「健 康 保 険 被 保 険 者 資 格 取 得 に 関 す る 疑 義 解 釈 に つ い て(昭和26年11月12日 二六保第1678号)」に以下の記述がある。
「健 康 保 険 及 び 厚 生 年 金 保 険 に お い て 、被 保 険 者 と な る 者 は 、法 定 の 事 業 所 に 使 用 せ ら れ る 者 で あ る が 、実 際 に は 労 務 を 提 供 せ ず 、従 つ て 、労 務 の 対 償 と し て 報 酬 の 支 払 を 受 け な い 場 合 に は 、実 質 上 の 使 用 関 係 が な い も の で あ る…」
※通達は法令ではないが、
厚生労働省の行政解釈であり、
対行政上の法的根拠になる。
すなわち、
「使用される者」とは、
「労務を提供しその対象として報酬の支払いを受ける者」と読める。
これは、
労働基準法第9条の
「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)
に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」
とほぼ同義であることから、
健康保険法の「使用される者」とは、
労働基準法の「労働者」と同義と考えられる。
すなわち、
「使用されなくなったとき」とは、
「労働者でなくなったとき」と読み替えられる
(健康保険では役員も被保険者となることがあるが論点としない。)。
「労働者でなくなったとき」とは、
労働者の死亡、退職および解雇等により
使用者との労働契約関係が消滅するという
仮定条件を満たした「その時」であると考えられる。
労働契約期間は、
就業規則等に別段の定めがある場合を除き、
その他の法律行為と同様に民法第1編第6章「期間の計算」が適用される。
※
ちなみに、
民法のこの規定は、私法的な法律関係だけでなく、
公法的関係にも適用があるので、
健康保険法や労働基準法にも適用される。
実際に、
健康保険法は第194条において
この法律又はこの法律に基づく命令に規定する
期間の計算については、
民法の期間に関する規定を準用する。
という明確な委任規定が存在する。
(期間の起算)
民法第139条 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。
民法第140条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
(期間の満了)
民法第141条 前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。
以下では、
「労働契約期間は4月1日から4月30日までとする(期間計算の特約なし)。」
という具体的事例を検証してみる。
「改正労働基準法の施行について(昭和六三年一月一日 基発第一号、婦発第一号)」
に以下の記述がある。
「また、一日とは、午前〇時から午後一二時までのいわゆる暦日をいうものであり、…」
通常、
労働契約は未来のある日を起点とする
契約を締結するのが一般的である。
これを踏まえると、
労働契約期間の起算時刻は、
民法第140条および上記通達により、
4月1日0:00と考えるのが適当である。
同様に
労働契約期間の満了時刻は、
民法第141条より
「末日の終了」時刻
⇒4月30日の終了時刻
⇒4月30日24:00
と考えるのが適当である。
したがって、
本事例の「労働契約関係が消滅するという仮定条件を満たした「その時」」とは、
4月30日24:00の次の瞬間である5月1日0:00と考えるのが適当である
(時としては同時刻ではあるが。)。
以上より、
本事例における「使用されなくなった時」は、
5月1日0:00である。
よって、
5月1日の翌日である5月2日に
健康保険および厚生年金保険の被保険者資格を喪失することとなる。
(期間の計算の通則)
民法第138条 期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。
⇒社会保険の「事由発生日の翌日に資格喪失」も
「法令に特別の定めがある」場合に該当する。
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