所定労働日が5日間
A社の休日:日、月曜日
B社の休日:日、木曜日
田中さんは午前にA社、午後にB社にて労働する。
1週間の起算日は日曜日とする。

CASE@:A社およびB社ともに法定休日を日曜日と特定した場合
CASEA:A社およびB社ともに法定休日を特定しなかった場合
CASEB:A社がB社の労働日である月曜日を法定休日と特定した場合
CASEC:お互いの労働日を法定休日(A社:月曜日、B社:木曜日)と特定した場合

CASE   曜日

週計

総合計
実際の労働時間 A社 4 6 8 6 4 28 50
B社 6 4 4 4 4 22
@ 時間外労働
割増賃金の
支払対象となる
労働時間
A社 0 0 2 0 0 4 6 12
B社 0 0 0 2 4 6
A A社 0 2 0 0 4 6 12
B社 0 0 0 2 4 6
B A社 0 2 0 2 4 8 14
B社 0 0 0 2 4 6
C A社 0 2 0 2 4 8 12
B社 0 0 0 2 2 4

※法:法定休日 休:法定外休日


まず、
2社が同じ日を法定休日と特定すること
または
2社が別々の日を法定休日と特定すること
は問題があるのか?

労基法第38条は、
あくまで 労働時間の通算規定であり休日の規定ではないため、
休日をどの日に特定しようがあるいは特定しまいが
各社の自由であると考えられる。


CASE@の場合、
法定休日を同日(日曜日)に特定しているため、
その他の日(月〜金)の労働時間管理は、
時間外労働に該当するかどうかにのみ注意して通算すればよい。


CASEAの場合、
法定休日が明確ではないが、
2社ともに休日としており一切の労働義務のない日曜日を
法定休日として考えるのが合理的である。

したがって、
CASEAもCASE@と同様の結果とするべきである。


CASEBの場合、
A社がB社の労働日である月曜日を法定休日に特定しているが、
A社の法定休日はそれでも月曜日と考えるべきである。
とすると、
B社での月曜日の労働時間は、
A社にとっては休日労働時間としてカウントすべきである。
一方で、
B社にとっては通常労働日の労働としてカウントすべきである。

なお、
B社がA社の法定休日に労働させているからといって、
B社にA社の休日労働割増賃金の支払いを義務付けるのは
合理的とは言えない。


CASECの場合、
それぞれが、他社の労働日に法定休日を特定しているため、
自社の法定休日における他社での労働時間は、
自社にとっては休日労働時間としてカウントすべきである。


以上を踏まえると、
副業・兼業時の休日は、
同一日を法定休日として特定する
または、
お互い法定休日を特定しない場合は週最低1回は同一日を休日とする
のどちらかを選択すべきである。

他社の労働日を自社の法定休日として特定したり、
1週間の間でお互いの休日がまったく重ならなかったり
という場合は、
実務上とても対応できるシロモノではないと考えられる。



トップページへ戻る。