前回のコンテンツでは、
「労働基準監督官の権限とその限界」
について考察しました。

しかし、
自分自身≒社会保険労務士(略して、社労士)
についての考察がなされていませんでした。

これでは片手落ちというもの。

よってここでは、
「 社会保険労務士の業務範囲とその限界」
について考察してみます。



※特定社会保険労務士という、上級?の資格がありますが、
ここでは、特定社会保険労務士のみが行い得る
「紛争解決手続代理業務」については触れないこととします。


社会保険労務士法
(社会保険労務士の業務)
第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。

一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令
(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等
(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、
再審査請求書その他の書類をいう。以下同じ。)を作成すること。

一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。

一の三 労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、再審査請求
その他の事項(厚生労働省令で定めるものに限る。以下この号において「申請等」という。)
について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し
当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)
について、代理すること。

二 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(申請書等を除く。)を作成すること。

三 事業における労務管理その他の労働に関する事項
及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項
について相談に応じ、又は指導すること。


4 第一項各号に掲げる事務には、
その事務を行うことが他の法律において制限されている事務
並びに
労働社会保険諸法令に基づく療養の給付及びこれに相当する給付の費用について
これらの給付を担当する者のなす請求に関する事務
は含まれない。


第二条の二 社会保険労務士は、
事業における労務管理その他の労働に関する事項
及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、
裁判所において、補佐人として、
弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。

2 前項の陳述は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。
ただし、
当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、
又は更正したときは、この限りでない。


以上のように社労士の業務は、

@申請書等の作成

A申請書等の提出代行

B申請等の事務代理

C帳簿書類の作成

D相談・指導

「他の法律において制限されている事務」および
「療養の給付の費用請求に関する事務」
は、上記に含まれません。

E裁判所における陳述

の6つに大別できます。
それぞれ、詳細に確認してみましょう。



一 労働社会保険諸法令に基づいて申請書等
(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、
再審査請求書その他の書類。)を作成すること。


行政機関等に提出する申請書等の書類作成の業務です。

行政機関等とは、
全国社会保険労務士会編(2008)「社会保険労務士法詳解」P147によれば、
「都道府県労働局、労働基準監督署、ハローワーク、都道府県、市区町村、
雇用・能力開発機構、健康保険組合、協会けんぽおよび日本年金機構」等といえます。



その業務範囲であり対象となる労働社会保険諸法令は
法別表第1に列挙されており、
行政不服審査法を含め以下の58個の法令が該当します。

施行規則にも別表第1が存在しますが、
施行規則の別表第1は「B事務代理」の対象法令であり微妙に異なるため、
間違えないように注意が必要です。

ちなみに、
「労働組合法」や「労働関係調整法」等の労使関係に関する法律は、
労使間の自主性を害する恐れがあるため対象法令に含まれていません。



【法別表第1】
1.労働基準法

2.労働者災害補償保険法

3.職業安定法

4.雇用保険法

5.労働保険審査官及び労働保険審査会法

6.職業能力開発促進法

7.駐留軍関係離職者等臨時措置法
(第十条の二の規定に限る。)

8.最低賃金法

9.中小企業退職金共済法

10.国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法

11.じん肺法

12.障害者の雇用の促進等に関する法律

13.激甚じん災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律
(第二十五条の規定に限る。)

14.労働災害防止団体法

15.港湾労働法

16.労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

17.炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法

18.労働保険の保険料の徴収等に関する法律

19.家内労働法

20.勤労者財産形成促進法

21.高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

22.沖縄振興特別措置法
(第七十八条の規定に限る。)

23.労働安全衛生法

24.作業環境測定法

25.建設労働者の雇用の改善等に関する法律

26.賃金の支払の確保等に関する法律

27.本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法
(第十六条(第十八条の規定により読み替える場合を含む。)及び第二十条の規定に限る。)

