企業を運営していると、

・休憩時刻直前に上司や顧客から電話が来る。
・着手中の仕事が一段落するまで業務を続行する。
・トラブルが発生し、休憩どころではない。

等の理由により、

予定通りの時刻に社員が休憩できていない

ということが、まま発生します。

 

この場合に、企業が取りがちな対応策として、

・休憩できなかった時間数分、給料を払う。
・休憩できなかった時間数分、終業時刻を早める。
・他の時刻に休憩を与える。

等が考えられますが、これって適法なのでしょうか?

 

 

 

【休憩の基礎知識】

労働基準法第34条「休憩」は、

・労働時間6時間超なら45分、8時間超なら1時間
・労働時間の途中に与える。
・一斉に与える。
・労使協定があれば一斉に与えなくてもOK。
・自由に利用させる。

という程度のルールなので、極めて単純そうですが、

実はそうでもありません。

 

 

【一斉付与の単位】

昭和12年9月の行政通達によれば、

一斉付与の単位は、作業場単位ではなく、

労働基準法の適用単位である事業場単位とされており、

中小企業なら、会社単位とほぼ同義となります。

 

したがって、

昼休みの電話番の為、総務部だけ他の部署と異なる

休憩時刻を設定することは、違法ということになります。

 

 

 

【労使協定は個別の時刻設定ができるだけ】

ただし、

休憩を一斉付与しない旨の労使協定を締結すれば、

上記の総務部の休憩時刻設定は可能となります。

 

ここで、注意しなければならないのは、

たとえ労使協定を締結したとしても休憩を与えなくて

よくなるわけではないということ。

 

36条の労使協定(いわゆる36協定)があれば、

法定時間外労働させたり、法定休日労働させたり

することができますが、34条の労使協定は、

休憩の個別付与をすることはできますが、

休憩を与えなくてよくなるわけではありません。

 

たとえ、

休憩を与えなかった時間数分の賃金を支払ったとしても、

休憩を与えなければ、やっぱり違法なのです。

 

 

 

【休憩時刻の変更規定がないと、変更できない。】

労働基準法には、就業規則や労働条件通知書には、

・始業・終業の「時刻」
・休憩「時間」
・休日

について記載しなければならないと規定されています。

 

ここで、気が付いてほしい点として、

「時刻」と「時間」の意味の違いが挙げられます。

 

労働基準法では、

明確に「時刻」と「時間」を使い分けています。

 

時刻とは、時(とき)の「位置」を意味するのに対し、

時間とは、時の「長さ」を意味します。

 

ということは、就業規則や労働条件通知書には、

始業・終業の「時刻」と休憩「時間」を規定すれば

事足りるので、

・始業時刻:9時
・終業時刻:18時
・休憩時間:1時間(時刻は未定。)

でも合法ということになります。

 

上記の労働条件の場合、

一斉に付与する必要はありますが、仕事が一段落した

任意の時刻に休憩を与えることが可能となります。

 

ですが一般的には、

就業規則等に休憩時刻を明示している場合が多いので、

「業務の都合によっては、休憩時刻を変更することがある。」

という規定を設けておくとよいでしょう。

 

 

 

【事例検証】

上記の事実を踏まえ、

冒頭の予定通りの時刻に社員が休憩できていない

場合の対応策を検証してみます。

 

・休憩できなかった時間数分、給料を払う。
⇒如何なる手段をもってしても、
休憩を与えないはNGでしたよね!

・休憩できなかった時間数分、終業時刻を早める。
⇒休憩は労働時間の途中に与える必要があるので、
終業時刻を早めても、NGとなります!

・他の時刻に休憩を与える。
⇒以下の3パターンに分けて考える必要があります。

パターン1:労使協定のみ有り
⇒労使協定は一斉付与しなくてもよくなるだけなので、
予定通りの時刻に与える必要は残るため、NGです!

パターン2:変更規定のみ有り
⇒事業場全体で休憩時刻を変更することは可能ですが、
一部署、一社員のみ変更することは、NGです!

パターン1:労使協定と変更規定の両方有り
⇒業務の都合に応じて、社員個人ごとに任意の時刻に
休憩を与えることができます!

 

 

余談ですが、

労働時間(第32条)、休憩(第34条)および休日(第35条)

のうち、

休憩のみ算定期間が1勤務なのか?1日なのか?

条文上、明確になっていません。

 

第32条
・「一週間」について四十時間
・「一日」について八時間

第35条
・「毎週」少くとも一回の休日
・「四週間」を通じ四日以上の休日

第34条
・労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分
・八時間を超える場合においては少くとも一時間
「」部分がない!

 

泣く子も黙る菅野和夫大先生の著書「労働法」では、

「1日」の労働時間で考えていますが、

厚生労働省労働基準局編「労働基準法」では、

「1勤務」の労働時間で考えています。

 

「1勤務」の定義がこれまた不明なので、

謎は深まるばかりです・・・。



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