最終更新日:令和7年8月10日


会社は、

社員が休業(まるまる1日仕事を休むこと)をした場合、

「労働者死傷病報告(以下、「死傷病報告」と略。)」

という手続きを行う義務があります。

 

令和7年1月1日から、

死傷病報告の電子申請が義務化されましたが、

不肖カラカマ、労災保険と死傷病報告の違いが

ちゃんと理解できていませんでした。

 

ここでは、

労災保険申請=労働者死傷病報告ではない!

についてアタマを整理してみましょう。

 

 

<労災保険は「業務災害」が対象である>

労働安全衛生法第2条では、

「労働災害」について以下の通り定義しています。

 

労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、
蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、
労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。

 

労災保険は、業務上の事由≒労働災害による

労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して

必要な保険給付を行います。

 

要するに、

労災保険が適用されるかどうかのポイントは、

ケガや病気が業務に起因しているかどうか?

ということになります。

 

 

<死傷病報告は「死亡または休業」が対象である>

死傷病報告は、

労働安全衛生規則第97条に以下の通り規定されています。

 

労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくは
その付属建物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、
又は休業したときは、遅滞なく報告しなければならない。

 

死傷病報告のポイントは、

労働災害によるケガや病気だけでなく、

社員が会社内でケガや病気をした場合を含めて、

死亡または休業をしたときに報告義務が生じる

ということになります。

 

 

<具体例で考えてみよう!>

労災保険と死傷病報告の関係は、

XY座標で考えるとわかりやすいと思います。

 

X(ヨコ)軸は、

死傷病報告義務であり、死亡または休業したかどうか?

で分けます。

 

Y(タテ)軸は、

労災保険適用であり、業務に起因しているかどうか?

で分けます。

 

第1象限(右上):労災保険対象かつ死傷病報告義務あり

第2象限(左上):労災保険対象だが死傷病報告義務なし

第3象限(右下):労災保険対象外だが死傷病報告義務あり

第4象限(左下):労災保険対象外かつ死傷病報告義務なし

の4パターンとなります。

 

具体例で考えてみましょう。

 

【具体例1】
昼休み中に会社の駐車場で同僚とキャッチボールしている際に
ウッカリ転倒し腰を骨折。3ヶ月間仕事を休んだ。

死傷病報告ですが、

会社内でのケガで3ヶ月間仕事を休んでいるので、

死傷病報告の提出義務があります。

 

次に労災保険ですが、

会社内での休憩時間中の傷病も対象となりますが、

積極的な私的行為をしていた場合は認められない

ことがあり、この事例は対象外となりそうです。

 

したがって、

具体例1は、第3象限(右下)となるでしょう。

 

 

【具体例2
会社の通勤バスの乗降ステップでつまづき膝を負傷。
その日以降1ヶ月間は現場仕事でなくデスクワークを行った。

死傷病報告ですが、

本来の業務ではないもののデスクワークをしており、

休業していないため、死傷病報告の提出義務はありません。

 

次に労災保険ですが、

通勤途中であっても会社施設内に立ち入った後に、

ケガをした場合は、労災保険の対象となるので、

この場合は対象となりそうです。

 

したがって、

具体例2は、第2象限(左上)となるでしょう。

 

 

【具体例3
就業中に同僚とケンカになり殴られて顔を打撲。
3日間仕事を休んだ。

死傷病報告ですが、

就業中のケガで3日間仕事を休んでいるので、

死傷病報告の提出義務があります。

 

次に労災保険ですが、

就業中のケガなので、対象となりそうです。

 

したがって、

具体例3は、第1象限(右上)となるでしょう。

 

ただし、

ケガの原因が、仕事の進め方などではなく、

異性関係の痴話げんかなど明らかに業務に起因していない

と考えられる場合は、労災保険は対象外となり、

第3象限(右下)となるでしょう。

 

 

ちなみに、労働基準監督署を訪問すると、

「労災隠しは犯罪です。」というポスターを見かけますが

このポスターの本当の意味は以下の通りです。

 

業務災害による病気やケガに対して、・・・

1.労働者が健康保険証を使って治療を受けた。
⇒健康保険法違反 

2.労災保険の申請をせず、かつ会社が医療費や
療養期間中の休業補償を負担しなかった。
⇒労働基準法違反

3.労働者死傷病報告の提出を怠ったり、ウソの報告をした。
⇒労働安全衛生法違反




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