賃金支払い形態は、

月給制、日給月給制、日給制、時給制および年俸制など

企業の経営方針によって様々な形態が存在します。

賃金支払い形態のうち、「日給制」と「日給月給制」は

似て非なる賃金支払い形態であり、以下の違いがあります。

●日給制
賃金を労働した日数によって算定し、支払う制度。

●日給月給制
賃金を月を単位として算定するが、遅刻、早退、欠勤等により、
所定の労働をしなかった場合には一定額を差し引いて支払う制度。
月給制の一種とされる。

まぁ要するに、日給制が加算方式なのに対し、

日給月給制は、減算方式ということですね。

 

上記を踏まえ、以下の労働条件を想定してみてください。

●ケース1:日給制
・所定労働時間:1日8時間
・所定労働日数:毎月16日出勤とし、シフトにより決定
・日給:1,0000円

●ケース2:日給月給制
・所定労働時間:1日8時間
・所定労働日数:毎月16日出勤とし、シフトにより決定
・月給:160,000円 遅刻、早退および欠勤の場合は、
所定労働時間を基準に減額する。

どちらのケースも実質的な労働条件はまったく同じ、

時給単価も同額の1,250円であり、

どのような勤務実績であっても、支給される賃金額は

必ず同額になります。

異なるのは、賃金支払い形態だけ。

 

さて、

結果として同じ労働条件であっても、どちらかが他方より

有利に働く・お得になるということがあり得るのでしょうか?

ここでは、日給制と日給月給制はどちらがお得か?

について、法律別に検証してみたいと思います。

・労働基準法(労災保険法含む)

・雇用保険法

社会保険(健康保険法・厚生年金保険法)

 

 

【いきなり結論:日給制の方がお得♪】

・労働基準法(労災保険法含む。)
・雇用保険法
・社会保険(健康保険法+厚生年金保険法)

の3つに分けて、日給と月給の違いを検証したところ、

労基法と社会保険では違いがみられませんでしたが、

雇用保険の賃金日額算出時には、日給制の方がお得♪

だという結論に至りました。

ただし、

あくまで本件事例のように実質的にまったく同じ

労働条件であった場合限定なのでお間違えなく。

以下では、

この結論に至るまでの過程を解説していきます。

 

 

【労働基準法(労災保険法含む。)】

労働基準法上、日給と月給で扱いが異なる規定は、

・平均賃金の算出時
・割増賃金単価の算出時
・年休取得時に支払ういわゆる「通常の賃金」の算出時

の3つと考えました。

平均賃金は、

・休業手当
・解雇予告手当
・労災保険の給付基礎日額

等の基礎となる重要な賃金額です。

日給制の場合、平均賃金が異様に低くなってしまう

ことを防止するための最低保障ルールがありますが、

月給制の一種である日給月給制には適用されません。

ですが、昭和30年の行政通達により、

日給月給制の場合も日給制と同様の金額となるような

最低保障ルールが設定されている為、損得が生じない

結果になります。

 

割増賃金単価および年休の「通常の賃金」の算出時は、

日給や月給額を所定労働時間数や所定労働日数で割り算

するため、やはり損得が生じません。

 

 

【雇用保険法】

雇用保険法上、日給と月給で扱いが異なる規定は、

・雇用保険法上の支払基礎日数
・賃金日額の算出時

の2つと考えました。

支払基礎日数は、

いわゆる失業手当等の受給要件を判定する際に用いる

「被保険者期間」に関連する重要な日数です。

日給制の場合の支払基礎日数は、

ズバリ出勤日数です。

一方、日給月給制の場合の支払基礎日数は、

「欠勤して給与を差し引かれた場合は、その控除後の

賃金に対応する日数」とされており、

ケース2の場合、所定労働日数−欠勤日数です。

所定労働日数−欠勤日数=出勤日数なので、

支払基礎日数に有利不利は、発生しないことになります。

 

賃金日額は、

・失業手当
・高年齢雇用継続給付金
・育児・介護休業給付金

に直結する重要な賃金額です。

日給制の場合、賃金日額が異様に低くなってしまう

ことを防止するための最低保障ルールがありますが、

月給制の一種である日給月給制には適用されません。

ここで重要なのが、

労基法の平均賃金にはあった日給月給制の救済ルールが

雇用保険の賃金日額には存在しない。ということ。

出勤日数が少なければ少ないほど、

日給制の賃金日額の方が高くなる可能性があり、

結果として日給制の方がお得ということになります。

 

 

【社会保険(健康保険法・厚生年金保険法)】

社会保険法上、日給と月給で扱いが異なる規定は、

・社会保険法上の支払基礎日数
・資格取得時の報酬月額の決定方法

の2つと考えました。

支払基礎日数は、定時決定や随時改定の対象月となるか?

の判定時に用いる重要な日数です。

日給制の場合の支払基礎日数は、

ズバリ出勤日数です。

一方、日給月給制の場合の支払基礎日数は、

「就業規則、給与規程等に基づき事業所が定めた

日数から欠勤日数を控除した日数」とされており、

ケース2の場合、所定労働日数−欠勤日数です。

所定労働日数−欠勤日数=出勤日数なので、

支払基礎日数に有利不利は、発生しないことになります。

 

資格取得時の報酬月額の決定方法は、

月給と日給では法律の条文上まったく異なる決定方法が

規定されており、大きな違いが生じるべき論点です。

ですが、

現在の実務においては、法律条文と異なる取り扱いが

横行しているため、結果として違いが生じません。





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