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最終更新日:令和7年11月21日
4分の3基準を満たさない者でも、
健康保険法第3条第1項および厚生年金保険法第12条により、
4要件を全て満たせば社会保険の被保険者となることができます。
事業所に使用される者であって、
その1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の
1週間の所定労働時間の4分の3未満である短時間労働者
または
その一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の
一月間の所定労働日数の4分の3未満である短時間労働者に該当し、
かつ、
イからニまでのすべての要件に該当するもの
イ 特定適用事業所に使用されていること。
ロ 一週間の所定労働時間が20時間以上であること。
ハ 報酬(最低賃金法第四条第三項各号に掲げる賃金に相当するものとして
厚生労働省令で定めるものを除く。)について、厚生労働省令で定めるところにより、
報酬月額が、8万8千円以上であること。
ニ 学校教育法第50条に規定する高等学校の生徒、同法第83条に規定する大学の学生
その他の厚生労働省令で定める者でないこと。
令和4年9月までは、
「当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること。」
という要件もあったのですが、
「臨時に使用される者」の適用除外要件の法改正に伴い廃止されました。
以下では、
4要件について詳述していきます。

特定適用事業所とは、
年金機能強化法附則第17条および附則第46条により、
以下のとおり定義されています。
事業主が同一である一または二以上の適用事業所であって、
当該一または二以上の適用事業所に使用される通常の労働者及びこれに準ずる者※の総数が常時500人を超えるものの各適用事業所をいう。
※これに準ずる者
1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の
1週間の所定労働時間の4分の3以上であり、
かつ、
その1月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の
1月間の所定労働日数の4分の3以上である短時間労働者をいう。
「500人を超える」という企業規模要件は、令和2年の法改正により、
令和4年10月からは、「100人を超える」に
令和6年10月からは、「50人を超える」に変更されました。
具体的運用については、
令和4年3月18日 保保発0318 第1 号/年管管発0318 第1 号(最終改正 令和6年8月21日)
第2の2(4)にて通知されています。
ア 「事業主が同一である1又は2以上の適用事業所」
(ア) 適用事業所が法人事業所の場合、法人そのものを事業主として取り扱い、同一法人格
に属する全ての適用事業所を「事業主が同一である1 又は2 以上の適用事業所」として取
り扱うこととする。
(イ) 適用事業所が個人事業所の場合、個人事業主を事業主として取り扱い、事業主が同一
である適用事業所は現在の適用事業所の単位のほかに無いものとして取り扱うこととする。
具体的には、法人事業所および地方公共団体の場合、法人番号が同じ適用事業所をまとめて被保険者数を算定します。個人事業所の場合は現在の適用事業所のみで算定します。
イ 「常時100 人を超える」
事業主が同一である1又は2以上の適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総
数が、1 年間のうち6月間以上100 人を超えることが見込まれる場合を「常時100 人を超え
る」として取り扱うこととする。
また、令和2年改正法の一部が令和6年10月1日から施行され、特定適用事業所における
いわゆる企業規模要件が引き下げられることに伴い、同日以降、(4)中「100 人」とあるの
は「50 人」と読み替えるものとする。
直近1年間のうち6月間以上100 人を超えた場合は、
「常時100 人を超える」とされ、特定適用事業所と取り扱われます。
国の機関(立法、司法、行政)は、
全てを合わせて1つの単位として特定適用事業に該当するか判断するため、
国に属するすべての適用事業所が特定適用事業所として短時間労働者の適用拡大対象となります。

