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最終更新日:令和7年11月23日
適用事業所の要件に該当すると、
事業主や従業員の加入意志に係らず、
社会保険に加入する必要があります。
これらの事業所を一般的に「強制適用事業所」と呼びます。
健康保険法第3条
3 この法律において「適用事業所」とは、
次の各号のいずれかに該当する事業所をいう。
一 次に掲げる事業の事業所であって、
常時五人以上の従業員を使用するもの
※令和11年10月1日以降は、以下の業種要件は撤廃され、
「常時五人以上の従業員を使用する事業所」はすべて強制適用事業所となる。
イ 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
ロ 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
ハ 鉱物の採掘又は採取の事業
ニ 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
ホ 貨物又は旅客の運送の事業
ヘ 貨物積卸しの事業
ト 焼却、清掃又はとさつの事業
チ 物の販売又は配給の事業
リ 金融又は保険の事業
ヌ 物の保管又は賃貸の事業
ル 媒介周旋の事業
ヲ 集金、案内又は広告の事業
ワ 教育、研究又は調査の事業
カ 疾病の治療、助産その他医療の事業
ヨ 通信又は報道の事業
タ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める社会福祉事業
及び更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)に定める更生保護事業
レ 弁護士、公認会計士その他政令で定める者(以下の一から十)が
法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業
一 公証人
二 司法書士
三 土地家屋調査士
四 行政書士
五 海事代理士
六 税理士
七 社会保険労務士
八 沖縄弁護士に関する政令(昭和四十七年政令第百六十九号)第一条に規定する沖縄弁護士
九 外国法事務弁護士
十 弁理士
※レは、令和4年10月に新たに追加された。
二 前号に掲げるもののほか、
国、地方公共団体又は法人の事業所であって、
常時従業員を使用するもの
厚生年金保険法では、
船舶も適用事業所として扱われ、
船舶所有者が事業主とみなされます。
厚生年金保険法第6条
三 船員法(昭和二十二年法律第百号)第一条に規定する船員(以下単に「船員」という。)として
船舶所有者(船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第三条に規定する場合にあつては、
同条の規定により船舶所有者とされる者。以下単に「船舶所有者」という。)
に使用される者が乗り組む船舶(第五十九条の二を除き、以下単に「船舶」という。)
2 前項第三号に規定する船舶の船舶所有者は、
適用事業所の事業主とみなす。
従業員の員数の算定に当たっては、
以下の疑義照会回答が参考になります。
●健康保険法第3条第3項の「常時五人以上」の解釈について
(平成22年8月13日 疑義照会回答No.2010-788)
「被保険者となることができない者であっても
当該事業所に常時使用される者についてはこれを算入すべきものとする」ことが示され、
また、
昭和55年6月6日の内かん(以下「55年内かん」という。)においては、
短時間就労者が被保険者として適用されることとなる
「常用的使用関係」にあるかどうかの判断をする基準を示されていることから、
「常時五人以上の従業員」を算定するにあたっては、
55年内かんにおける「常用的使用関係」に該当する者は算入し、
「常用的使用関係」に該当しない者については算入しないと解される。
なお、
上記以外の者については、
以下のように考えるのが妥当である。
【健康保険法】
<員数の算定に含まれる者>
健康保険法第三条第一項第一号、第六号、第七号、第八号
<員数の算定に含まれない者>
第三条第一項第二号〜第五号(臨時に使用される者等)
【厚生年金保険法】
<員数の算定に含まれる者>
第十二条第一項第一号(※現行法では削除)、
第九条に規定される被保険者にはならない常用的使用関係のある70歳以上の者
<員数の算定に含まれない者>
第十二条第一項第二号〜第五号(※現行法では第一号〜第四号)(臨時に使用される者等)
この疑義照会回答をわかりやすく表にまとめるならば、
以下のとおり。
員数に含む者 |
@常用労働者、A船員保険の被保険者、B国民健康保険組合の事業所に使用される者、C後期高齢者医療の被保険者、D厚生労働大臣、健保組合または共済組合の承認を受けた者、E常用的使用関係にある70歳以上の者 |
員数に含まない者 |
@4分の3基準を満たさない短時間労働者※、A臨時に使用される者(日雇い等)、B所在地が一定しない事業所に使用される者、C季節的事業所に使用される者 |