28.労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

29.地域雇用開発促進法

30.中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律

31.介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律

32.労働時間等の設定の改善に関する特別措置法

33.短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

34.育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

35.林業労働力の確保の促進に関する法律
(第十三条の規定に限る。)

36.雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

37.個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律

38.石綿による健康被害の救済に関する法律
(第三十八条及び第五十九条の規定に限る。)

39.次世代育成支援対策推進法

40.職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律

41.生活困窮者自立支援法
(第十六条第一項及び第二十一条第二項の規定に限る。)

42.専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法

43.青少年の雇用の促進等に関する法律

44.女性の職業生活における活躍の推進に関する法律

45.健康保険法

46.船員保険法

47.社会保険審査官及び社会保険審査会法

48.厚生年金保険法

49.国民健康保険法

50.国民年金法

51.独立行政法人福祉医療機構法
(第十二条第一項第十二号及び第十三号並びに附則第五条の二の規定に限る。)

52.石炭鉱業年金基金法

53.児童手当法

54.平成二十二年度等における子ども手当の支給に関する法律

55.平成二十三年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法

56.高齢者の医療の確保に関する法律

57.介護保険法

および前各号に掲げる法律に基づく命令

58.行政不服審査法
(前各号に掲げる法令に係る不服申立ての場合に限る。)

※「独立行政法人労働者健康福祉機構法」
および「独立行政法人雇用・能力開発機構法」
も対象法令とされていたが、現在は削除されている。







一の二 申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、
報告書、審査請求書、 再審査請求書その他の書類。)について、
その提出に関する手続を代わつてすること。


「社会保険労務士法詳解」P148によれば、

本来事業主、労働者等提出義務者本人が行うべき申請書等の提出手続き
に必要な一切の事務処理を、本人に代わって行うことを意味する。

したがって、
ここにいう提出代行とは、
法律行為(許認可申請等)に係るものと事実行為(報告、届出等)に係るものとを問わず、
労働社会保険諸法令に基づく一切の提出書類を行政機関等が受理するまでに必要な行為、
すなわち、単に事業主、労働者等に代わって事実上提出行為をする(いわゆる使者)のみでなく、
必要に応じて行政機関等に説明を行い、その質問に回答し、
または提出書類に必要な補正を行う等の行為が含まれる。

提出手続きの代行は、
法律行為の代理とは異なるので、
本来事業主が意思決定すべき事項に及ばない。

とされています。



たとえば、
提出代行事務として36協定を労働基準監督署に提出しようとしたところ、
1年間に延長できる時間の欄に「60時間」と記載されていた場合を想定してみます。

1年間の時間外労働時間を60時間と設定することは、理論的にはありえなくもないですが、
企業経営を考慮すると非常に珍しい事例と言えましょう。

ここは社労士たるもの、
「あの社長やるな!すっごいホワイト企業に変身じゃん♪」
とそのまま提出するのではなく、
「1年間の時間外労働時間の限度基準である「360時間」の記載間違いでは?」
と疑念を抱いて欲しいものです。

この場合、
社労士として適切な行動は、会社の意思を忖度し勝手に「3」を書き加えるのではなく、
会社に連絡し事業主および労働者代表の意思を確認した上で、
その意思決定とおりに36協定を補正し、監督署に提出するべきでしょう。

36協定の届出を監督署が有効なものとして受理した時点をもって、
提出代行の事務は終了となります。

提出代行の対象となる法令は、
@の58個の法令とイコールとなります。







一の三 労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、再審査請求
その他の事項(厚生労働省令で定めるものに限る。以下この号において「申請等」という。)
について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し
当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)
について、代理すること。




社会保険労務士法施行規則
(事務代理の範囲)
第一条 社会保険労務士法第二条第一項第一号の三に規定する
申請、届出、報告、審査請求、再審査請求その他の事項(以下「申請等」という。)
に係る厚生労働省令で定めるものは、
別表各号に掲げる申請等について、それぞれ当該各号に定めるとおりとする。


