ひと昔前までは、罹ったら仕事を辞めざるを得ない ようなガン等の難病も、医療の進歩により仕事を続け ながら、治療をすることが可能となってきています。 これだけ聞くと、大変喜ばしいことだと思ってしまいますが、 当事者として具体的に考えてみるとそう単純なことではない ということを最近認識しました。 ここでは、仕事と治療の両立は可能なのか? について、考えてみたいと思います。 ・医療費はどれくらい負担するのか?
日本の公的医療保険には、「高額療養費」という とってもありがたい制度があります。 高額療養費は、病院窓口での医療費の自己負担額が 著しく高額になってしまう場合は、一定額以上は 医療保険が負担するよ!という制度です。 たとえば、 年収436万円(令和元年の日本人の平均年収)の人であれば、 治療開始後最初の3月間は月額約8万円、4月目以降は 月額約4.5万円まで自己負担すればよいことになります。 しかし、高額療養費制度があるとはいえ、 高額な医療行為を受け続けた場合、医療費だけでも最低 年間55万円〜65万円位の自己負担を覚悟する必要がある ことになります。
仕事を休み、療養に専念する場合は、健康保険に 加入していれば、「傷病手当金」という給付金を 受給することができます。 傷病手当金は、生活費の心配をせずに療養に専念する ことにより、仕事に復帰できるように支援する制度です。 給付金額は、ザックリ月の給料の66%程度なので、 平均年収(≒月給36万円)の人であれば、月額約24万円 なので、医療費と生活費を賄う収入は確保できそうです。
今までとおりの仕事をしながら、治療を受けられれば お給料が減ることはないのですが、軽易な業務に転換 したり、勤務時間を短縮したりする場合、収入が減る という問題が生じます。 減収分を傷病手当金で補填することができればよいのですが、 残念ながら傷病手当金には、「仕事をしている場合、 一切支給しない。」というルールがあり、余程の例外的事例 でない限り、仕事をすると1円も支給されません。 したがって、 頑張って半日出勤し、50%のお給料を稼ぐよりも、 仕事を完全に休んで、66%の傷病手当金を貰った方が、 収入が多くなるという現象が生じ得ることとなり、 仕事と治療の両立を阻害する要因となっています。
身体状態が、下記の障害等級に該当する場合、 仕事をしているかどうかに関わらず、その等級に 応じた障害年金を受給することができます。 1級:単独での日常生活が不可能な状態 平均年収(≒月給36万円)の40歳単身者が上記の 障害等級に該当した場合に支給される障害年金の 概算額は、以下のとおり。 3級:障害厚生年金として、60万円(月5万円) ※3級にも該当しない障害の場合でも、障害手当金という
以上を踏まえて、仕事と治療の両立は可能なのか? を検証してみると、平均年収程度の収入があり、かつ 会社の社会保険に加入しているのであれば・・・、 ・多少お給料が減少しても、生活費を切り詰めれば ・仕事を休んで、一時的に療養に専念しても、 ・半日出勤などでお給料が激減しても、 と考えられそうです。
しかし、これはあくまで 平均年収以上+会社の社会保険に加入している人 に限っての話。 非正規労働者や若年層の場合、 平均年収以下or会社の社会保険に加入していない という場合の方が多いと考えられます。 お給料が低いという事は、 ・傷病手当金の金額も低くなる。 ということになりますし、 会社の社会保険に加入していないという事は、 ・国民健康保険なので、傷病手当金制度がない。 ということになり、その他の収入源がない場合、 仕事と治療の両立どころか、生活が成り立たない 可能性が出てきそうです。 一億総活躍社会を標榜するのであれば、 仕事と治療の両立 について、さらなる法整備が必要なようです。 |