※遅くとも平成31年10月以降、 @は、厚生年金保険法第12条第1項第5号の4要件のいずれかを満たさない者に変更となる予定。
法人は、
従業員数や業種に限らず強制適用です。
法人格の有無については、
下表を参考にして下さい。
| 事例 |
日本年金機構本部回答 |
疑義照会
回答No. |
LLP
(有限責任事業組合) |
法人格がないため、法人とはみなされない。個人事業所として取扱う。 |
2010-235 |
政治団体等 |
法人格を有した政党本部は適用事業所。
政党地方組織は原則として法人格を取得できないはずなので、法人とならない。 |
2010-4 |
権利能力なき社団 |
「権利能力なき社団」は、法人格を有していないため、任意適用事業所となる。
「権利能力なき社団」のわかりやすい例として、税法上の「人格のない社団等」がある(納税証明書等により確認可)。
通常の任意適用事業所とは異なり、代表者を含む従業員全員を被保険者として適用する。 |
2012-44 |
法人が解散し、清算業務を行っている場合 |
法人が解散登記をしても、清算手続きの範囲内で、権利能力を有し、法人格も存続することになる。 |
2010‐190
2010‐213 |
適用事業所をまとめると、
以下の表のとおりとなります。
|
従業員数 |
業種 |
適用事業所となるか? |
法人 |
問わない |
全業種 |
強制適用 |
個人 |
5人未満 |
全業種 |
任意適用 |
5人以上 |
法に定められている以下の16事業態
製造業、鉱業、電気ガス業、運送業、貨物積卸し業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介斡旋業、集金案内広告業、清掃業、土木建築業、教育研究調査業、医療事業、通信報道業、社会福祉業 |
強制適用 |
第1次産業 |
農業、牧畜業、林業、狩猟業、水産養殖業、沿岸漁業等 |
任意適用 |
サービス業
自由業 |
旅館、料理飲食店、下宿、理容理髪、浴場、洗濯、映画演劇、興業貸席、ダンスホール、競馬競輪、ボウリング、野球場等 |
法務 |
弁護士、弁理士、会計士、税理士、社会保険労務士等 |
宗務 |
神社、寺院、教会等 |
適用事業所に該当することとなった場合は、
事実発生日から5日以内に事業所所在地を管轄する年金事務所に
「新規適用届」を提出することになります。
適用日は、以下の疑義照会回答に詳細が記載されています。
●新規適用届における適用年月日の遡及について
(平成22年11月18日 疑義照会回答No.2010-673)
●疑義照会2010-673で示された、新規適用届における適用年月日の遡及の基準について
(平成22年12月3日 疑義照会回答No.2010-1143)
強制適用事業所の新規適用届に添付される資格取得届に
取得日が記載されている場合等は、
それを事業所からの事実発生日の申し立てと考えることとする。
この事業所から申し立てのあった事実発生日が
新規取得届の提出日と同月内の日である場合及び提出日から5日以内の日である場合は
登記簿の法人設立年月日の確認で、その日を適用年月日とする。
(届出の遅延と同様の考えで提出月内のものに関しては
賃金台帳など別帳簿の提出を求めなくてよい。)
それを上回る遡及をする場合については
諸帳簿等で確認し、事業実態が備わった日を特定できる場合のみ、
その日(申出日ではない)を適用年月日にできる。
ただし
その場合でも原則は届出月の1日を適用年月日とする。
適用事業所に該当しているにもかかわらず、新規適用届を提出せず、
社会保険に加入していない事業所(未適用事業所)が後日、加入する場合の適用日は、
以下の通知や疑義照会回答No.2010-488、No.2011-129)のとおり、
遡及は2年を限度とし、ケースバイケースとなります。
●標準報酬の随時改定、被保険者資格取得時期の決定及び未適用事業所の適用時期の決定について
(昭和31年6月20日 保険発第102号)
2 資格取得時期の決定
法人の理事、監事、取締役等であって
その法人の業務の一部を担当し法人から労務の対償として報酬を受けている者が
当該法人に使用されるものとして健康保険の被保険者であることは貴見のとおりである。
また、
このような被保険者となるべき者であって
被保険者資格取得届が未提出のため適用洩れとなつている者については
適用洩れの事実の判明次第速やかに法第二十一条ノ二第四項の規定に基き
職権によつて被保険者の資格を取得せしめるべきであるが
被保険者の資格の取得は法第二十一条ノ二第一項の規定により
保険者の確認によりその効力を生ずることとなつている。
この保険者の確認は事実上当然に生じている資格関係を法律上顕在化するものであつて、
客観的な事実に基いて行われるものである。
したがつて
適用洩れとなつていた者の資格取得年月日は
保険者がその被保険者となるべき者に関し使用関係を客観的に確認した年月日
