【事例1】
・時給1,000円
・年休に対する支払賃金は、いわゆる「所定労働時間の通常の賃金」を選択
・平日は8時間勤務だけど、土曜日は半ドン(4時間)

⇒土曜日に年休取得した場合、4,000円の賃金となり、
労働者にしてみれば、ちょっと損した気分・・・。



これは要するに、
日によって所定労働時間が異なる企業や部署の場合、
年休に対する賃金は、
年休を取得したその日の所定労働時間分支払えばよい。
ということであり、
これには異論はないのですが、



【事例2】
●職場環境
・1ヶ月単位の変形労働時間制を適用。
・計画的3交替勤務をしており、1暦日に連勤=8時間×2勤務
=16時間勤務(5時〜22時、休憩1時間)することが
労働契約上あらかじめ設定されている。
・36協定締結・届け出済み。

●賃金条件
・賃金形態:@月給制またはA時給制
・年休に対する支払賃金:A平均賃金またはBいわゆる「所定労働時間の通常の賃金」
⇒2×2=4パターンの賃金条件が考えられる。

⇒連勤日に1労働日の年休を取得した場合、
4パターンの違いで損得がどのようになるのか?

ここでは、
この問題について深掘りしてみたいと思います。




本題に入る前に
とっても大切な基本事項を確認しておきましょう。

どんな基本事項かと言うと、

変形労働時間制の適用なくして、
法定労働時間を超える所定労働時間はあり得ない。

ということです。


事例2において、
変形労働時間制を適用していないにもかかわらず、
1日の所定労働時間を16時間とした場合、

⇒労基法第32条の1日の法定労働時間に違反しているため、第13条の最低基準効が発動。
⇒労働契約そのものは有効だが、「所定労働時間を1日16時間」の部分は無効となる。
⇒何らの法律行為を必要とせず、法律上当然に
「所定労働時間を1日8時間、所定外の「延長」労働時間を1日8時間」
とする労働契約に修正されることになります。

※36協定なき場合は、
「所定労働時間を1日8時間」とする労働契約となり、
超過8時間分の契約は完全に消滅することになる。





本題に戻ります。


事例2では、
一勤務が一暦日に収まっており、
「1労働日」の年休取得により、
16時間分の労働義務が消滅することになります。

事例1の土曜日半ドンの逆パターンってことです。
以下で4パターンそれぞれについて考えてみます。





@A:月給制かつ平均賃金の場合
「月給により算定した通常の労働日の賃金が
平均賃金を上回る限りその月給を支給すれば足りる。」
という通達が存在します。

したがって、
月給制かつ平均賃金の場合は事実上、
いつもの月給を支払いさえすればよい
と考えられます。

⇒半ドン日でも連勤日でも支払われる賃金は同じなので、
時間単価を考慮すると連勤日に取得した方がお得。





@B:月給制かつ所定労働の通常賃金の場合
「通常の出勤をしたものとして取り扱えば足りる。」
という通達があります。

したがって、
月給制かつ所定労働の通常賃金の場合も、
いつもの月給を支払いさえすればよい
と考えられます。

⇒半ドン日でも連勤日でも支払われる賃金は同じなので、
時間単価を考慮すると連勤日に取得した方がお得。





AA:時給制かつ平均賃金の場合
平均賃金を算出し、字面通りその額を支払うことになります。

⇒半ドン日でも連勤日でも支払われる賃金は同じ。
連勤日に取得した場合、出勤したときの賃金>平均賃金となり、金が欲しい者には損。
半ドン日に取得した場合、出勤したときの賃金<平均賃金となり、お得。





AB:時給制かつ所定労働の通常賃金の場合
所定労働時間数×時給を支払うことになります。

⇒半ドン日と連勤日では、4倍の賃金差が発生。
半ドン日に取得した場合、 4時間分の賃金にしかならず、1日の年休の価値を考慮すると損。
連勤日に取得した場合、16時間分の賃金となり、非常にお得。




「年休は所定労働時間の長い日に取った方が絶対お得。」
と思いがちですが、
労働条件とお金の必要度により、
所定労働時間の短い日に取った方が良い場合がある。
ということが言えそうです。

結局、
所定労働時間が毎日同じという事業所であれば、
月給だろうが時給だろうが、 平均賃金だろうが所定労働の通常賃金だろうが、
損得は発生せず、年休取得日にバイアスは掛からない。

しかし、
所定労働時間が日によって異なる事業所の場合、
労働条件とお金の必要度によって、
オセロのように損得が入れ替わることになります。





トップページへ戻る。