年休取得時に支払う
「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」に
深夜労働割増賃金は含まれるのか?
【結論】
含まれない。
●労働基準法の一部を改正する法律等の施行について(昭和27年9月20日 基発第675号)
法第三九条関係 (三)
所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金には
臨時に支払われた賃金、割増賃金の如く
所定時間外の労働に対して支払われる賃金等は算入されないものであること。
上記通達から読み取れるのは、
「通常の賃金」には法定時間外労働割増賃金は算入されない。」ということであり、
「深夜労働割増賃金も算入されない。」のかどうかは不明確である。
労基法第37条および第39条の条文や関係施行規則等を解釈する限り、
「通常の賃金」を算定する際に
法定時間外労働割増賃金と深夜労働割増賃金を異なる取り扱いとする規定は存在せず、
同様の取り扱いとすべきであると考えられる。
以下の事例で検証してみる。
【事例における労働条件】
・常夜勤者
・所定労働日:月曜日〜金曜日
・1日の所定労働時間:8時間
・法定休日は土曜日に特定
・今週は日曜日も出勤
上記通達は
「所定時間内に割増賃金は発生しない。」
という前提で発出されたのかもしれないが、
事例の金曜日のように
所定内労働だけど法定超労働となってしまう場合はあり得る。
事例の金曜日に年休を取得した際に支払う「通常の賃金」に
「深夜労働割増賃金は算入するが時間外労働割増賃金は算入しない。」
という異なる取り扱いをするのは不合理である。
また、仮に
事例のような場合は通達の例外として、
「通常の賃金に時間外労働割増賃金も算入する。」としても、
以下の異なる不合理が発生する。
労働基準法 (時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、
第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、
又は休日に労働させた場合においては、・・・
「時間外労働割増賃金を支払う。」ということは、
「36条第一項の規定により労働時間を延長した。」ことと同義であり、
「36協定における延長することができる時間数の内数である。」こととなる。
結果として実態における時間外労働時間数と
36協定における時間外労働時間数が異なることになってしまい、
「実態で判断する。」のがタテマエである労働法において、
非常に不合理なことになってしまう。
●労働基準法施行規則
第十九条 法第三十七条第一項の規定による
通常の労働時間又は通常の労働日の賃金の計算額は、
次の各号の金額に
法定外労働時間数若しくは休日の労働時間数または深夜労働時間数を乗じた金額とする。
※カラカマ意訳
そもそも、
労基法第37条の割増賃金額は、
同施行規則第19条各号の金額に「実」労働時間を乗じた金額である。
年次有給休暇は、
就労義務≒労働義務のある日に対して労働者が時季指定をすることにより、
「その日の労働義務が消滅」するのであり、
「その日に労働したものとみなす」わけではない。
ということは、
年休取得日の「実」労働時間はゼロなので、
時間外、休日および深夜労働の割増賃金計算上、
ゼロを乗じることになり、いずれの割増賃金もゼロ円となる。
ゼロ円の割増賃金を支払う≒割増賃金の支払いを要しないことになる。
以上より、
年休取得時に支払う
「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」に
時間外、休日および深夜労働の割増賃金はいずれも算入されない
と考えるべきである。
※振休、代休および年休の優先順位をどうするか?という問題があるが、
カラカマは、時間的に早いものが優先されるべきだと考える。
年休の時季指定があった時点で、
指定された労働日の労働義務は消滅し、
賃金請求権を有する休暇(日)となる。
振替休日の対象は、
労働日であるべきで休暇(日)を対象とすべきでない。
振替休日を与えるために時季変更権を行使し、
年休日を一旦労働日に戻した上で改めて振替休日とすることも考えられるが、
そもそも振替休日を与えるための時季変更権行使が許されるはずがない。
一方で、
業務の都合により休日出勤を命じられた日に対しても
理論上、労働者の年休の時季指定は可能だと考えられるが、
この場合、使用者の時季変更権行使は合法となる可能性が高い。
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