とすべきものと考えられる。
しかし貴見のごとく、
資格取得年月日を二年以上遡及することは、
法第四条の規定に照し、実体的に何の意味も有しないこととなるので、
遡及の限度を二年とすることについては差支えないが一面、
その遡及した二年間における保険給付の請求権の行使が当該被保険者にとつて可能であるかどうか、
保険者がその受給権に関し、保険事故及び法定受給要件を確認し得るかどうか
をも併せて考慮する必要があると考えるので、
資格取得日の遡及に当つては二年を限度として
使用関係及び受給関係に関する事実の確認し得る範囲において決定すべきものと考える。
3 未適用事業所の適用時期の決定
適用洩れとなつていた強制適用すべき未適用事業所の適用時期については
前項とほぼ同様の事情であるがさらにこの場合の遡及適用に関する問題として
遡及期間中における標準報酬の決定が妥当に行われ得るかどうかということがある。
個々の被保険者の資格を遡及して取得せしめる場合には
特に当該被保険者が法人の理事、取締役等の場合には、
標準報酬を遡及してそれぞれの期間ごとに決定することは比較的適正に行われ得るのであるが、
未適用事業所の場合についてみると当該事業所が零細企業体であることが多く、
これらの事業所においては、賃金関係その他の帳簿書類が不備であること、
遡及期間内に従業員の異動が相当数に上ること等の事務的困難性が伴い
さらに経済的に多額の保険料を一時に課することとなるため、
事業主の社会保険に対する協力意欲を阻害し、
遡及の保険料は勿論適用後の保険料についても滞納が予測されるので
適用時期の決定については、
画一的に二年の時効に統一することは必ずしも妥当な措置ではなく
二年を限度としてケースバイケースに決定することが行政運営として適当と考えられる。
新規適用年月日を整理すると、
以下のとおり。
@原則、
新規適用届の提出日を新規適用年月日とする。
A資格取得日等により事実発生日の申し立てがあった場合は、
その申立ての日が届出の提出日から5日以内の日または提出日と同月内である場合には、
その日を新規適用年月日とする。
B事実発生日の申し立て日が、届書の提出月より前のときは、
原則として、提出日の属する月の1日を適用年月日とする。
例外として、諸帳簿等で確認し、事業実態が備わった日を特定できる場合のみ、
その日を適用年月日にできる。ただし、遡及は2年を限度とする。
遡及した場合、
遡及適用日と現在とでは事業所所在地が異なっており、管轄年金事務所が異なるときは、
現時点の事業所所在地を管轄する年金事務所にて、
手続きを行います(疑義照会回答No.2010-1039)。
その他、新規適用時の注意点は以下のとおりです。
| 事例 |
日本年金機構回答 |
疑義照会
回答No. |
屋号がない個人事業所 |
個人名を事業所名にしてよい。 |
2010‐522 |
個人事業所を共同経営している場合 |
事業主名は、代表者間で調整の上、どちらか一方となる。 |
2010‐1047 |
届出書の19番欄について |
社会保険事務を社労士に委託する場合に記載する。 |
2010‐423 |
「登記情報提供サービス」の写しは登記簿謄本の代わりとならないか? |
法的な証明力を伴わず、不可。 |
2010‐989 |
個人事業所が法人化(法人成り)をした場合や、
事業譲渡して新しい法人事業所となった場合等の扱いは
以下のとおりです。
| 事例 |
日本年金機構回答 |
疑義照会
回答No. |
法人事業所⇒個人事業所 |
法人の全喪届を提出し、個人の新規適用届を提出する。 |
2010‐81 |
個人事業所⇒法人事業所 |
継続性等が確認できれば、全喪、新適は不要。 |
個人事業所の事業主が死亡した場合 |
個人事業所の場合の事業主変更については、事業の継続性、承継等が行われていることが確認できる場合に事業主変更できる。
新事業主が死亡した事業主の債務の引継を拒否している場合は、たとえ同じ場所で同様の事業を行っている場合であっても、事業の継続性、承継等が行われているは言い難いと考えるのが妥当であるから、事業主変更で対応はできない。
全喪届のエビデンスは、事業主が亡くなったことがわかる書類(戸籍謄本など)で差し支えない |
2010‐369 |
法人事業所が事業譲渡して新しい法人事業所に変わる場合 |
事業譲渡する法人および事業譲渡される法人は法律上明らかに異なる人格であるため、厚生年金保険及び健康保険において同一の事業所の名称変更では対応することはできない。全喪届、新規適用届を提出する必要がある。 |
2010-759 |
ホールディングス設立に伴う適用関係 |
ホールディングス設立前後における分割前の既適用事業所と新設会社について、実態として事業所の同一性、継続性が確認できる場合に限り、既進用事業所が存続しているものとして取扱います。(得喪処理は発生しません。) |
2012-52 |
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