「社会保険労務士法詳解」P149によれば、

「事務代理」は、「代理」の表現をとっていても、民法の「代理」とは異なり、
代理人がその代理した案件についての処分権を有しないとされる。

すなわち、
代理の内容は、申請等及びこれらに係る行政機関等の調査、処分に対してする
主張、陳述等の事実行為にとどまるから、
代理人の判断で法律行為を行う余地はなく、
代理人には、行政機関等の許可、決定等の受領、申請等の撤回、委任の範囲外の申請等
の内容の変更等を行う権限はないと解される。

なお、
「事務代理」と「提出代行事務」との相違は、
提出代行事務が申請書等の提出手続に関して行政機関等
に事実上の説明補正等を行い得るのにとどまるのに対して、
事務代理は社会保険労務士が本人に代わって申請等を行い、
当該申請書等に係る行政機関等の質問に対する回答等を行い得るのみならず、
当該申請等に係る行政機関等の調査又は処分に関する主張又は陳述を行い得るものである。

とされています。



たとえば、
Aの事例で、
1年間に延長できる時間の欄に「60時間」と記載したままの協定書
(法でいう「申請書等」という書類)を監督署に提出した場合、
「ここは、60時間で間違いないですか?」と質問された際に、
「間違いかもしれないので確認します。」と回答するのは、
提出代行の範囲内でしょう。

一方、
36協定(法でいう「申請等」という事項)を実際に守っているか?を確認するために
労働基準監督官が事業所に臨検しに来た場合、
「労働者Aさんの時間外労働について説明願います。」と質問された際に、
同席した社労士がAさんの勤務実績について具体的に説明するのは、
「事務代理」となるでしょう。

しかし、
社労士は36協定書という書類を作成することはできますが、
事業主に代わって労働者代表と交渉し、
36協定そのものを締結することは「事務代理」の範囲を超えており、
できません。



さて、
この事務代理の適用法令の範囲ですが、施行規則別表第1となり、
「書類作成」および「提出代行」の範囲と異なるので注意が必要です。

法別表第1すなわち申請書等作成および提出代行の事務の対象として、
労働基準法と労基法に基づく命令(政令=施行令、省令=施行規則)
が規定されており、例外はありません。



一方、
施行規則別表第1すなわち事務代理の対象として、

一 労働基準法に係る申請等 
第九十六条の二第一項の事業の附属寄宿舎の設置、移転又は変更の届出、
第百四条第一項の申告、
第百四条の二第一項の報告
(労働基準法施行規則第五十七条第一項第一号の適用事業に係る報告
及び同条第三項の預金の管理の状況の報告を除く。)
及び第百五条の三第一項の紛争の解決の援助の求め
以外の申請等

二 労働基準法の一部を改正する法律に係る申請等
附則第六条第三項の許可の申請

三 労働基準法施行規則に係る申請等
第五十七条第一項第二号の事故報告並びに同項第三号
及び同条第二項の労働者死傷病報告
以外の申請等

とされており、
労基法を根拠にする申請等であっても
社労士が事務代理できない業務が存在するのです!!!



たとえば、
労働者が
事業の附属寄宿舎内でケガをした場合
社労士は、
「労働者死傷病報告」という申請書を作成・提出代行することはできますが、
この労働者死傷病報告に係る申請は、
施行規則第57条第1項第2号に当たり、事務代理の対象外とされているため、
ケガの詳細について監督署から問い合わせがあった場合、
社労士が事業主に代わって陳述することはできません。

ですが、
前出事例の36協定に関する監督官の質問への陳述は、
労基法第104条の2第2項の報告に当たるため、
事務代理が可能となるのです。



なお、
「厚生労働省令で定めるものを除く。」と法に記述されていますが、
平成30年10月時点では、
除外される法令は、施行規則に定められていません。





二 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類
(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類を除く。)
を作成すること。