具体的には、
令和4年3月18日 保保発0318 第1 号/年管管発0318 第1 号(最終改正 令和6年8月21日)
第2の2(1)にて通知されています。
ア 1週間の所定労働時間とは、
就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべきこととされている時間をいう。
この場合の「通常の週」とは、
祝祭日及びその振替休日、年末年始の休日、夏季休暇等の特別休日(週休日その他概ね1か月以内の期間を周期として規則的に与えられる休日以外の休日)を含まない週をいう。
イ 1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し、
通常の週の所定労働時間が一通りでない場合は、
当該周期における1週間の所定労働時間の平均により算定された時間を1週間の所定労働時間とする。
4週5休制等により、1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し、一定ではない場合です。
ウ 所定労働時間が1か月の単位で定められている場合は、
当該所定労働時間を12 分の52 で除して得た時間を1週間の所定労働時間とする。
これは、
1年間を52週、1ヶ月を12分の52週とし、
1ヶ月の所定労働時間×52分の12することにより、
1週間の所定労働時間を算出するということです。
エ 所定労働時間が1か月の単位で定められている場合で、
特定の月の所定労働時間が例外的に長く又は短く定められているときは、
当該特定の月以外の通常の月の所定労働時間を12 分の52 で除して得た時間を1週間の所定労働時間とする。
夏季休暇等のため、
夏季の特定の月の所定労働時間が例外的に短く定められている場合や、
繁忙期中の特定の月の所定労働時間が例外的に長く定められている場合です。
オ 所定労働時間が1年の単位で定められている場合は、
当該所定労働時間を52 で除して得た時間を1週間の所定労働時間とする。
カ 所定労働時間は週20 時間未満であるものの、
事業主等に対する事情の聴取やタイムカード等の書類の確認を行った結果、
残業等を除いた基本となる実際の労働時間が直近2月において週20 時間以上である場合で、
今後も同様の状態が続くことが見込まれるときは、
当該所定労働時間は週20 時間以上であることとして取り扱うこととする。
キ 所定労働時間が、就業規則、雇用契約書等から明示的に確認できない場合は、残業等を除いた基本となる実際の労働時間を事業主等から事情を聴取した上で、個別に判断することとする。
●短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(令和 6年10月施行分)
(令和6年9月5日 事務連絡)
問34 就業規則や雇用契約書等で定められた所定労働時間が週 20 時間未満 で
ある者が 、 業務の都合 等により恒常的に 実際の労働時間が週 20 時間以上 と
なった 場合は、どのように取り扱う の か。 また、施行日前から当該状態であ
った場合は、施行日から被保険者の資格を取得するのか。
(答)実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得します。
なお、 施行 時においては、実際の労働時間が直近2月において週 20 時間
以上となっており、引き続き同様の状態が続くことが見込まれる場合は、施
行日から被保険者の資格を取得します。

具体的には、
令和4年3月18日 保保発0318 第1 号/年管管発0318 第1 号(最終改正 令和6年8月21日)
第2の2(2)にて通知されています。
@ 「最低賃金法で賃金に算入しないものに相当するもの」とは、次の(@)から(E)までに掲げるものとする。
(@) 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
(A) 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
(B) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
(C) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金
(D) 深夜労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分
(E) 最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)
これはあくまで特定4分の3未満短時間労働者の被保険者資格の取得要件を判定する際の月額賃金であり、
標準報酬月額の基礎となる報酬月額は、
他の被保険者と同様の扱いとなります。
A 報酬が、
月給、週給等一定の期間で定められる場合は、
被保険者の資格を取得した日現在の報酬の額を
その期間の総日数で除して得た額の30 倍に相当する額を報酬月額とする。
B 報酬が、
日給、時間給、出来高給又は請負給の場合は、
被保険者の資格を取得した月前1月間に同一の事業所において、同様の業務に従事し、
かつ、
同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額を報酬月額とする。
C 上記A又はBの方法で報酬月額を算定することが困難である場合は、
被保険者の資格を取得した月前1月間に、その地方で、同様の業務に従事し、
かつ、
同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額を報酬月額とする。
D 上記AからCまでのうち、2つ以上に該当する報酬を受ける場合は、
それぞれについて上記AからCまでの方法によって算定した額の合算額を報酬月額とする。
E 上記B又はCの方法で報酬月額を算定する場合で、
同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が
当該事業所又は当該地方に存在しないときは、
就業規則、雇用契約書等に基づき、個別に報酬月額を算定することとする。
A〜Dは、
厚生年金保険法第22条の被保険者資格取得時の標準報酬月額の扱いと全く同じです。
すなわちBおよびCは、
実務上ないに等しい規定であると思いますので、
実際にはEにより算定することになるでしょう。

具体的には、
令和4年3月18日 保保発0318 第1 号/年管管発0318 第1 号(最終改正 令和6年8月21日)
第2の2(3)にて通知されています。
卒業を予定している者であって適用事業所に使用されることとなっているもの、
休学中の者及び定時制の課程等に在学する者その他これらに準ずる者は、
学生でないこととして取り扱うこととするが、
この場合の「その他これらに準ずる者」とは、
事業主との雇用関係を存続した上で、事業主の命により又は事業主の承認を受け、
大学院等に在学する者(いわゆる社会人大学院生等)とする。

特定適用事業所の事業主は、
被保険者および70歳以上の使用される者に係る短時間労働者であるかないかの区別に変更があったときは、
当該事実が発生した日から5日以内に、
「健康保険・厚生年金保険被保険者区分変更届/厚生年金保険70 歳以上被用者区分変更届」
を日本年金機構等に届け出る必要があります。
この届出は、
日本年金機構が以下の事項を把握する必要があるためでしょう。
・その適用事業所が通常の労働者及びこれに準ずる者の総数が
常時100人乃至50人を超える状態にあるかどうか確認するため
・特定4分の3未満短時間労働者に係る算定基礎届時等の支払基礎日数が、
他の被保険者と異なり11日以上であるため
「適用拡大の3要件(令和10年4月以降)へ。
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