事実は小説よりも奇なりと申しますが・・・、

以下の事例は実際にあった話です。


【事例】

●警備業を営むA社
●労働日は、月〜金曜日と規定
●「休日は、土曜日および日曜日」と規定(法定休日は特定されていない。)
●始業時刻8:00、終業時刻17:00(休憩時間1時間)
●1日の所定労働時間:8時間
●1週間の所定労働時間:40時間
●1週間の起算日は特に定めなし。

《Bさんの1週目の勤務状況》

曜日 始業時刻 終業時刻 休憩時間 実働時間
休日     0:00
8:00 17:30 1:00 8:30
8:00 17:00 1:00 8:00
8:00 17:00 1:00 8:00
8:00 17:00 1:00 8:00
9:00 18:00 1:00 8:00
土1 8:30 17:00 1:00 7:30
土2 21:30 翌日4:30 1:00 6:00

※「土曜日2」は、臨時の呼び出しに対応したもの。


《Bさんの2週目の勤務状況》

曜日 始業時刻 終業時刻 休憩時間 実働時間
       
8:00 17:30 1:00 8:30
8:00 17:00 1:00 8:00
8:00 17:00 1:00 8:00
8:00 17:00 1:00 8:00
8:00 17:00 1:00 8:00
8:00 17:00 1:00 8:00

※日曜日の4:30以降は、休務。
繁忙期のため、土曜日も出勤した。



上記の場合、
割増賃金の支払い対象となる
1日の時間外労働時間帯、
1週間の時間外労働時間帯、
休日労働時間帯、
深夜労働時間帯は、
それぞれどこか?

こちらの表を印刷して
考えてみてください。

ただし、
4週4休日規定は、
考慮しないものとします。





【参考規定等】

@ 法定休日は、交代勤務および旅館業の例外を除き、
必ず0時〜24時でなければならなく、連続24時間ではダメ。
(昭和23年4月5日 基発535号他)


A 法第35条は必ずしも休日を特定すべきこと
を要求していない。(昭和63年3月14日 基発150号)


B 一週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、
日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいうものであること。
(昭和63年1月1日 基発第1号、婦発第1号)


C また、一日とは、
午前〇時から午後一二時までのいわゆる暦日をいうものであり、
継続勤務が二暦日にわたる場合には、
たとえ暦日を異にする場合でも一勤務として取り扱い、
当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、
当該日の「一日」の労働とするものであること。
(昭和63年1月1日 基発第1号、婦発第1号)


D 法定休日である日の午前0時から午後12時までの時間帯に
労働した部分が休日労働となる。
したがって、
法定休日の前日の勤務が延長されて法定休日に及んだ場合
及び法定休日の勤務が延長されて翌日に及んだ場合のいずれの場合においても、
法定休日の日の午前0時から午後12時までの時間帯に
労働した部分が3割5分以上の割増賃金の支払を要する休日労働となる。
(平成6年5月31日基発331号)

※ただし、この場合でもCは適用されるので、
始業時刻の属する日の労働として1勤務の労働として
カウントすることに変わりはない。


E 翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して、
法第37条の割増賃金を支払えば、
法第37条の違反にはならない。
(S26.2.26基収3406号、S63.3.14基発150号、H11.3.31基発168号)

※この場合、翌日の始業時刻以降は、
新たな1勤務の労働が開始されたと解釈すべきなのだろうが、
Cを適用し、
割増賃金は支払わないが前日の労働が相変わらず継続している
と解釈する余地もある。


F 毎週1回は必ず休日が与えられなければならないのだから、
暦週の日曜日から土曜日までの間に1回も休日がない場合は、
週の最終日の土曜日を休日(法定休日)とみなすのが妥当と判断された。
(東京地判平20・1・28、日本マクドナルド事件)


G 土曜日と日曜日を休みとする週休2日制で、
法定休日を特定していなかった会社について、
暦週の後順の土曜日が法定休日だとした会社側に対して、
「旧来からの休日である日曜が法定休日であると解するのが
一般的な社会通念に合致する」として、
日曜日を法定休日とした事例もある。
(東京地判平23・12・27、HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド賃金等請求事件)

※今回はFを採用するが、Gの解釈もあることに注意。

 

 

【唐鎌が考えた答え】

●休日には、始業時刻が設定されていないし、
存在しないはず(当然終業時刻もない)。

※通常の労働日の始業時刻を引用するという反論が予想されるが、
始業時刻が一定でない業種の場合、
始業時刻を特定できないため、不合理な反論である。


●労働日でもなく、法定休日でもない「日」は、
「法定外休日(≒所定休日)」になるしかない。


●法定外休日(≒所定休日)は、法令に明確に定義・規定されていない。
労働基準法コンメンタールには、
「週1回の(法定)休日のほかに使用者が(勝手に)休日と定めた日」
が法定外休日とされている。

ということは、
法廷外休日は、0時〜24時である必要もなく、
連続24時間である必要もない。
1時間だけでも、法定外休日たり得る。


●「1週間に1回しか休日がなかった場合は、
法定外休日よりも、法定休日が優先されるべき!」
という反論も不合理である。

なぜなら、
法定休日を日曜日と特定していた場合、
日曜日に出勤し、最終日の土曜日に休んだとしても、
土曜日は「法定外休日」でしかなく、
日曜日は「法定休日出勤」ではあることに変わりはない。

もし、
土曜日を休んだことによって、
法定休日が日曜日から土曜日に自動的に転化してしまうと、
休日労働の割増賃金を支払う義務がなくなってしまう。

これでは、
労働者の割増賃金獲得の期待に反する行為であり、
不合理である。


●1労働日が、24時間を超える例外的な「労働日」は、
継続勤務が二暦日にわたった場合に発生するが、
24時間に満たない例外的な「労働日」は、
EにBを適用しない場合に発生し得る。

たとえば、
完全徹夜の2日目は、始業時刻が9時であれば、
この労働日の「1日」は9時〜24時=15時間となる。

 

以上を踏まえて、
1週目の土曜日から翌日である2週目の日曜日に
引き続く勤務を検証してみる。

土曜日の労働は、
参考規定Cより、
土曜日8時30分〜日曜日4時30分である。

日曜日は、
何の日に当たるか?であるが、
0時〜4時30分に労働しているため、
「法定休日」とすることはできない。

また、
0時〜4時30分の労働は、
土曜日の労働に吸収されるため、
「労働日」にもならない。
残されるのは、
「法定外休日(≒所定休日)」しかない。

したがって、
以下の表のように考えるべきである。

  1日はいつからいつまで? 何の日にあたるのか?
1週目の
土曜日
0:00〜翌日4:30間の計26:30 労働日
※1週目の日曜日が法定休日なので、
正確には、法定外休日労働である。
2週目の
日曜日

4:30〜24:00間の計19:30

法定外休日
※暦日でないため、法定休日になれず
法定外休日にしかならない。

2週目の日曜日は
法定外休日なので、法定休日になり得ないため、
結局2週目の法定休日は土曜日となり、
休日労働の割増賃金が発生する。

表にまとめると、こちらのとおりとなる。



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