社労士は、
法別表第1の58個の法令に基づく帳簿書類の作成をすることができます。

たとえば、
労働基準法に基づき、使用者は
就業規則(第89条)、労働者名簿(第107条)および賃金台帳(第108条)等
を作成しなければなりませんが、
社労士はこれらの書類を作成することができます。

また、
賃金台帳の調製に付随して
賃金計算を行うこともできます。



「社会保険労務士法詳解」P439には、

「賃金計算事務は、
労働基準法108条の規定に基づく賃金台帳の調製
(労働基準法施行規則54条1項8号に規定する所得税、地方税等の控除額の記入を含む。)
に必要不可欠な事務であり、
社会保険労務士は賃金計算を行うことができる」か?
という連合会大槻会長の照会に対し、
「厚生労働省労働基準局労働保険徴収課からは、
同日(平成14年6月4日)付労徴発0604001号により、
「貴見のとおり解釈して差し支えない」旨の回答がなされた。」
と記載されています。



労働基準法施行規則
第五十四条 使用者は、法第百八条の規定によつて、
次に掲げる事項を労働者各人別に賃金台帳に記入しなければならない。
八 法第二十四条第一項の規定によつて
賃金の一部を控除した場合には、その額


つまり、
社労士は、
賃金台帳の作成に付随して、
給与計算ができることになります。

巷には、
給与計算代行を業とする企業が存在しますが、
彼らは賃金計算はできますが、
賃金台帳を調製することはできません。
もし、
賃金台帳の作成まで代行してしまうと、
社労士の独占業務である2号業務を行ったことになり、
社労士法第27条違反となることになります。

また、
社労士法人については、
法第第25条の9の2および施行規則第17条の3第1号
に明確に給与計算ができる旨が規定されています。



なお、
労働基準法第109条では、
使用者は労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければなりませんが、
社労士が代行して保管することはできませんので、
間違えないでください(写しを社労士事務所に保管することは可能。)。





三 事業における労務管理その他の労働に関する事項
及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項
について相談に応じ、又は指導すること。


「社会保険労務士法詳解」P168によれば、

「事業における労務管理その他の労働に関する事項」とは、
労働に関する法令に規定がある事項であると否とを問わず、
工場、事業場における労務管理に関する一切の事項をいう。

労働協約の締結等のため団体交渉の場に、
当事者の一方の委任を受けて、当事者の一方とともに出席し、交渉することは、
法第2条第1項3号の業務に含まれ、
処分権を持つ代理人になる等弁護士法72条に反しない(※いわゆる、非弁行為)限り、
当然社会保険労務士の業務である。

とされており、
法別表第1の58個の法令に限定されず、
たとえば、
労働契約法や労働組合法等に関する労務管理についての相談・指導も含まれます。


とはいえ、
顧問先の社長に頼まれて、
団体交渉の場に同席し、社長にアドバイスすること
は非弁行為とならないと思いますが、
社労士が組合側と直接話し合い、交渉をする行為
はグレーゾーンに突入し
非弁行為となる可能性が極めて高いため、
私はおススメしません。







4 第一項各号に掲げる事務には、
その事務を行うことが他の法律において制限されている事務
並びに
労働社会保険諸法令に基づく療養の給付及びこれに相当する給付の費用について
これらの給付を担当する者のなす請求に関する事務
は含まれない。


社労士が業として行い得る事務に含まれない事務
に関する規定です。



「他の法律において制限されている事務」については
たとえそれが労働社会保険諸法令に関する事項であっても
社労士は業として行うことができません。

弁護士法、司法書士法、税理士法、弁理士法、公認会計士法等には、
それぞれの独占業務が規定されており、
その資格を有する者のみ業務を行い得ることになっています。



弁護士法
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、
報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等
行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して
鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、
又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
ただし、
この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。



司法書士法
(非司法書士等の取締り)
第七十三条 司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、
第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。
ただし、
他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。


(業務)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、
他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

一 登記又は供託に関する手続について代理すること。

二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録
(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、
電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)
を作成すること。
ただし、同号に掲げる事務を除く。

三 法務局又は地方法務局の長に対する登記
又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。

四 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続
(不動産登記法第六章第二節の規定による筆界特定の手続
又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。)において
法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。

五 前各号の事務について相談に応ずること。


「療養の給付等の費用請求に関する事務」
も社労士の業務に含まれません。

これは平たく言えば、
「医療事務」の仕事の代行と言えるでしょう。

すなわち、
病院、診療所および薬局等の医療提供者が、
療養の給付等に要した費用を保険者に請求する事務であり、
現実には「社会保険診療報酬支払基金」等に診療報酬明細書(レセプト)
を提出する業務と言えます。

社労士がその名称を用いず、
医療機関と個人の契約に基づいて医療費請求事務行うこと
は問題ないとされています。







第二条の二 社会保険労務士は、
事業における労務管理その他の労働に関する事項
及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、
裁判所において、補佐人として、
弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。

2 前項の陳述は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。
ただし、
当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、
又は更正したときは、この限りでない。


平成26年の法改正により追加され、
社労士が対応可能となった業務?事務?です。

※平成30年10月時点で最新の
「社会保険労務士法詳解」は平成20年版のため、
この陳述に関する記述は当然ありません。

社労士でありさえすればよく、
特定社労士に限定されず、
勤務社労士もその他の社労士も対象となります。

※「その他の社労士」とは、
社会保険労務士登録事務取扱規程第2条に規定する、
開業社会保険労務士、社会保険労務士法人の社員、勤務社会保険労務士
以外の登録をする者です。



刑事訴訟法
第四十二条 被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、
何時でも補佐人となることができる。

2 補佐人となるには、審級ごとにその旨を届け出なければならない。

3 補佐人は、被告人の明示した意思に反しない限り、
被告人がすることのできる訴訟行為をすることができる。
但し、この法律に特別の定のある場合は、この限りでない。



民事訴訟法
(補佐人)
第六十条 当事者又は訴訟代理人は、
裁判所の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。

2 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。

3 補佐人の陳述は、当事者又は訴訟代理人が直ちに取り消し、
又は更正しないときは、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。


刑事訴訟では、
被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹であれば、
誰でも、いつでも補佐人になることができます。

逆説的に
社労士だというだけでは、
刑事訴訟の補佐人になることはできませんでした。


また、
民事訴訟では、
裁判所の許可を受けた者でないと補佐人として出頭することはできず、
やはり
社労士だというだけでは、
民事訴訟の補佐人になることはできませんでした。


ですが、
この規定ができたことにより、
「事業における労務管理その他の労働に関する事項」
および
「労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項」
に限定されますが、
訴訟代理人と一緒であれば
刑事事件・民事事件に関係なく
裁判所の許可も関係なく、
裁判所に出頭し、陳述が可能となります。

ただし、
簡易裁判所の場合、
弁護士以外にも
司法書士や裁判所が許可した者も訴訟代理人になることができますが、
この規定では、
訴訟代理人が弁護士である場合に限定されているため、
注意が必要です。



司法書士法
(業務)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、
他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。
ただし、上訴の提起
(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、
再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、
代理することができない。

イ 民事訴訟法の規定による手続であつて、
訴訟の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号
に定める額(※140万円)を超えないもの


2 前項第六号から第八号までに規定する業務
(以下「簡裁訴訟代理等関係業務」という。)は、
次のいずれにも該当する司法書士に限り、行うことができる。

一 簡裁訴訟代理等関係業務について
法務省令で定める法人が実施する研修であつて
法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること。

二 前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が
簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると
認定した者であること。

三 司法書士会の会員であること。



民事訴訟法
(訴訟代理人の資格)
第五十四条 法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、
弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。
ただし、
簡易裁判所においては、その許可を得て、
弁護士でない者を訴訟代理人とすることができる。

2 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。



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